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- 2011_女子WM_5・・魅力的なコロンビア・・究極の勝負サッカーを展開したスウェーデン・・コロンビア対スウェーデン(0:1)・・(2011年6月28日、火曜日)
- とにかく、なでしこがニュージーランドに勝利したことには、ものすごく重要な意義があった。時間が経つにつれて、その事実を噛みしめている筆者です。
もちろん、日本の社会的な興味レベル(社会的ノイズ)をアップさせるというだけではなく、わたし自身の(学習機会を探しつづけるための)モティベーションという意味合いでもね。
たしかに最初は、わたしのHPへのアクセス数は少なかったけれど、日を追うごとに、ワールドカップの体感を共有したいと思っている方々が増えつづけていると感じます。
女子サッカーの見所についてもう一度くりかえしますが、フィジカル、テクニカル、タクティカル、そしてサイコロジカルといった、サッカーの根源的な要素で、女子サッカーは男子と比べようもない。でも、条件が同じだからこそ、そしてスピードやパワー、テクニックの(まあ戦術的なイメージは別にして!)レベルが低いからこそ、より明確に見えてくるモノがある。
我々は、ゲームの流れや、それぞれの瞬間の守備や攻撃の「意図」を探る(イメージングする)ことで、より深い戦術分析をしようとする。でも男子サッカーでは、偶然と必然がせめぎ合うグラウンド上の現象バックボーンを(イメージ的に)把握するのは簡単ではありません。
それに対して、上記の要素が「低い」からこそ、女子サッカーでは、より明確に、プレーの意図とか戦術(アイデアの)バックボーンが見えてくるのですよ。どのように相手を追い込んでボールを奪いかえそうとしているのか・・どのような戦術的な手段をもって相手のディフェンスブロックを崩していこうとしているのか(ウラの決定的スペースを攻略しようとしているのか)・・等々・・
ホント、グラウンド上の現象の戦術的バックボーンは、よく見えてくる。とはいってもサ、もちろんミスも多いわけで、次の展開を予測しようとしているこちらがズッこけるようなシーンが連発したりするけれどネ。
ちょっと脱線。ということで今日は、コロンビア対スウェーデン戦をスタジアム観戦です。
メディアセンターで隣に座る、講談社の矢野透さんが、「いま計算したのですが、両チームについて面白いデータが見えてきましたよ〜・・」と、手書きのメモを見せてくれた。
矢野透さんは、2002日韓ワールドカップのとき、「FIFAオフィシャルガイド」等を、彼らの歴史上(ヨーロッパ以外では!?)初めて外部委託するプロジェクトを仕切ったキーパーソン(編集長)でもありました。そのプロジェクトには、ガイドやプログラムの多言語化や、アジア諸国への積極的な配布など、これまでにないアイデアが詰め込まれていたということです。
その矢野さんが計算してくれた、このゲームの基本情報・・
まず平均年齢。コロンビアが「22.4歳」なのに対し、スウェーデンは「28.5歳」。また平均身長では、コロンビアの「163.9cm」に対し、スウェーデンは「174.9cm」と10センチも大柄。ゲッ・・ホントか〜!? 思わず声が出た。
そして迎えたキックオフ。確かにそこでは、そんな「物理的な差異」をバックボーンにしたサッカーのやり方に大きな違いが出ていた。まあ・・当たり前だけれどサ。
スウェーデンは、例によって、正確なボールコントロールを基盤に、素早い展開パスや(パスレシーバーの決定的フリーランニングに合わせた!)タテパス、はたまたアーリークロスなど、あくまでもシンプルに(ロジカルに)ボールを動かすことで、コロンビア守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを突いていこうとする。
もちろん、ディフェンスでの忠実な汗かきプレーや、攻撃での忠実&ダイナミックなフリーランニング(クリエイティブなムダ走り)といった組織プレーは健在だよ。だからこそ、彼らのロジカルなパスサッカーが機能する・・というか、大柄な彼女たちには、そんなサッカーのやり方が、とてもうまくフィットしていると感じる。
また、スウェーデンを観ていて、やっぱりサッカーは、しっかりとボールを止め、正確に蹴ることが出来れば、そこそこ(以上)のサッカーができる・・なんてコトも考えていた。
そんなスウェーデンに対してコロンビア。
彼らの伝統なんだろうか・・。とにかくショートレンジ(狭いゾーン)の仕掛けアクションを積み重ねて相手ゴールに迫っていく・・っちゅうイメージ。
・・正確でスキルフルなボールコントロールを基盤に、小さなワンツーコンビネーションを積み重ねたり・・相手がボール奪取のアタックを仕掛けてきたら、それを軽快なステップで「かわし」、そのまま空いたスペースへドリブルで突進していったり・・そして最後は、自分でシュートするだけじゃなく、相手ディフェンスを引きつけてラストスルーパスを出したりする・・
攻撃での「当面の目標」は、最終の仕掛けゾーンで、ある程度フリーでボールを持つこと(スペースを攻略すること!)。そこへ至るプロセスは、もちろん「どんなモノでも」オーケーなんですよ。
勝負ドリブルや(小さな!?)コンビネーションだけじゃなく、スウェーデンのように、大きなサイドチェンジパスからの、これまた大きなロング勝負パスといった、どちらかといったら「大味」の、でも、とても効果的な一発勝負コンビネーションだってある。フムフム・・
「我々だって、もっともボールを動かさなければならないと思っているんだ・・これからの我々のテーマは、よりスムーズなパスゲームといったところかな・・そのテーマについては、とにかく、日本チームから学ぶところが大きいよ・・彼らは、テクニックが素晴らしいだけじゃなく、そのテクニックを、しっかりと組織プレーに反映できているんだ・・とにかく、今の日本チームは、我々のイメージリーダーだと言えるね・・」
スウェーデンのトーマス・デナビー監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。
昨日のニュージーランドの監督もそうだったけれど、デナビー監督も、日本の組織サッカーを絶賛していた。ちょっと、誇らしい気持ち。
ところで、コロンビアのリカルド・ローゾ監督が、彼らのサッカーについて、とことんテクニックを磨くことでヨーロッパサッカーに対抗していくつもりだ・・と述べていた。だから、こんなことを聞いた。もちろんドイツ語で(ホストカントリーの言語は常にサービスされているのです!)・・
「あなた方が展開した、狭いゾーンでのショート&ショートのパス交換や、優れたスキルを駆使して相手のアタックをかわし、ウラのスペースへ入り込んで仕掛けのキッカケにするという発想のサッカーですが・・それは、1980年代から1990年代にかけて、世界サッカーで目立ちに目立っていた男子のコロンビア代表に、とても似通っていると思う・・」
ちょっと息をついて続けました。「その中心になっていたのは、言わずと知れたカルロス・バルデラマやフレディ・リンコン、はたまたファウスティーノ・アスプリージャやGKレネ・イギータだった・・でもそれは1990年代のこと・・あなた方は、その当時のサッカーを、まだ突き詰めようとしているのだろうか?」
もちろん「あの」サッカーは、とても魅力的ではあったよ。でも「それ」は、選手の才能やパーソナリティーがそれにフィットしていたからに他なりません。もちろん、そんな彼らでも、より組織的なアイデアを導入し、それに慣れていったら、その「狭いゾーンでのコンビネーション&ドリブル勝負プレー」が、もっと実効を発揮するに違いないと思うわけです。
コロンビアのリカルド・ローゾ監督は、わたしの質問に対して、彼らが当時の男子コロンビアチームを標榜していることを明確に否定しなかったし、つづけて、テクニックを中心に据えて発展ベクトルを模索するサッカーをつづけていくと表明していたよね。
実は、わたしは、そんな彼らの「こだわり」を、とても素敵なことだと感じていました。
それは、わたし自身、1990年イタリアワールドカップで、当時の西ドイツ代表を、局面では、本当に「チンチン」に振り回したコロンビア代表チームに舌を巻いていたからです。それは、本当に、とても魅力的なサッカーだった。
もちろん「その現象」は、西ドイツが、相手を翻弄する(バカにする!?)ようにコロンビアが展開した「狭いゾーンでのショート&ショートサッカー」に苛立っていたからに他なりません。
イラついていたから、無理な状況でも、ゴリ押しのボール奪取アタックを仕掛けてしまう・・それこそが、コロンビア選手たちの思うつぼ・・そして、ものすごく素早いボールコントロールやショートコンビネーションで、そのアタックを「スッ」とかわし、背後のスペースを攻略してしまうのです。それに対して西ドイツ選手たちは、もっと熱くなる・・。まあ、エネルギーが空回りしつづけた西ドイツ代表チーム・・ってな具合でした。
でも、西ドイツチームが落ち着いてきたことで、コロンビアも、そう簡単にはボールを回せなくなっていく。そう、粘り強いチェイス&チェックを積み重ねる、本来のドイツサッカーが戻ってきたのです。
結局ゲームは「1-1」で幕を閉じたけれど、そのゲームでコロンビア代表チームが魅せたサッカーは、本当に魅力的なモノだった。
いくつか、とても興味深いテーマが見つかったから、コラムが長くなってしまった。ちょっと冗長!? まあいいサ・・例によって、「エイヤッ!!」でアップしてやれ〜〜・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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