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2011_女子WM_9・・究極の組織サッカーを展開したアメリカ・・でも、変化に乏しいステレオタイプ!?・・(アメリカ対コロンビア, 3:0)・・(2011年7月2日、土曜日)

いや〜、まいった・・ホントに強いネ、アメリカ代表。

 「チーム状態」という視点では、日本も含めた優勝候補のなかで、ダントツかもしれない。もちろんその絶対的な基盤は、本来の「地力」。そしてチーム状態(調子)とは、その地力をいかに、100パーセント・・またはそれを超えて発揮できているのかということに対する評価とも言える。

 いまのアメリカ代表は、明らかに、「本来の地力以上」のチカラを発揮しはじめていると思う。

 以前から私は、男女のアメリカ代表を、究極の組織サッカーを志向していると表現することにしています。とにかく彼らは、守備にしても攻撃にしても、ものすごく「ロジカル」なプレーを積み重ねていくのですよ。

 守備では、言わずと知れた忠実で強力なチェイス&チェックを絶対的ベースに、周りの守備プレーが踊りつづける。協力プレスを仕掛けたり、インターセプトを狙ったり、はたまた相手パスレシーバーがボールをトラップする瞬間を狙ってアタックを仕掛けたり。もちろん、ボールがないところでの忠実なマーキングも充実している。フ〜〜・・

 それに、このコロンビア戦では、ゲーム戦術的な視点でも、とても巧妙に、ボールを奪い返す機能性をアップさせていた。

 ショート&ショート&スモールドリブルといった狭いゾーンでのボールキープから(そのゾーンに相手守備ブロックを集中させることで!)逆サイドなどで空いたスペースへボールを展開して効果的に仕掛けていこうとするコロンビア代表。

 そんな彼女たちに対し、アメリカ代表は、逆に、狭いレンジでのボールキープに「誘い込み」そこに味方を集中させて効率的にボールを奪いかえしてしまうのです。そしてそこから、相手ゴールへ向け、直線的な仕掛けをブチかましていく。

 まあ、爆発的なショートカウンターとも表現できる。とにかく、変にボールの動きを停滞させることなく、どんどんとタテ方向へパスを展開してしまうのですよ。もちろん、前戦のプレイヤーも、強烈な(スペースへの)フリーランニングでパスを要求しつづける。

 それだけではなく、タテへの仕掛けパスに合わせ、後方から、3人目、4人目のシャドーストライカーたちも、どんどんと押し上げてくる。そんな、局面での数的な優位性を創りだしつづける強力な組織オフェンスは、直前の組織ディフェンスが基盤になっていることは言うまでもない。

 アメリカが展開する究極の組織サッカー。今日は疲れ気味なので、ショート&ショートにコラムをまとめるけれど、その最後のテーマは、攻守にわたる組織サッカーという視点での、日本とアメリカの比較ということにします。

 たしかに、なでしこジャパンに対する組織サッカー的な意味合いの評価はうなぎ上りだけれど、ちょっとタイプが相違するにしても、アメリカもまた、とても素晴らしい組織サッカーを魅せているということです。

 アメリカの組織サッカーでは、抜群の運動量やパワー、はたまたスピードといったフィジカルな要素が前面に押し出される。また、局面の競り合いで激しさを前面に押し出すサイコロジカルな(闘う)意志の強さも特筆です。

 それに対して日本の組織サッカーでは、よりテクニカルで、戦術的なアイデアが豊富。だから、「直線的」なアメリカの組織サッカーに比べ、より効果的に、局面での「変化」を演出できる。表現を変えたら、日本の組織サッカーには、攻守にわたって、組織プレーと個人プレー(戦術的アイデア)のハイレベルなバランスがあるということです。

 要は、巧みなテクニック(ボールを扱うスキル)をベースに、相手とのフィジカルな接触を避けながら、ボールを(相手守備の薄いゾーンへ)動かす、変化に富んだリズムやアイデアが素晴らしいということです。

 まだ分かり難いかな〜。

 ・・要は、ボールコントロールが巧みで素早いし、ダイレクトパスも効果的にミックスすることで、よりリズミカルに(軽快に)ボールを動かせるし、仕掛けの変化も演出できる・・だから、アメリカよりも効果的に相手守備ブロックの穴(スペース)を攻略していける可能性を秘めている・・

 それでも、やっぱりアメリカの組織サッカーは強力だよね。

 まあ、それでも彼らの場合、どちらかといったら、型にはまったステレオタイプ的なニュアンスの方が強いと言えるかもしれない。だから、次にどこへボールが動かされるのか、その方向やリズムが見える。とはいってもサ、彼女たちが(直線的に!?)ブチかましてくる、強烈な闘う意志に支えられたパワフルでスピーディーな組織サッカーは、やっぱり恐ろしく強力だよね・・。

 ここで、ちょっと変なアイデアがアタマに浮かんだ。もしかしたらアメリカチームは、アメリカンフットボールで採用されている「動きを解析しシミュレートする」コンビュータプログラムをサッカーに応用しているのかもしれない・・なんてネ。

 今日は、こんなところです。ではまた明日・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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