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2012_WM最終予選・・着実に発展をつづけるザックジャパン・・(オーストラリアvs日本、 1-1)・・(2012年6月12日、火曜日)

・・結果としては全然わるくなかった・・いや、最強ライバルとのアウェーマッチということを考えれば、とても良かった・・それにしても、あのサウジアラビア人のレフェリー・・まあ、仕方ないけれど、FIFA審判インスペクターは、しっかりと評価して対処して欲しいね・・サッカー発展のために・・

 とにかく、まずアドレナリンを吐き出さなきゃ書きはじめられない。「あの」レフェリングを観てたら、思わず、ジーコジャパンが、ウクライナとアウェーで対戦した親善マッチ(2005年10月)のことを思い出してしまった。そのコラムは「こちら」。あははっ・・

 あっと、「アドレナリン」ついでに、もう一つ。それは、グラウンド(ピッチ)の状態。このような重要なゲームを、あんな荒れたピッチで開催するのは、どうなんだろうね〜。

 オーストラリアは空中戦からのこぼれ球狙い。それに対して日本代表は、イメージ連鎖というチーム戦術ベースを基盤に、人とボールが効果的に動きつづける組織パスサッカー。どう考えても、あの荒れたピッチは日本にとって不利だよね。

 数日前には、ワラビーズ(ラグビーのオーストラリア代表)の試合も行われたらしいし、そんなグラウンド使用スケジュールも含め、日本の組織パスサッカーを、マネージメント的に抑制しちゃおうという意図があった(!?)なんて、穿(うが)った見方まで出てきちゃう。いやいや、そんなハズないのに・・いかん、いかん・・スミマセン・・

 ということで具体的なテーマに入っていくわけですが、まず何といっても、ザックジャパンが明らかに強くなっているという事実にスポットを当てなければいけない。

 相手が強いからこそ、ザックジャパンの発展に対する評価基準として、このオーストラリア戦は大事な意味合いを内包していたのですよ。

 ザックジャパンは、前回のアジアカップ決勝でオーストラリアと対戦したときよりも、明らかに組織サッカーの内容が向上している。まあ、「組織」と「個」のハイレベルなバランスとか、自信という心理・精神的バックボーンが進化&深化した・・っちゅう意味合いも含めてネ。

 ところで、その「2011年アジアカップ決勝コラム」を読み返してみて気が付いた。本田圭佑に一言も触れていない。まあ、「そのこと」が、当時の彼に対する私の評価だったんだろうね。

 繰り返すけれど、前言は撤回しない。でも事実は、しっかりと評価する。

 本田圭佑は、この最終予選3試合を通じて、素晴らしい進化&深化を遂げたと思う。攻守にわたる忠実な汗かきのチームプレーが、そのことを如実に物語っている。

 彼は、世紀の大天才「ディエゴ・マラドーナ」ではありません。でも、類い希な天賦の才を秘めている。だからこそ、攻守にわたる組織(汗かき)プレーにも精進すれば、必ず世界トップサッカーで活躍できる。これまで何度も、そう書いてきた。だから私は、彼の組織プレーを観ながら、とてもハッピーな感覚に包まれていた。

 「天賦の才」の、本当の意味での「ブレイクスルー・プロセス」を体感することほど幸せな瞬間はない・・のです。

 本田圭佑が、攻守にわたる組織(汗かき)プレーにも精進していることは、グラウンド上でプレーしているチームメイトたちが、もっとも身近に感じているものです。だからこそ、周りも、「より」積極的に本田圭佑の才能を、うまく活用しようとする。

 この試合での本田圭佑は、とても効果的に、そして数多くボールに触った(彼にパスが回されてきた)。もちろんボールがないところでの動きの量と質がアップしたこともあるけれど、私は、その背景に、チームメイトの「シンパシー」と信頼があったとも思うわけです。

 本田圭佑は、ほぼ全ての「ボール絡みプレー」を、効果的に、そして美しく魅せちゃう。そして、目の覚めるようなボールコントール&「タメ」から素晴らしいパスを展開し、パス&ムーブで次のスペースへ飛び出していく等、効果的コンビネーションのコアとして「も」機能したりする。

 私は、ここまでの3試合でザックジャパンが創造した価値の最も大きなモノの一つとして、本田圭佑のホンモノのブレイクスルーを挙げることに躊躇(ちゅうちょ)しない。積み重ねた勝ち点も含め、ホントに良かった、良かった。

 さて、次のテーマ。それは、ゲームの立ち上がりにオーストラリアがブチかましてきた、ハイボール&こぼれ球(セカンドボール)攻撃。

 ゲーム立ち上がりの15分間は、誰もが、何度も息を呑み、フリーズしたに違いない。もちろん、私も・・

 その攻撃で典型的なのは、右サイドのウィルクシャーから、ファーポスト側で待ち構えるケイヒルへ「放り込みハイボール」を送り、ヘディングで競り勝ったケイヒルが、後方から走り込んでくる3人目、4人目のチームメイトにラスト(ヘディング)パスを落とす・・っちゅうもの。

 そんなハイボール攻撃に、何度も日本は大ピンチに陥った。そして観ている我々は、フリーズさせられた。

 そこでは、ケイヒルのクレバーなポジショニングも目立っていた。彼は、意図的にファーサイドゾーンへ回り込んでいくことで、ヘディングの強い栗原勇蔵との競り合いを避けるようにしていた。だから、意図的に内田篤人へ寄っていった。

 これは、フットボールネーションでは常識の「対処戦術」だぜ。ヘディングの強い選手が、相手の高さのない選手へ「わざと」近寄っていくことでヘディングの競り合いを有利に運ぼうっちゅうわけです。

 そんなオーストラリアのハイボール攻撃だけれど、私は、日本の守護神、川島永嗣がもっと飛び出していくべきだと思っていた。でも彼は、飛び出そうとして、タイミングが合わずに戻ってしまったり、飛び出してもボールに触れないという失敗を犯した。そして自信レベルが減退したことで、相手のハイボール攻撃のコントロールが、とても中途半端になった。

 まあ、時間を追うごとに徐々に良くなっていった(調子を取り戻していった!?)けれど、でも「あの立ち上がりの時間帯」に、オーストラリアにゴールをブチ込まれていたら・・と考えると、冷や汗が・・

 そんなオーストラリアのハイボール攻撃は、誰もが熟知し、警戒していたと思う。何せ、いままで日本は、2006年WM初戦も含め、何度も彼らの(ケイヒルを中心とした!)ハイボール攻撃に煮え湯を飲まされていたんだからね。

 だから、準備として、まず何といっても簡単にハイボールを送り込ませない・・次に、GKが、タイミングよく飛び出すことでハイボールをカットする・・また、相手の「高さの脅威」に対しては、常に「ヘディングの強い選手」が対処する・・等などの事前のイメージトレーニングが必要だよね。

 もちろんザッケローニも十分に準備はしていたはず。でも、立ち上がりは上手く機能しなかった。そして我々はフリーズさせられた。

 この試合は、その意味でも、日本代表にとって、とても重要な学習機会になったと思う。

 最後になったけれど、次のイラク戦では、第一チョイスに入るセンターバックが三人も欠けることになってしまった。ケガの吉田麻也、出場停止の今野泰幸と栗原勇蔵。あっと、内田篤人も二枚目イエローをもらっちゃったっけ。ホント、あのレフェリングは、いただけなかった。あっ・・またアドレナリンが・・いかん、いかん・・

 まあ、サイドバックは酒井宏樹や駒野友一がいるから問題ないにしても、センターバックは・・。もちろん伊野波雅彦がいるし、高橋秀人もいるけれど・・。

 とにかく、脅威と機会は表裏一体。ここで「新戦力」にも目をやってみたらどうだろうか。例えば、FC東京の森重真人とか・・あっ、余計なお世話でした。そう、監督が100人いたら、100種類の代表チームができちゃうんだよ。それがサッカーなんだ・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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