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2012_EURO(1)・・渡豪キャンセルのお知らせと素晴らしいスタートを切ったドイツ・・(ドイツvsポルトガル、 1-0)・・(2012年6月10日、日曜日)

まず、ちょっと残念なお知らせから。

実は、様々な事情で、オーストラリア遠征(WM予選)をキャンセルせざるを得なくなったのです。ということで、「EURO」と日本代表のオーストラリア戦は、自宅でテレビ観戦ということになってしまった。ちょっと落ち込むね・・

 でも、まあ、気を取り直して「EURO」コラムに取りかかることにした。言わずもがなだけれど、私は、ドイツを中心に観戦します。もちろん、スペイン、オランダ、イタリア、イングランドやフランスといった強者も「横目」で観ながらネ・・あははっ・・

ということでドイツ対ポルトガル。

 観はじめて直ぐに気付いたんだけれど、テレビの映像作り(カメラワーク)が素晴らしい。ボールがないところでの(ボールから離れたゾーンでの)攻守のせめぎ合いまで確実に把握できる。まさに、ハイビジョンの特性を最大限に活用するカメラワークじゃありませんか。だから、まったくといっていいほどフラストレーションを溜めることなくテレビ観戦に舌鼓を打てた。

 特にドイツのサッカーは、ボールから遠いところで何が起きているのかを「同時に」把握しておくことが肝心だからね。そう、この試合でも、ドイツの長所がいかんなく発揮された。勝負は、ボールがないところで決まる・・

 あっと・・また分かり難い表現がつづきそうになっている。とにかく、ドイツが、たしかに苦労はしたけれど、総体的には、内容にともなった順当な勝利を手中に収めたというのが結論です。

 人とボールの動きが、素早く、大きく「連鎖」しつづけるドイツ。

 要は・・互いのプレーイメージが、とても高い次元でシンクロ(連動)している・・だから、パス&ムーブは当たり前として、それ以外でも、ボールがないところでの動きが活発になる・・っちゅうことです。そして、そこにボールが回されてくる。

 もう少し深く言えば、ボールの動きに、確固たる『リズム』があるっちゅうことです。だからこそ、チームメイトも、次、その次のスペースを探して動けるし、ボールホルダーにしても、次、その次のスペースにチームメイトが入り込むことを確信してボールをコントロールできるっちゅうわけです。

 対するポルトガル。

 たしかにボールは動くけれど、次のコンビネーションをスタートするキッカケにならないような足許パスが多い。そう、単にボールの位置を移動させるだけの足許パス。そして、例によっての「ショート&ショート」サッカーからの個人ドリブル勝負。要は、組み立てでも最終勝負でも、ポルトガルの場合は、やはり個人プレーが「基本」・・ということだね。

 それは、個の才能プレーを前面に押し出すサッカーとも言える。もちろん、チーム全体が、「その」イメージで徹底していれば、「それ」はそれで、内容はともかく、とても勝負強いゲームを展開出るよね。そのポイントもまた、サッカーの奥深さの証明ってなトコロですかね。

 まあ、そんなポルトガルが相手だから、ドイツ守備ブロックは、ポルトガルの、次、その次のボールの動きを正確に予測できる。だから、協力プレスで簡単に潰せる。

 もちろん、クリスティアーノ・ロナウドに代表されるポルトガルの天才ドリブラー達が、ここが大事なポイントなんだけれど、「良い状態」でパスを受けられれば、それは、それは危険な最終勝負を繰り出していける。

 ここでいう「良い状態」というのは、言うまでもないけれど、スペースである程度フリーでボールを持ったシチュエーションのことだよ。要は、相手守備プレイヤーが足りない(守備組織の薄い!?)ゾーンでパスを受け、一対一のドリブル勝負を挑んでいけるような状況のことだね。

 この試合でも何度かあった。クリスティアーノ・ロナウドやナニといったドリブラーが、良いカタチでボールを受けられた状況。彼らは、そのままドリブルシュートをブチかますだけじゃなく、ドリブルで勝負を仕掛けていくことでドイツ守備を引き寄せ、そこからラストパスやラストクロスを送り込むクレバーな最終勝負も魅せたのですよ。そして、ドイツサポーターが肝を冷やす。

 試合終了間際に、ドイツの天才GKマニュエル・ノイヤーがゴールから飛び出し、相手のフリーシュートを身体でブロックした決定的ピンチシーン。その瞬間、私もそうだったけれど、誰もがフリーズしたに違いない。

 素晴らしいサッカーを展開したドイツチームの個々の選手についても簡単に・・。

 今日は、バートシュトゥーバーとフンメルスで構成する、素晴らしいセンターバックコンビについて触れましょうかね。ディフェンスの(ヘディングや地上戦での競り合いの)強さだけじゃなく、読み(インテリジェンス)と忠実なポジショニングやカバーリング、それに何といってもボールを扱うスキルが素晴らしい(特にフンメルス!)。

 その他の個々の選手については、順次ピックアップしていきます。とにかく、大事なトーナメント初戦に、苦しんだとはいえ、最後はキッチリとつじつまを合わせたドイツに乾杯!!

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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