トピックス
- 2012_EURO(14)・・興味深いテーマが満載された準決勝だった・・ドイツは負けちゃったけれど、心から堪能した・・(ドイツvsイタリア、 1-2)・・(2012年6月29日、金曜日)
- フ〜〜ッ!・・「あの」美しくて強いドイツがやられちゃった・・
・・でも不思議と、そんなに悔しくない・・それよりも、イタリアの立派な闘いに、爽やかな感覚すら残っている・・だからイタリアに対し、素直に、「オメデト〜〜!」って言える・・
・・もしイタリアが、これまでのように、堅守&必殺カウンターで「虎の子の一点」を守り切るようなサッカーを展開していたら、そりゃ、イヤ〜な「苦い感覚」だけが残ったはず・・でも今回は違う・・彼らは、一点もぎ取ってからも、更にもう一点を取りにいった・・
・・とにかく、両チームともに素晴らしく魅力的な『サッカー』をやり、ギリギリの勝負展開のなか、フェアに決着がついたのは確かな事実・・だから、(素直な感覚として!)スペインとイタリアの決勝が、本当に楽しみになった・・
そんな今の情緒(感情)は、ホントに正直なところなんですよ。それほど、両チームともに『サッカーをやって』、フェアに勝負がついた・・と、心の底から思える。ホント、爽やかだ。
でも・・もちろん・・「タラレバの思い」も含めて(!?)、ドイツが決勝に進めなかったのは、ちょっと心残りではあるけれどネ・・あははっ・・
ゴメン・・ここで、ちょっと今のドイツ代表チーム(ドイツサッカー)について語らせてくださいな。テーマは、ドイツの攻撃に秘められた推進力・・
立ち上がりの時間帯は、ドイツが強さを魅せつけ、何度も先制ゴールのチャンスを作り出した。もちろん「イメチェン」のイタリアも、『人数をかけて』攻め上がるけれど、どうもフィニッシュまで行ける雰囲気が(ドイツと比べて!?)希薄だと感じた。
そんな今のドイツ代表チームには、(私も含めて!!)ドイツ人の誰もが抱いているに違いない、1970年代に世界から高く評価された「美しく強いドイツ」に対する郷愁を払拭するだけのパワーが秘められている・・と感じた。
もちろん、その絶対的な基盤は、互いのイメージが連鎖する「創造的&想像的」な組織ディフェンス(組織的なボール奪取プロセス)にあるけれど、ここでは、攻撃にスポットを当てます。
ドイツの攻撃がブチかます、レベルを超えた推進力。
そのバックボーンは、組織プレーと個人プレーが、素晴らしく高いレベルでバランスしているところにある!?
まあ、組織プレーをハイレベルに機能させるための心理・精神的なダイナミズムはドイツの伝統だから、いまのドイツ代表チームが魅せる、人数をかけた強力な組織オフェンスの実効的な基礎は、優れた個のボールコントロール力(ボールを扱うスキル)にあると言えそうだね。
スキルがしっかりしているからこそ、周りの組織的な汗かきプレー(パスを受けたりスペースを作ったりするフリーランニング!)の勢いがダウンすることはない。
彼らの場合、ドリブル(個人プレー)で仕掛けていっても、その周りでは、同時に3人目、4人目のフリーランニングが常に動きつづけているのですよ。そして、ここが特筆なんだけれど、その勢いが高みで維持されるんだ。
それは、しっかりとした個のスキルをベースに、チームプレー(人とボールの動き)に、確固たる『リズム』があるからに他ならない・・と思う。
そう、組織プレーの「リズム」が確立しているからこそ、また、 しっかりとした「個のスキル」を基盤にした確実な局面プレーがあるからこそ、仲間も、次のパスを期待して、忠実なフリーランニングを繰り出せる。
そう、心理・精神的なダイナミズムに支えられた積極フリーランニング。そしてだからこそ、素早いリズムで、スペースパスを送り込める。まさに、ポジティブな心理メカニズムの循環。
いまのドイツ代表では、そんな「リズムの善循環」が効果的に回りつづけているわけだけれど、それも、これも、1990年代の「ドイツサッカー再生プログ
ラム」があったればこそ。私に、そのディスカッションの一端を体感させてくれた(当時の)ドイツサッカーの友人達に感謝します。
ところで、その「ドイツサッカー再生プログラム」において最重要視されていたテーマだけれど、それは、テクニック。そう、前述した「ボールを扱うスキ
ル」。それがあって初めて、組織サッカーが、より効果的に機能する。そして自信を深めることができる。だからこそ、美しく勝負強い攻撃的サッカーを展開で
きる。
まあ、ぶっちゃけて言っちゃえば、それまでのドイツでは、テクニックに優れた選手を輩出し難い「環境」があったんだよ。テクニックのある選手が「ブレイ
ク」するためには、コーチの忍耐が必要だよね。それがなく、「ボールをこねくり回さずにパスをして走れっ!」なんて罵声が飛んだりする雰囲気が、テクニッ
クの才能に恵まれた選手を萎縮させ、潰されてしまう。そう、ちょっとオーバーコーチング気味。
まあ、そこには、近年のドイツサッカーから「ストリートサッカー」が、そして「それ」が内包する、選手の創造性を発展させる要素が消え去ってしまったと
いう側面もあるわけだけれどネ。以前は、そのことに関するディスカッション(コラム)を、様々なメディアで発表したモノだった。フムフム・・
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あっと、またまた前段が長くなり過ぎてしまった。でもサ、これでドイツ代表について語る機会がなくなってしまったわけだから・・ご容赦アレ。さて、ということで試合に戻りましょう。
後半、二点を追いかけるドイツは総攻撃を仕掛けた。そして何度か、「活きた」チャンスを作り出した。もちろん私は、そんなドイツの積極的な仕掛けを期待を込めて見つめていた。でも・・
そう、そんなドイツの「前掛かりエネルギー」の逆手を取るように、(まあカウンター的な流れも含めて)イタリアが、二つ、三つと、まさに絶対的な決定機を作り出してしまうのですよ。でもドイツは、失点を免れる・・
私は、イタリアが絶対的チャンスを作り出し、それをモノに出来ないというシーンを見るたび、「もしかしたら・・行けるかも・・」なんて期待が高まった。そう、神様ドラマが始まりそうな・・
この(ドイツの)ピンチシーンだけれど、それには、ドイツの攻撃が、ちょっと寸詰まりになりはじめたという背景もある。
要は、ボールがないところでの動きの量と質がダウンしてきたっちゅうことです(まあ、交替出場したトーマス・ミュラーが、少しは悪い流れを好転させたけれど・・)。だから、イタリア守備も、より効果的に「次のボール奪取」を狙えるようになった。そして・・
とにかく、イタリアの守備は素晴らしい。イメチェンし、「人数をかけて」前へ行くイタリアだけれど、ボールを失った次の瞬間には、ものすごく素早くディフェンスの組織を再構築しちゃうんだ。
この、素早い攻守の切り替えと、次のディフェンスの組織作りのスピード&実効レベルは、たぶん世界一。プランデッリ監督は、本当に素晴らしい仕事をしている。
カテナチオから「サッカーへ!」ってか〜!?
そして、組織を整えたイタリア守備ブロックは、「これぞ伝統っ!」ちゅう、堅いディフェンスを魅せるんだ。もちろん、互いのイメージが連鎖しつづける組織ディフェンス。ボールがないところでの彼らのアクションの内実を観ていれば、そのレベルの高さが伺える。
彼らは、ボールがないところで勝負が決まる・・というサッカーの本質的なメカニズムに対する理解と、だからこその強烈な意志に支えられた高い実行力を魅せつづける。ホント、勉強になるよ。
イメチェンのイタリア。
・・バロテッリとカッサーノによる強力なツートップ・・その背後に控える、デ・ロッシ、モントリーヴォ、マルキージオという、攻守ダイナミズムの権化ト
リオ・・そして、何といっても、攻守の要となる、スーパーなアンドレア・ピルロ・・効果的なオーバーラップ(中盤トリオとのタテのポジションチェンジ!)
を魅せる両サイドバック・・強力なセンターバックコンビ・・そして、天才GKジャンルイジ・ブッフォン・・
彼らは、本当に素晴らしいサッカーを展開した。イメチェンと、そのことの世界に対するアピールに大成功を収めたイタリアとプランデッリ監督に乾杯!!
その他にも、こんなテーマがありそうだね。例えば・・
・・イタリアでは・・爆発しつづけるバロテッリ・・そのバロテッリを、とても巧妙に心理マネージメントする(インテリジェンスに溢れる!?)監督プランデッリ・・ピルロ、モントリーヴォ、デ・ロッシ、そしてカッサーノという「タテの機能性カルテット」・・
またドイツでは・・
・・マリオ・ゴメスの代わりにミロスラフ・クローゼ、ルーカス・ポドルスキーの代わりにロイスが入るという後半立ち上がりからの選手交代(ギリシャ戦で
前戦の3人を全取っ替えした意図が活かされる!?)・・また、この交替で、最前線が、クローゼ、ロイス、エジル、トニー・クロースという、スキル系のカル
テットになったというポイントもあるね・・もちろん、クローゼには「足」だけじゃなく「高さや決定力」という武器もあるしね・・
・・などなど、書きはじめたらキリがない。ということで、時間も時間だから、ここで一度アップすることにします。でもホント、決勝が待ちきれなくなった。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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