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2012_EURO(15)・・こんなに攻撃的に「やり合う」決勝は希・・最後はスペインの「僅差の順当勝ち」に落ち着いた・・(スペインvsイタリア、 4-0)・・(2012年7月2日、月曜日)

サッカーの神様は、ときには、とても残酷に振る舞うんだよね・・

 最後は、ショートカウンターから2ゴールを追加したスペインが、終わってみれば「4-0」という大勝を収めた。でもその点差は、全体的なゲーム展開の内実を反映したモノじゃなかった。

 イタリアも、最後の最後まで、アンドレア・ピルロを中心に、とても立派な「攻撃的サッカー」を志向しつづけたんだよ。それにしても、後半18分に起きたチアゴ・モッタのケガでの離脱は、かなり厳しいダメージをイタリア代表にもたらしたね。

 チアゴ・モッタは後半の10数分から交替出場したのだけれど、イタリアにとってその交替は3人目だった。その最後の交替カードを、彼がグラウンドに出て から数分後にケガで失っちゃったんだからね。そしてイタリアは、そこから10人で戦わなければならなくなった。フ〜〜・・

 もちろん10人でも、やり方によっては十分に抗していけるけれど、相手はスペインだからね、イタリア選手たちの「心理・精神的なダメージ」は、推して知 るべし・・だった。要は、「この」スペイン相手に、一人足りなくなったら厳しい・・っていうイメージが、選手たちの脳裏の大きな部分を占拠しちゃったとい うことです。

 だから、前への心理・精神的な推進力が、ちょっと落ちた。そして、そのコトを敏感に感じ取った選手たちは、「より」心理・精神的なダイナミズムを失って いき、攻撃へ押し上げていくアクションが、とても中途半端になっていった。そうなったら、スペインに、一瞬の「アンバランスさ」を突いたショートカウン ター(タテへの一発スルーパス)を喰らってしまうのも道理・・フムフム・・

 とにかく、4-0という大きなスコアの差が、ゲームの内実を正確に表現したモノじゃなかったことをまず確認しておこうと、こんなコラム導入部になった。

 とはいっても、スペインが、例によっての素晴らしい組織パスコンビネーションサッカーを展開したことは明らかな事実だよ。

 たしかに『イメチェン』のイタリアも、人数を掛け、しっかりと「ボールを走らせる」攻撃的な組織サッカーを展開したけれど、その「組織」という視点じゃ、やっぱりスペインに一日の長があった。

 要は、組織プレーと個人プレーの「バランス」というテーマだけれど、やはり・・というか、スペインの方が、「組織」のウエイトが高かったんですよ。

 それに対してイタリアは、確かに、しっかりと人とボールが動きつづけるけれど、比較的「個」の部分が強調される。バロテッリ、カッサーノ、そしてアンドレア・ピルロ・・とかね。

 それにしてもスペイン。この試合での彼らは、組織パスコンビネーションが「より」加速したっちゅう印象の圧倒的なサッカーを展開した。

 ボールの動き(そのリズム!)が素晴らしい。もちろん人も動くけれど、基本的には、ボールの動きで、相手ディフェンスの視線と意識(守備イメージ)を翻弄する。そして、タイミングよく繰り出された「人の動き」でスペースを攻略しちゃう。フムフム・・

 攻撃の目的はシュートを打つこと・・ただ当面の目標イメージは、スペースを攻略して「仕掛けの起点」を作り出すこと・・。その、スペースを突いて「仕掛けの起点」を作り出すプロセスのタイプが、イタリアとスペインでは微妙に違う・・というのが論点でっせ。

 イタリアの方が、(決定的)スペースを突いていくチャレンジプロセスで、より勝負ドリブルが目立つのですよ。

 いつも書いているように、スペースを攻略するプロセスには、大きく分けて二つある。一つは勝負ドリブルで相手ディフェンスを置き去りにし、そのままボールとともにスペースへ入り込んでいく個人プレー。そしてもう一つが、スペースへ走り込んだ味方にパスを通す組織プレー。

 スペインが魅せつづけた、相手ディフェンスのイメージを翻弄してしまうような(視線と意識を引きつけることで相手の足を止めてしまうような!)ボールの動きが、この試合では一段階シフトアップしたという印象が残った。素晴らしい・・

 とはいっても、もちろんスペインも、タイミングを見計らった個人勝負(ドリブル突破)もブチかますよ。イニエスタの、中盤から最前線への「タテのスペースをつなぐ」ドリブルとか、最終ゾーンでブチかます勝負の突破ドリブル&シュートとかネ。

 スペインは、組織パスコンビネーションがレベルを超えた機能性を魅せつづけるからこそ、「より」効果的にスペースを攻略していける・・そしてだからこそ、「より」効果的にドリブル勝負「も」繰り出していけるっちゅうことなんですよ。

 優れた「組織と個のバランス」・・

 唐突だけれど、ここで、そのテーマに相応しいサッカーに言及したい。J2の(昨夜の)ヴェルディ。

 昨日、味スタで行われたヴェルディ対水戸ホーリーホック戦をスタジアム観戦してきたのですよ。そこでヴェルディが展開した、ダイナミックな協力プレッシ ングからのボール奪取と、そこからの素晴らしい組織サッカーに、心を奪われた。そんな魅力的で勝負にも強いサッカーだから、彼らがJ2のトップを奪い返す のも当然の帰結だった。

 素晴らしく魅力的な「攻撃的サッカー」。それでも観客は(日曜日の夜の雨模様ということもあって!?)3000人をちょっと越えるくらいだった。とても、残念だった。

 ヴェルディの川勝良一監督は、ホントに良い仕事をしている。彼らが展開した、組織パスコンビネーションと、タイミングよく繰り出していく魅力的で破壊的な個人勝負プレーの高質なコラボレーションを観ながら、そんなことを思っていた。

 誤解を恐れずに書くけれど、個のレベル差はあるものの、その戦術的コンセプトは、EUROを制したスペインにも通じるモノがある・・そう思う・・

 あっと、またまた脱線。スミマセン・・EURO決勝に戻りま〜す・・

 ところで、この両チームの最前線の「やり方」だけれど、スペインとイタリアでは、ちょっと違う。イタリアは、明確な最前線のターゲットマンとしてバロテッリを置いている。そして、その「コア」の周りを、衛星的に動き回ってスペースを使おうとするカッサーノがいる。

 それに対しスペインは、スピアヘッドが「日替わり」。たしかにセスク・ファブレガスが中心だけれど、彼らの場合は、ポジションチェンジを繰り返すこと で、仕掛けに「変化」を演出するのです。それでも、常に誰かがトップにいる。ケアーする相手選手の「顔」がクルクルと変わるんだから、イタリア最終ライン はやり難かっただろうね。

 そしてスペインが、その特徴的な「やり方(発想)」をベースに、目の覚めるような先制ゴールと追加ゴールをブチ込んじゃうんだ。

 最初は、セスクの抜け出しとイニエスタのスルーパスが素晴らしくシンクロし、イタリア最終ラインの背後に広がる決定的スペースを攻略しちゃったシーン。最後は、セスクの(中の状況を完璧にイメージした!)正確な折り返しを、走り込んだシルバがアタマで叩き込んだ。

 また前半終了間際の追加ゴールシーンでは、高い位置で「タメのドリブル」を演出したシャビ・エルナンデスが、まさに疾風の爆発スプリントで決定的スペー スへ走り抜けるジョルディ・アルバへ、これしかないというタイミングとコース、そして強さと質のスルーパスを送り込んだ。

 そのときスペインの最前線には、この二人しかいなかった。

 一人は「静のタメ」を演出し、一人は「動の爆発スプリント」で抜け出す。そして最後の瞬間、この二つのアクションが、ピタリと「シンクロ」した。鳥肌がたった。

 スペインは、スピアヘッドを「空けておく」ことで、そこに誰でも、チャンスがある者が入り込んでいく・・という発想で成功した。繰り返しになるけれど、イタリア守備はやり難かったに違いない。

 その追加ゴールシーンでも、最前線にはシャビ・エルナンデスとジョルディ・アルバの二人しかいなかった。それに対してイタリアは、4人のディフェンダーがこの二人を取り囲んでいたんだよ。フ〜〜・・

 さて、結果だけれど、冒頭で書いたように、ゲーム展開の内実は、「4-0」という大差が物語るようなモノじゃなかった。ただスペインが、僅差ではあったけれど、順当に戴冠した・・というのも確かな事実だった。

 この決勝では、特筆されなければならない現象があった。それは、互いにフルパワーで仕掛け合ったこと。こんな決勝は(ゲーム内容は)希なんだよ。

 もちろん「ノーガードの殴り合い」なんていう低次元のゲームじゃなく、互いに、忠実に、そして素早く攻守を切り替えながら、攻守両面にわたって、最高のダイナミズムを発揮したんだ。

 とにかく堪能した。最後になったけれど、私は、イタリアが、この敗戦にもかかわらず、このまま攻撃的な(魅力的な)チャレンジサッカーをつづけてくれることを願って止みません。

 そう、サッカーの究極のターゲットイメージは、「美しく勝つ」ことだからね。とはいっても、それもこれも、やっぱり国民性にも拠るのかな〜!? そう、文化。あ〜、サッカーは、ホントに深いですネ〜。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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