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2012_EURO(8)・・ものすごいドラマが渦巻いたグループ最終戦だった・・(Cグループ最終日)・・(2012年6月19日、火曜日)

フ〜〜、「あのまま」終わっていたら、どうなっていたんだ〜??

 「あのまま」っちゅうのは、スペイン対クロアチアのことです。後半43分の、交替出場した(スペイン)ヘスス・ナバスによる決勝ゴールが生まれず、そのまま「0対0」でゲームが終了していたら・・

 もしそうなったら、スペイン、クロアチア、(想定どおり最終戦のアイルランドを2対0で退けた!)イタリアの3チームが勝ち点5で並ぶことになる。ただ、この3チームの相互の対戦は、すべて引き分け。だから、この3チームの対戦スコア「だけ」を対象に、そこでの得失点差、総得点で最終の順位が決まる。

 もちろん、3チームの相互対戦がすべて引き分けだったから、得失点差は同じだよね。ということで、この「相互対戦スコアのみ」における総得点で順位が決まる。

 ちなみに、スペイン対イタリアは「1対1」。イタリア対クロアチアも「1対1」だった。そして、もしスペイン対クロアチアが、「あのままの0対0」で終わったら・・

 もし「あのまま」だったら、イタリアの総得点は「2」、スペインとクロアチアの総得点は「1」。ということで、イタリアのトップ通過が決定し、スペインとクロアチアの順位決定は、アイルランドも含むグループ全体での得失点差、総得点で決まることになる。

 その場合、アイルランドを「4対0」で下したスペインが二位抜けということになる。

 ちなみに、もし「そこまで」スコアを計算しても最終順位が決まらなかった場合は、UEFAにおけるナショナルチーム係数で高い方、そしてフェアプレー度の高い方のチームということになるそうな(それでも決まらない場合は抽選!)。この二つの順位決定条件の詳しい定義については後で調べてみるけれど、まあ、ナショナルチーム係数という基準では、多分スペインの方が上だろうね。

 ということで、このコラムは、スペイン対クロアチアにスポットライトを当てるわけです。

 前半は、予想どおり、スペインがゲームを支配する。例によっての、素早く正確なボールの動き。クロアチア選手に詰められても、まったく動じることなく、余裕のコントロールでボールを動かしてしまう。

 そんなクリエイティブなボールの動きの中心は、言わずもがなのシャビ・エルナンデスとイニエスタ、そしてセルヒオ・ブスケッツで形作る「タテのバルセロナ・トリオ」。その「動き」に、中盤のシャビ・アロンソとダビド・シルバも、とてもスムーズに、そして効果的に絡んでいく。

 とはいっても、相手は、守備ブロックを安定的に固める強者&曲者のクロアチアだから、スペインといえども、そう簡単にウラの決定的スペースを攻略できるわけじゃない。ボールは完璧に支配するスペイン。でも、シュートチャンスはままならない。逆にクロアチアも、前半の終わりに近づいた時間帯から、危険なカウンターをブチかまし始める・・フ〜〜・・

 そんな、最高テンションの「静的な均衡状態」がつづくなかで前半が終了したわけだけれど、そこで両チームは、「イタリアのリード」という現実と対峙することになるわけです。そう、グループリーグの勝ち抜きドラマが動いた・・

 ということで後半。

 前述したように、0対0の状態がつづいていたことで、より積極的に仕掛けていかざるを得なくなったのはクロアチア。他会場のゲーム展開を、逐一知らされているベンチは当然として、選手たちも、前半を「1対0」とリードしていたイタリアがアイルランドに勝つに違いないと思っているわけだからね。

 後半立ち上がりのクロアチアは、より積極的に前からボール奪取勝負(協力プレス)を仕掛けていった。とはいっても、ここが微妙なんだけれど、限界までリスクにチャレンジしていく・・というわけでもない。積極的に「前から」ボールを奪いには行くけれど、それでも決して「行き過ぎ」になることがないのですよ。彼らは、微妙な(後のディフェンスを考えた前後の!)バランスを慎重にコントロールしながら「勝負を仕掛けて」いったのです。

 対するスペインにしても、心境は、とても微妙だったはず。

 ・・スコアがこのままだったら自分たちが勝ち抜ける・・でも、そんな、どちらかといったら中途半端なプレー姿勢(中途半端な意志の状態!)だったら、逆にクロアチアにやられてしまうに違いない・・だからチャンスとなったら、しっかり仕掛けていかなければならない・・

 そこには、とても興味深い、心理的&戦術的な揺動があった。そして、グラウンド上も、スタンドも、どんどんヒートアップしていく。

 後半13分には、カウンターの流れからチャンスを掴んだクロアチアが、モドリッチのスーパーな切り返しからのクロスに、「ここぞっ!」のオーバーラップで、ファーサイドゾーンに全くフリーで走り込んだ守備的ハーフのラキティッチが、まさに120%チャンスというヘディングシュートをブチかます。

 不運にも、そのヘディングシュートが、スペインGKカシージャスの「ほぼ正面」に飛んでしまったことでゴールにはならなかったけれど、その(スペインにとっての)大ピンチは、ものすごいパワーを秘めた「強烈な刺激」になったはず。スペインにとってソレは、まさに「失点」と同じ意味合いの悪夢だったんだよ。

 その大ピンチで、「失点したらオレ達はアウトなんだった!」という現実を突きつけられたスペイン。そこからは、まさに覚醒したように、より積極的に(リスクを恐れずに!?)仕掛けていくようになった。そしてゲームが、動的な均衡とでも呼べるような、極限テンションに包まれたギリギリの勝負マッチへと成長していくのです。

 勝負を懸けていかざるを得ないクロアチアは、後半21分、二人の選手を同時に交替する。そして、ともに190センチ近い、マンジュキッチとイェラビッチをツートップに据えた。彼らは、いよいよ最終戦闘モードに入っていった。

 最後の時間帯、必死にゴールを奪いにいくクロアチア。「らしい」組み立てから仕掛けいくだけじゃなく、そんな前掛かりのクロアチアのスキを突いた必殺カウンターも見舞うスペイン。

 そして後半43分に決着がつくのです。演出家は、セスクとイニエスタというバルセロナコンビ。シュートを決めたのは、交替出場したヘスス・ナバス。もちろんその後も、最後の最後までギリギリのドラマがつづいた。

 見終わったとき、お恥ずかしながら、力が抜けた。まさに、「これぞサッカー!」というエキサイティングドラマだった。フ〜〜・・

 さて今日はDグループ。ここも混戦だよ。いまから楽しみだ。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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