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2012_ヨーロッパの日本人・・香川真司と長谷部誠・・(2012年1月29日、日曜日)

まず、とてもインプレッシブな存在感で目立ちまくった香川真司から(ホームでのホッフェンハイム戦)。

 前節の「香川コラム」では、もっと個の勝負を・・と、書いた。

 それは、攻守にわたる組織ハードワークはそのままに、その流れのなかで、もっと個の(エゴイスティックな!?)勝負「も」ブチかましていけるチャンスを猛禽類の眼で狙っていこう・・なんてニュアンスだった。

 攻撃での組織ハードワーク(シンプル組織プレー)については申し分ない。でも、勇気(強烈な意志)が絶対的バックボーンになる個の勝負プレー(リスクチャレンジ)をより活性化するためには、とにかく実際にトライしていくことが、ものすごく大事なのだ。

 成功したら(結果が伴わなくても、プレー内容から成功体感を得られたら!?)自信と確信レベルが向上するのは言うまでもないけれど、でも実際は、失敗したりミスに終わってしまうことの方が多い。それでも、「あからさまな蛮勇チャレンジ」でさえなければ、周りのチームメイトも、そのリスクチャレンジを認め、期待もするだろうし、そんな香川真司を頼もしいとさえ感じるはず。

 でも逆に、そんなリスクチャレンジ姿勢(意志のポテンシャル)が減退しはじめたら、すぐにでも「詩を忘れたカナリヤ・・」になってしまう。

 サッカーでは、ミスや失敗につながるような(様々な意味を内包するバランスを、敢えて崩していくような!?)リスクを極力避けようとする安全志向でプレーするのは簡単だからね。そして「詩」を忘れてしまう。

 そこが難しいんだよ。そのバランスがネ・・。だからこそチームは、ストロング・ハンド(優れたプロコーチ)を必要としているんだよ。「人間の弱さ」と積極的に闘ってくれるような強烈なパーソナリティーを。そう、ユルゲン・クロップのような・・ネ。

 ということで、先制ゴールを「美しく流し込んだ」香川真司を、ホッとしながら、とても頼もしく観ていた筆者だったのです。ホント、とても素晴らしいゴールだった。

 そのゴールシーンでは、最終の勝負(突破)ドリブルに入った香川真司の左サイドには、より「可能性の高い」チームメイトがいた。でも彼は、そんな「より安全・確実なオプション」になど目もくれなかった。そして、そのままドリブルで二人の相手ディフェンダーをブッちぎり、相手GKのアクションを冷静に見極めた『ゴールへのパス』を決めた。

 いや、ホント、思わず、「ヨシッ!!」っちゅうガッツポースで気合いを集約した。

 その後も香川真司は、攻守にわたる組織プレーと(より積極的に仕掛けていく)個人勝負プレーが高質にバランスするインプレッシブな実効プレーをブチかましつづけた。発展プロセス(わたしの学習機会)というニュアンスも含め、これからの彼の活躍が楽しみで仕方ありません。

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 さて、長谷部誠。バイエルンとのアウェー戦でっせ。

 いや、ホント、今シーズンのバイエルンは強いネ。ユップ・ハインケスが監督に就任したことで選手たちが「より解放」され、自分たちが秘める実力を存分に発揮しはじめた・・っちゅう印象。そう、攻守にわたる組織プレー(チーム・ハードワーク)でも、個の勝負プレーでも。

 難しいよね、監督のバランス感覚。

 ・・どのように攻め、守るのかというチーム内の決まり事であるチーム戦術(チーム・コンセプト)を徹底させる・・それと同時に、選手たちのプレーの自由度(積極的に考え、判断し、リスクへもチャレンジしていく姿勢≒意志)も出来る限り解放し、高揚させる・・

 だから監督には、優れたバランス感覚が要求されるのです。

 チーム内の、「規制&規律」と「解放&自由」という、ある意味では背反する雰囲気を、柔軟に、そして効果的に「揺動」させるのですよ。そう、さまざまに変化しつづける「チームの目的」を、柔軟に達成していくために・・ネ。

 何せ、試合が始まっちゃえば、もう監督にできることは余り多くはないわけだから・・。あとは、選手たちの、考え、決断し、実行していく「意志」に頼るしかない・・っちゅうわけサ。

 ここまでは、そんなバランス感覚が冴えわたる(!?)ユップ・ハインケスに率いられ、ブンデスリーガだけじゃなく、UEFAチャンピオンズリーグでも、かなりやるのでは・・というポジティブなオーラを放散しつづけているバイエルン・ミュンヘン。

 この日のヴォルフスブルクは、そんな強豪のバイエルンに抗していかなければならない。それも彼らのホーム、アリアンツ・アレーナでのアウェー戦だぜ。そりゃ、徹底した戦術サッカーで臨むしかネ〜だろ。

 ヴォルフスブルクの戦術サッカーだけれど、その中心は、何といっても、バイエルンの核弾頭ともいえる両サイドハーフ、フランク・リベリーとアリエン・ロッベンをいかに抑えるか・・というテーマに集中せざるを得ない。

 とはいっても、彼らに集中し過ぎたら、センターゾーンには、マリオ・ゴメスがいる、トーマス・ミュラーがいる。また後方からは、バスティアン・シュヴァインシュタイガーとトニー・クロースで組む両ボランチが、交替で、タイミングよくオーバーラップしてくる。こりゃ大変だ。

 ということで、ゲームは、最初からバイエルンが押し込んでいくという展開になります。そんな流れのなかで、長谷部誠も、右サイドバックのクリスティアン・トレーシュと協力し、必死にリベリーや、彼がセンターゾーンへ入っていった後に、そのスペースへ入り込んでくる他のバイエルン選手を抑えることに必死という展開になってしまう。

 ボールを奪いかえしても、攻撃の人数が足りない。だから、途中で簡単にはね返されてしまう。そんな状況がつづいたら、そりゃ、攻め上がる勢いだって減退していくのも道理だよね。

 試合は、ことほど左様に、ヴォルフスブルクにとってジリ貧の展開という前半だったわけです。そんな展開だから、「個の能力も抜群だからこそ」の究極の組織プレイヤー(!!)長谷部誠だって良いプレーを展開できるはずがない。でもね、そんな展開のなかでヴォルフスブルクのフェリックス・マガートが繰り出した選手交代によって、ゲームの流れが大きく変化していくのですよ。

 前半の40分。ハーフタイムまで5分というタイミングで、フェリックス・マガートが、守備的ハーフのクリスに代え、韓国代表のク・ジャチョルを投入したのです。

 たぶんクリスは怪我!? とにかく、その交替で、長谷部誠は、本来の守備的ハーフ(センター・ボランチ)の位置へ移動することになりました。そして、彼本来の、攻守にわたる「クリエイティブで効果的な実効プレー」を展開しはじめるのです。

 やっぱり長谷部には、創造的&想像的なボランチが似合っている。周りのチームメイトが忠実にブチかましつづけるチェイス&チェックが効果的なこともあるけれど、とにかく、長谷部が魅せつづける「予測ベースのボール奪取勝負」が光り輝きつづける。

 相手がフランク・リベリーでもシュヴァインシュタイガーやトニー・クロースでも、はたまたアリエン・ロッベンでも、最初のインターセプト狙いが叶わなかったら、粘り強い「寄せとマーキング」で、彼らの得意なプレーに入らせない。そして最後は、必殺タックルでボールを奪いかえしてしまう。

 そして、ボールを奪いかえした次の瞬間には、そのままの勢いに乗って押し上げていく。そして、前後のゾーンをつなぐ素早いドリブルをブチかましたり、効果的なタテパスを供給したり。

 また、ゲームの流れが良くなりはじめているという変化を感じ取ったチームメイトも、その逆襲の流れに乗って上がっていくのですよ。そうなりゃ、ヴォルフスブルクの攻撃の勢いと危険度がアップするのも道理だよね。

 明らかに、前半40分の選手交代で、潮目が変わった。それまで押し込まれつづけていたヴォルフスブルクの勢いが、何倍にも増幅したのです。

 私は、そんな「サッカーの勢いが増幅する現象」の重要なバックボーンが、長谷部誠が魅せつづけた、攻守にわたる忠実な(実効)組織プレーだったとすることに躊躇しません。良かったですよ、本当に・・。その後も、攻守にわたって、とても効果的にボールに絡みつづけたし・・

 でも、たしかに戦術的な噛み合いがズレ気味とはいえ(後期開幕ゲームではメンヘングラッドバッハにアウェーで惨敗!)、やっぱりバイエルンは底力がある。

 たしかに、両サイドハーフによる仕掛けが「ドリブル勝負に偏り過ぎ」だから、相手ディフェンスにとっては、抑えどころを絞り込みやすいという視点がなきにしもあらず・・ではあるけれど、やはり個人能力はリーグ屈指だからね。

 攻守にわたる組織サッカーの内実が同じレベルにある場合、やはり最後は、個のチカラがモノを言う・・のです。

 とにかく、長谷部誠が、相変わらず彼本来のパフォーマンスを高みでキープしていることを確認できて、(シュヴァインシュタイガーとの激突による怪我で交替せざるを得なくなったとはいえ・・)本当にハッピーだった筆者でした。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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