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2012_ブラジルWM予選・・最後まで積極サッカーを展開し、後味良く勝ち切ったザックジャパン・・(日本vsイラク、 1-0)・・(2012年9月11日、火曜日)

そうそう・・、両監督も異口同音に示唆していたけれど、イラクは、ゲームの立ち上がりから、日本チームの「背骨」である、大人のダブルボランチ(遠藤保仁と長谷部誠のことだよ!)に対して、強烈なプレッシャーをブチかましてきた。

 そのプレッシャーを掛ける急先鋒は、もちろんイラクの両トップ。

 最前線の彼らは、ボールを失った次の瞬間から、強烈な勢いでチェイス&チェックに入るんだ。そして彼らの中心的な「守備イメージ」が、日本代表ミッドフィールドの絶対的コアである「大人のダブルボランチ」に向けられていたっちゅうわけです。

 ジーコは日本のことを本当によく知っている。その二人を抑えれば、日本代表のポテンシャルが大きく落ち込むことをね。わたしは、それが、ジーコの巧みなゲーム戦術だったと確信しているわけです。

 そのこともあったんだろうね、ジーコは、イラクでは絶対的な主力と考えられていた5番(ナシャト)と10番(ユーヌス)をベンチスタートにしたんだ。彼らには、先発したメンバーがブチかまし続けたような最前線からの強烈なプレッシングは期待できないからね。

 たぶんジーコの勝負イメージは、こんな感じだった・・!?

 ・・中盤で攻守にわたって「タクト」を振るう遠藤保仁と長谷部誠・・彼らさえ抑えれば、日本は容易にはペースアップ出来ない・・攻撃のポテンシャルも大 きくダウンするだろう・・そうすれば、フラストレーションが溜まり、ダイナミズムも失われていく(要は、足が止まり気味になる)・・

 ・・とにかく、いけるところまで「この戦法」でいく・・そして最後の時間帯に、エースの5番と10番を投入するんだ・・そうすれば、ペースを乱している 日本だから、才能に恵まれた5番(ナシャト)と10番(ユーヌス)は、より実効あるカタチで才能を光り輝かせるに違いない・・

 ・・もし、彼らを投入するまで同点だったら、勝つチャンスは無限大に広がるし・・1点くらいの(日本の)リードだったら、引き分けに持ち込める公算が大きくなる・・

 実際、交替出場した5番(ナシャト)と10番(ユーヌス)は、抜群の存在感を発揮した。

 あっと・・言いたかったことは、ジーコが、この二つの才能を存分に活用するために、まず何といっても、ゲームの流れを牛耳っておく必要があると考えたに違いないというポイントだった。

 もちろん、ここで使った「流れを牛耳る」という表現の意味合いは、ボールポゼッションではなく、実質的な『勝負の流れ』を掌握しておくっちゅうことだよ。念のため・・

 立ち上がりの時間帯は、そんなジーコの思惑が、うまくはまった。

 日本のダブルボランチの自由度は、たしかに抑えられ気味だった。だから、グラウンドのセンターゾーンも、人数を掛けたイラク守備ブロックによって効果的にコントロールされていた。

 でも、ザッケローニは、そんな序盤のゲーム展開を直ぐに(敏感に)把握し、選手たちに指示を飛ばしたんだよ。

 常にボランチのところから展開していくのではなく、相手に詰められて余裕がなくなったら、センターバックへボールを戻し、「そこ」からサイドゾーンへ展開するように・・ってね。

 そして、そんな臨機応変のゲーム采配が功を奏する。チームが、「より明確に」サイドからの仕掛けを意識するようになったんですよ。

 右サイドには、岡崎慎司と駒野友一で構成する「タテのコンビ」が、また左サイドには、清武弘嗣と長友佑都の強力コンビが控えているからね。そりゃ、サイド攻撃が活性化され、強力な勝負プロセスが展開されるはずだ。

 というわけで、どんどん「タテのポジションチェンジ」を織り交ぜながら危険な仕掛けをブチかましつづける両サイドのコンビなのです。

 でも、その「仕掛けのタイプ」には、ちょっとした違いがあったですかネ。

 左サイドでは、よりドリブル勝負が目立ち、逆に右サイドでは、フリーランニングと決定的スルーパス(スローイン)のコンビネーションがツボにはまる。

 決勝ゴール場面では、目の覚めるような鋭いスタートダッシュを決めた岡崎慎司が主役だった。

 彼が狙う「ウラの決定的スペース」へ、迷うことなく駒野友一がスローインを飛ばしたんだよ。本当に、えも言われぬほど美しいスペースの攻略コンビネーションだった。駒野友一と岡崎慎司の勝負イメージがピタリとシンクロしたんだよ。

 また、岡崎慎司からの正確なクロスを(ヘディングで)決めた前田遼一が、相手がボールウォッチャーになった瞬間を狙ってスタートを切った(パスレシーブの!)動きも秀逸だった。

 また左サイドからは、清武弘嗣がドリブル突破を披露したり、長友佑都が、センターゾーンへ切れ込んでいく突破ドリブルからキャノンシュートをブチかましたりする。

 いや、ホント、両サイドからの仕掛けは爽快そのものだった。

 もちろん本田圭佑も、効果的に絡んでいくよ。

 本田圭佑の運動量はアップしているし、それに伴って、(攻撃での)ボールがないところでの動きの量と質もかなり向上している。また守備でも、これまでのような「ぬるま湯」ではなく、チェイス&チェックも忠実に仕掛けていくなど、実効あるハードワークも展開する。

 そんなだから、彼のところにボールが集まるのも道理。そして、だからこそ、組織サッカーのなかで「中軸としての機能性」を存分に発揮できるようにもなっている。

 その本田圭佑のボール絡みのプレーだけれど、もっとも大きく変化したと感じるのは、相手のプレッシャーをモノともせずにキープし(危険なタメの演出)、 そこから、ドリブル突破にチャレンジしたり、決定的な展開パスやスルーパスにチャレンジしたりするといった、ミスを恐れないプレー姿勢ですかネ。

 もちろん、これまでも、しっかりと(勇気をもった!)勝負プレーを繰り出していた本田圭佑だけれど、ここにきて、そのチャレンジ姿勢が、より先鋭化していると感じられるのです。

 自分がチームの中心なんだ・・という自覚が芽生えてきた!? さて〜〜・・

 まあ、これは、とても微妙で感覚的なコトだけれど、私には、本田圭佑が、世界トッププレイヤーへ向けて、着実に「ブレイクスルー」を果たしていると見えるのですよ。

 ・・あ〜っ・・ちょっと、時差ボケが・・ホントに眠くなってきた・・でも、もうちょっと頑張る・・

 ということで、最後に、終盤の時間帯における日本代表のプレー姿勢(意志の内容)について考えようと思います。

 ということで、ザッケローニさんに、こんな質問を投げた。

 「最後の時間帯について聞きます・・たしかにザッケローニさんが言われるように、1対0は危険な状態・・交通事故のような失点でも同点ですからね・・そ んなとき、イラク(ジーコ)も、主力の攻撃プレイヤーである5番と10番を投入してきた・・また清武弘嗣と代わって中盤ディフェンスが主体の細貝萌も入っ てきた・・そして、そのままでは負けてしまうイラクが、より積極的に仕掛けてきた・・危険な流れだと感じた・・普通だったら、逃げ切ろうと人数を掛けて守 りに入ってしまいそうな展開だが、日本代表は違った・・彼らは、決して下がりすぎず、常に前からのプレッシングでボールを奪い返そうとしていたし、攻撃に 入っても、最後まで積極的に人数を掛けていた・・だから、とても積極的に(後味良く)勝ち切れたわけだが、そんなプレー姿勢は、ザッケローニさんの指示が 効いたからなのか、それとも選手たちの自主性が向上したのだろうか・・?」

 またまた長〜い質問になってしまった・・スミマセン。でもザッケローニさんは、真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

 ・・私は、引いて受けるなと言ったわけではない・・時には(相手が強ければ!?)そんな状況も出てくるだろうけれどね・・とにかく我々は、常に前へ進ん でいくことを心がけている・・中盤の構成を変えたのだが(清武と細貝の交代のこと!?)・・それには、イラクの選手交替への対処というニュアンスも含まれ ている・・それでも我々は、最後までスリートップを堅持し、2点目の追加ゴールを奪いにいくという姿勢は変えなかった・・オーストラリア戦でも、もう1点 取っていれば、PKを取られても勝てたわけだからな・・等など・・

 スミマセン、もう限界。明日、ビデオを見てから書き足すかも知れません。では、お休みなさい・・

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 最後に、お知らせを一つ。

 ライプツィヒ大学で教鞭を執る、友人の小林敏明さんが新刊を上梓したのですよ。

 小林敏明さんとは、2006年ドイツワールドカップでも対談(その1その2)したし、よく私のコラムでも登場するから、ご存じの方も多いとは思います。

 本のタイトルは「フロイト講義<死の欲動>を読む」です。せりか書房・・

 そりゃ、簡単な内容じゃないよ。哲学的な表現の「意味合い・関係性」をある程度は理解していなければ読み解けない文章も多いからね。だから書評的な紹介をしようなんて思わない。

 でも、その内容には、サッカー(スポーツ)に通じるモノがある。

 わたしは、その最終章、「人間---この残酷な存在」を何度も読み返した。人間の残酷な本性・・でも人間社会は「まだ」崩壊していない・・そこには、なんらかのメカニズムが働いている!?

 たとえば、昇華やカタルシスとという人間心理の(善循環!?)メカニズム(!?)・・さて〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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