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2012_日本フル代表・・ネガ・ポジも含め、とても良いトレーニングマッチだったと思う・・(日本vsUAE、 1-0)・・(2012年9月6日、木曜日)

どうも皆さん、ご無沙汰です。ちょっと予定が早まり、本日の午後に帰国しました。

 ということで、UAEとの親善試合をテレビ観戦できました。そのゲーム、日本代表にとって、とても良いトレーニング(イメージの再調整機会!?)になったと思います。

 相手のUAE代表は、地域予選を初めて突破したロンドンオリンピックの代表メンバーが中心になっているそうな。だから、監督さん(ロンドンオリンピック代表チームを率いた優れたコーチ!?)も含め、新しくスタートした代表チームということになるんだろうね。

 とにかく、とても良いチームです。アラブ特有の優れた個のチカラをベースに、しっかりとした組織サッカーを展開する。だからこそ、彼らの個のチカラが、本当の意味で光り輝く。

 アラブ諸国が、「組織」と「個」を高質にバランスさせるサッカーに目覚めたら、それこそ日本や韓国にとっての強力ライバルになる。このUAE代表は、そんな、これからのアジア勢力地図が塗り変わっていく可能性を示唆していた!? フムフム・・

 そんな優れたUAE代表チームだけれど、やはり総合力では、日本の敵じゃなかったね。

 とにかく、決定的チャンスの量と質でUAEを凌駕したザックジャパンだったのです。

 まあ、とはいっても、日本代表が、何度かウラを突かれたピンチに見舞われたことも確かな事実だったし、あれほどのチャンスを作り出しながら、結局は1点しか奪うことが出来なかったという課題は残ったけれど・・

 それに・・、3人目、4人目のボールがないところの動き(フリーランニング)を使いこなす(要は、ワンツースリーフォーといったダイレクトパスが流れるようにつながる)優れたコンビネーションが少なかったという印象も残ったよね。

 ・・足許でパスを受けようとする傾向(イメージ)が強かった!?・・後方からの押し上げが使えるスペースを作り出すような忠実なパス&ムーブが少なかっ た!?・・アイコンタクトがなければ、パスを呼び込む「エイヤッ!」のフリーランニングを繰り出していけなかった!?・・また逆に、UAE守備が、日本の ボールがないところでの動きをうまくケアー出来ていた!?・・

 たしかにUAEは、日本の組織コンビネーションを(要は、ボールがないところでの動きを)しっかりとケアー出来ていたよね。もちろん「それ」が上手く機能していたのは、自分たちが、組織サッカーを目指しているからに他ならないわけです。守備と攻撃は表裏一体だから・・

 まあ、たしかに前半には、清武弘嗣からのタテパスを受けた香川真司がヒールで流し、それを本田圭佑がダイレクトで叩いたシーンとか、清武弘嗣から、「3 人目」としてウラの決定的スペースへ走り抜けた香川真司へピタリと合わされた浮き球スルーパスシーンなどもあったし、後半では、岡崎慎司が中心になってワ ンツースリーという流れるようなコンビネーションが成就したシーンなどもあったけれどね。

 ということで、このコラムのテーマは、チャンスに至るまでのプロセス内容の確認・・っちゅうことになるわけです。ちょっと大袈裟ですかね・・時差ボケなのに・・

 日本代表の場合、チャンスへ至るまでのプロセスを代表する流れは、何といってもダイレクトパスを駆使する(人とボールが動きつづける)コンビネーションだよね。

 ・・ボールに意識と視線を引きつけられた相手守備・・そして彼らが気付いたときには、3人目、4人目のフリーランナーにウラの決定的スペースへ走り込まれ、「そこ」にダイレクトでスルーパスを通され、最後はダイレクト(ヘディング)シュートを決められちゃう・・

 でも、人数を掛けた相手ディフェンスに、ボールがないところでの動き(3人目、4人目)を封じ込められたら(要は忠実にマークされつづけたら)コトが難 しくなってしまう。そして、落胆や諦めの雰囲気が蔓延しはじめ、ボールがないところでの動きの量と質もダウンしていっちゃう。

 ということで、日本の場合は、いかに組織サッカー(ボールがないところでの動き)の勢いを高みで安定させるのかというのが大事なポイントになるわけです。

 シュートを打つのが攻撃の目的だけれど、もう何度も繰り返しているとおり、組織サッカーを志向するチームでも、個のチカラを前面に押し出すサッカーでも、シュートに至るまでの当面の目標は(決定的)スペースを攻略することだからね。お忘れなく・・

 ということで、日本代表は、あくまでも(まあ・・第一義的に!?)人とボールを動かしつづけることで(要はパスで)スペースを突いていこうとするわけなのですよ。

 それに対して、個のチカラに長けた(そのチカラを駆使する方針の!)チームの場合は、より、勝負ドリブルで(マーク相手を置き去りにすることで)スペースを攻略しようとするわけです。

 もちろん相手は、その傾向をしっかりとスタディーして対策を練ってくる。この試合のUAEのようにね・・もちろんイラクも・・

 そして、巧みに日本をフラストレーションのワナにはめ、ボールがないところでの動き(決定的パスを呼び込む動き)の勢いを減退させちゃう。

 そんな展開、皆さんも、よくご存じですよね。そして、だからこそ、日本代表チームで「も」、個のドリブル勝負が重要な意味をもってくるのですよ。特に、ワールドカップ予選という、肉を切らせて骨を断つというギリギリの勝負の場合は・・ね。

 組織サッカーの流れを高みに維持することで効果的にスペースを攻略し、そこから、パスとドリブル勝負を効果的にミックスするような(シュートに至る)最終勝負を仕掛けていく・・

 まあ、ワールドカップ予選に臨む日本代表にとっては、いかにタイミングよくドリブル勝負に「も」チャレンジさせるのか・・というのがメインテーマになってくるのかもしれないね。

 だからこそ、岡崎慎司や香川真司、はたまた本田圭佑や清武弘嗣といった「攻撃的ハーフ」トリオには、ドリブル勝負「も」期待されるっちゅうわけです。

 さて、ここで最後のテーマに入ります。

 それは、組織パスサッカーの「リズム」をハイレベルに保ちながら、必要とあれば、周りにパスを受けられる味方がいるにもかかわらず、「エイヤッ!」の突破ドリブル勝負にチャレンジしていくマインド「も」、高みで維持するということです。

 だからこそ、監督による心理マネージメントが重要な意味をもってくる。

 良いコーチは、自己犠牲も含む組織マインドを高みで維持しながら、勇気をふり絞った「個人勝負マインド」にもチャレンジするように選手をモティベートできるものなんです。

 「組織」が高じすぎれば、必ず「アリバイ的なマインドの根」も張り始めるものだし、個の勝負マインドばかりを強調したら、今度は、ボールがないところでの動きが鈍化してきちゃう。

 ということで、最後は、監督(プロコーチ)のバランス感覚・・というテーマに落ち着くわけです。

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 最後に、お知らせを一つ。

 ライプツィヒ大学で教鞭を執る、友人の小林敏明さんが新刊を上梓したのですよ。

 小林敏明さんとは、2006年ドイツワールドカップでも対談(その1その2)したし、よく私のコラムでも登場するから、ご存じの方も多いとは思います。

 本のタイトルは「フロイト講義<死の欲動>を読む」です。せりか書房・・

 そりゃ、簡単な内容じゃないよ。哲学的な表現の「意味合い・関係性」をある程度は理解していなければ読み解けない文章も多いからね。だから書評的な紹介をしようなんて思わない。

 でも、その内容には、サッカー(スポーツ)に通じるモノがある。

 わたしは、その最終章、「人間---この残酷な存在」を何度も読み返した。人間の残酷な本性・・でも人間社会は「まだ」崩壊していない・・そこには、なんらかのメカニズムが働いている!?

 たとえば、昇華やカタルシスとという人間心理の(善循環!?)メカニズム(!?)・・さて〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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