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2012_五輪なでしこ・・悔しいドロー・・でも素敵な「伸びしろ」も感じさせてくれた女傑たち・・(なでしこ対スウェーデン、 0-0)・・(2012年7月28日、土曜日)

やっぱり、組織サッカーの質という視点からすれば、「なでしこ」の方が、一回りも、二回りも「上」だね。まあ、そのことは、両チームが作り出した決定的チャンスの量と質(その内容)を比べてみても一目瞭然ということです。

 スウェーデンも、基本的には組織パスコンビネーションを標榜(ひょうぼう)しているけれど、最終勝負では、どうしても人とボールの動きを「うまく」連動・連鎖させられない。そして最後は、どうしても「大きな展開」からの、大雑把な勝負になっちゃう。

 もちろん「その現象」の背景には、「なでしこ」の優れた組織ディフェンス「も」ある。

 相手ボールホルダーへの忠実なチェイス&チェック。その「ボールへの寄せ」が、とても効果的で忠実でダイナミックなのですよ。だからこそ、次、その次の 味方選手が、スウェーデンのパスを正確に「読む」ことができる。だから、美しいインターセプト等、効果的にボールを奪い返せる。

 スウェーデンと「なでしこ」の組織コンビネーションは、一味も、二味も違う・・というか、なでしこの方が明確に上質であることは誰もが認める事実ということです。あっ・・またまた繰り返し・・

 そんな、優れた組織コンビネーションサッカーが生み出す(なでしこにとって有利な!?)グラウンド上の現象だけれど、その典型例は、何といっても「これ」。要は、相手選手とのフィジカルな接触(コンタクト)を、限界まで「避け」られるということ。

 スピードやパワー、そして高さで「なでしこ」を圧倒するスウェーデンやアメリカ、はたまたブラジルやカナダ、英国の「大女」連中に、身体を張ったコンタクトプレーを挑んでいくことほどバカげた「やり方」はないんだよ。

 そんなことをしたら、局面でのせめぎ合いに負けつづけることで組織サッカーが機能しなくなっちゃう。だからこそ「なでしこ」は、人とボールを動かして相手ディフェンスを翻弄し、スペースを攻略するという「やり方(チーム戦術)」を志向するわけです。

 スペースを使う・・というコトの意味は、もちろん、ある程度フリーでボールを持つ状態を作り出すことだよ。それが、決定的スペースだったら、即、最終勝負&シュートしかない。

 なでしこの女傑たちは、そんな「最終勝負の起点」を、「極力」相手選手とのコンタクト(接触)を避けるなかで作り出しちゃうんだ。素敵でしょ・・

 ところで、組織パスコンビネーションの「当面」の目標イメージだけれど、それは、相手ディフェンスのウラに広がる決定的スペースを効果的に攻略していく ことだよね。そのために、相手ディフェンスの組織バランスを崩すことで、自ら、使えるスペースを「作り出す」ことが必要なんだよ。

 要はサ、人とボールが動けば(パスが活発に回れば)相手ディフェンスも、その動きに対応したアクションを起こしていかなければならなくなるっちゅうことサ。だから、スペースが出来るし、ウラの決定的スペースも「手薄」になる。

 「そこ」を、女傑たちが効果的に突いていくのさ。

 まあ・・ね、なでしこの女傑たちは、忠実に、スペース(フリー)ランニングを繰り返すからね。それが全ての基本ということです。

 そう、パスを呼び込む動き。結局は、ムダに終わることの方が多いけれど、でも、だからといって彼女たちは、決して「その動き」をサボったりしない。

 そんな、ボールがないところでの効果的な動きこそが、「なでしこ」が展開する、世界が認める組織サッカーの基本ということなんだよ。その忠実なフリーランニングがあるからこそ、パスを受ける味方選手も、しっかりと「次のパスのイメージ」を構築できるっていうわけさ。

 もちろん、フリーランニングをする方(創造的なムダ走り!)にしても、チームとしてのコンセプト(トラップ&パスを連続してつづける軽快なリズム)に対する信頼が厚いわけだよ。だからこそ、走るのをサボったりしない。

 そんな、互いに「使い、使われるメカニズム」に対する深い理解と、だからこその相互信頼が、なでしこの女傑たちを「強く結びつけて」いる。

 そして、だからこそ、たまには、誰もが目を見張る「ウラの決定的スペース」へ送りこむスルーパスと決定的なフリーランニングが、ピタリとコラボしちゃ う。それも、3人目、4人目という複合的なフリーランニングが絡み合うなかでのウラ突きパスだからね、秀逸というしかない。ホント、素晴らしい。

 もちろん、そんな相互理解と相互信頼の雰囲気をチーム内に浸透させ、醸成したのは、佐々木則夫監督。彼は、オヤジギャグを飛ばしているだけじゃないんだよ。彼は、とても優れた心理マネージャー(プロコーチ)でもあるわけだ。

 なでしこの女傑たちにしても、佐々木則夫監督を敬愛している。だからこそ、佐々木則夫監督も、「軽いオヤジギャグ」を飛ばすことが出来るのさ。そのこと で、彼が「軽く見られる」ことは全くないわけだからね。それも、選手と監督の相互理解と相互信頼の証しなんだよ。良いね・・

 あっと・・ちょっとハナシが逸れた。とにかく、スペースをめぐる組織サッカーのぶつかり合い・・となったこの試合では、「なでしこ」が、彼女たちの実力を存分に魅せつけ、内容でスウェーデンを凌駕した・・とするのがフェアな評価でしょ。

 佐々木則夫監督は、試合後に、カナダ戦よりも成長した姿を見せられた・・なんて語っていたらしい。それは、なでしこの女傑たちを深く理解しているからこその正直な「体感」なんだろうね。

 また女傑たちにしても、とても立派で、頼り甲斐ある(期待感を極限までアップさせてくれる!)言動で我々を魅了する。

 ・・たしかに(あれだけのチャンスをしっかりと決められなかったことで!)勝てなかったのは悔しいけれど、自分たちはチャレンジャーなんだから、(内容で優っていたことは!?)自信アップにつながる・・なんていう言葉を、ごく自然にコメントしちゃうんだ。

 そんな「前向きの姿勢」を本番でもキープできることは、ホントに素敵だよ。だからこそ彼女たちには、大きな「伸びしろ」があるっちゅうわけさ。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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