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2012_五輪なでしこ・・「組織」vs「個」という基本的なゲームの構図・・なでしこが展開した立派なサッカーに乾杯!・・(なでしこ対ブラジル、 2-0)・・(2012年8月4日、土曜日)

ヨ〜シッ・・ヨシッ、ヨシッ、ヨシッ!!!

 タイムアップのホイッスルを聞きながら、自然と、そんな気合いの掛け声が口をついていた。当たり前だよね。こんな立派なサッカーを展開してくれた「なでしこ」を誇りに感じない日本人の方々はいないに違いないでしょ・・

 聞くところによると、(やっぱり!?)佐々木則夫監督は、南アフリカとのグループリーグ最終戦では「戦略サッカー」を意識したんだってさ。そう、準々決 勝での「フランスとのガチンコ勝負」を避けるために、ゲームの経過を見ながら、「出来れば」南アと引き分けること「も」イメージした!?

 でも私は、フランスと準々決勝で当たることになっても、まったく心配していなかったから、ちょっとフラストレーションを溜めていた。

 先日のフランスとのフレンドリーマッチ(2-0でフランスの勝利)でも、たしかに立ち上がりは押し込まれはしたけれど、ゲームの流れが落ち着いてきてからは、「なでしこの究極の組織サッカー」に一日以上の長があったと思っていたのですよ。

 だから私は、南アとのグループリーグ最終戦での「戦略サッカー」に納得していなかったっちゅうわけです。まあ・・ネ、そのゲームのコラムでは、「もしかしたら佐々木則夫は、暗にグループ2位になることも意識していた!?」なんていうニュアンスの表現にしたけれど・・

 まあ私は、どうせフランスとは、準決勝で「ガチンコ勝負」を展開することになるはずだと確信していたわけだけれど・・あははっ・・

 ここまでの文章は(もちろん冒頭の2つの文章ブロックは後付けだけれど・・)、ハーフタイムに、エモーション(情緒エネルギー)にまかせて書きました。それほど、「なでしこの勝利」に対する確信が深かったのです。

 たしかに前半の16分には、「放り込み」からのこぼれ球でピンチになったけれど、全体的なゲームの流れを見れば、「なでしこ」の優位は、まったく動かないと確信していたわけです。

 とはいっても、後半15分あたりにも、マルタの危険なフリーキックや、クロスからの危ないシーンが続いたけれど・・ネ。

 そして案の定「なでしこ」は、ボールポゼッション(ボール保持率)という表面的なゲーム展開とは違う、実質的な、「限りなく安定した」立派なサッカーで内容的にも順当な勝利を収めた。

 このゲームの構図は、言わずもがなだけれど、高質な「組織サッカー」と、限りなく「個の才能」に頼り切る低次元サッカーの対峙ということになった。

 いつも書いているように、個の才能は、様々な意味合いで「諸刃の剣」に成り下がってしまうケースが多いんだよ。まあ、関塚ジャパンにも言えることかも知 れないけれど、とにかく才能に恵まれているからこそハードワークにも精進すべきなのです。それがあって初めて、世界トップが見えてくる・・

 ということで、皆さんも観られた通り、なでしこが展開した攻守にわたる究極の組織サッカーは、ホントに素晴らしく頼り甲斐がありました。わたしは、誇りにさえ思っていた。

 そんな「組織のなでしこ」に対し、「個」を前面に押し出す「力ずく」のブラジルは、まったくといっていいほど、なでしこの組織ディフェンスを崩していけなかった。

 それは、もちろん、佐々木則夫監督のゲーム戦術(戦術的なイメージ作り)があったればこそ・・だよ。そう、効果的な「組織」と忠実な(汗かきマークをつづける)粘りマインドに支えられたディフェンス。

 ブラジルは、足許パスと、局面で仕掛けていく個人勝負の「ブツ切りサッカー」だからね、「なでしこ」は、そんなブラジルの「やり方」を深く理解し、それ に対して効果的に対処していけるだけの創造的&想像的な組織ディフェンスを展開したんだよ。そんな忠実で粘り強い「意志」があったからこそ、彼女たちの組織サッカーを誇りに感じるわけです。

 要は、いつも書いているように、サッカーは、スペースをめぐるせめぎ合いということだね。スペースを、組織コンビネーションで攻略していくのか、個のドリブルによって「そこ」に入り込んでいくのか・・

 皆さんもご覧になった通り、ブラジルのボールの動きは、まさに「足許パス」のオンパレードだったでしょ。たしかにボールの位置は移動するけれど、各ス テーション(パスをトラップする各プレイヤーのところ)で、その動きが一旦ストップし、そこから勝負ドリブルで再スタートする。

 ことほど左様にブラジルは、常に「個の勝負」を仕掛けていくんだよ。だから「なでしこ」の守備ブロックは、ブラジルの「次の仕掛け」を明確にイメージし、粘り強く効果的なディフェンスプレーを展開することが出来た(もちろん佐々木則夫監督のイメージ作りもあった!)。

 「組織」vs「個」という基本的なゲームの構図を、余裕をもって制した佐々木則夫なでしこチームに、乾杯!!

 それにしても、南ア戦で「あんな戦略サッカー」を強いたにも拘わらず、その後のしっかりとした「心理マネージメント」によって(主力選手たちとの深いコ ミュニケーションによって!?)、チームの「モラル」を逆にアップさせた佐々木則夫は、ホントに天才的な心理マネージャーかもしれない。

 わたしは、フットボールネーションにおいて、そんな「戦略サッカー」でチームのモラルが崩壊した例を、とてもたくさん体感しているのですよ。だからこそ、佐々木則夫監督の心理マネージメントのウデを高く評価するわけです。

 さて、ということで準決勝のフランス戦。

 私は、まったく心配していない。

 もちろん佐々木則夫監督は、ウィニングチーム・ネバー・チェンジというサッカーの原則を貫くに違いないけれど、フランスも、この試合でのブラジルのよう に、ゲームの立ち上がりから「強烈なプレッシング」をブチかましてくるに違いない。でも、フラランスだって、そんなプレッシングサッカーを90分間つづけ られるはずがない。

 そして、ゲームが「落ち着いて」きたら、かなり「動的に均衡」したエキサイティングマッチになるはず。なでしこの女傑たちも、フランス守備の「守りイメージ描写の限界」を体感しているはずだからね。だから私は、そんなゲームの「全体的な構図」を確信している。

 ところで、フランスとの準決勝だけれど、私は、ラジオ文化放送の東京スタジオで、ゲームの前後やハーフタイムにコメントすることになっています。さて、どうなることやら。

 とにかく、お互い、フランス戦をとことん楽しみましょう。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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