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2012_ヨーロッパの日本人_ミランダービーの長友佑都・・見所満点イタリアン守備・・(2012年1月16日、月曜日)

ミラノダービー。見終わってから、ちょっと寝たのでアップが遅れた。ご容赦・・

 それにしても、まさに世界一の守備のぶつかり合いだったですね。それが、この勝負マッチの基本的な見所の「構図」だった。

 何せ、あれほどの「世界の攻撃タレント」が集約されたチーム同士の対戦なのに、両チームともに、セットプレーやロングシュート以外の「流れのなか」では、まったくと言っていいほど相手守備ブロック背後の決定的スペースを攻略していけないのだから。

 ホームのミランは、イブラヒモビッチとかパト、はたまた「オランダの天才」エマニュエルソンといった「天賦の才」連中による個の(強引な!?)勝負からのシュートシーンが多い。加えて、前戦の天才連中だけじゃなく、後方からバックアップしてくるファン・ボメルやボアテングといった猛者連中もミドルシュートをブチかますし、それに伴って生まれる「こぼれ球チャンス」にも最高の集中力で備える。

 それに対してインテルは、あくまでも「組織的なカウンター」で、要はラストパス&パスレシーブの動き(フリーランニング)を主体にした最終勝負(シュートシーンの演出)をイメージしている。まあ・・ミランが相手ということで、この試合に限っては、しっかりと守って必殺カウンターをブチかます・・といったゲーム展開イメージだったんだろうね。

 そして結局は、そんなインテルの「ゲーム戦術イメージ」がピタリとツボにはまったという結果に落ち着くことになった。フムフム・・

 ということで、長友佑都。

 そんなゲームの「構図」だったからこそ、例によって粘り強く堅実な(しつこく、素早く、そしてクレバーに相手を最後まで追い詰める!?)ディフェンスを絶対的ベースに、右サイドのマイコンとのバランスや、左サイドのアルバレストとのタテのポジションチェンジという視点も含めた冷静さで(!)タイミングの良いオーバーラップを狙いつづける長友佑都のチャンスの意味合いも、より深く、広いモノになった・・と思う。

 要は、彼がオーバーラップした状況で生まれてくる「本物チャンス」の確率が、普段よりもアップしたと感じられたのですよ。

 そりゃそうだ。相手はホームのミランだからね、オーバーラップというリスクチャレンジが、少し抑え気味になるのも自然の成りゆきだし、だからこそ、満を持してブチかます攻撃参加(タテスペースへのオーバーラップ)の危険度が格段にアップするのも道理だったんだよ。

 前半40分にブチかました、相手アヴァーテを振り切るドリブルからの決定的クロスシーンは、(フリーのアルバレスが放ったシュートは、ミランGKアッビアーティの足に弾かれてしまったけれど!!)誰もが高く評価するでしょ。

 それに、61分にブチかました(最後はCKになった)ドリブル突破&ロングシュートや、72分に最前線の決定的スペースでパスを受け、相手を一人かわして放った決定的シュートシーン。見応え十分でした。

 ところで、インテルノラにエリ監督。決勝ゴールを奪ってから、アルバレスに代えてキヴーを投入。そして長友佑都を、左サイドハーフへと上げた。もちろん長友佑都による、前戦からの効果的ディフェンスに「より大きな」期待を込めて・・ネ。

 そして最後の20分間のドラマがはじまった。

 何も失うモノがなくなったミラン・・勝負と「様々な意味合いを内包するバランス」にこだわったゲーム戦術など放り投げ、攻撃の天才連中を次々に投入していく。

 前述した、インテルのラニエリが守備の強化を意識してキヴーを投入したのも、ミランがブチかましてくるだろう反抗のパワーを抑制しようというのが発想のベースだったわけだけれど、ラニエリは、それだけじゃなく、このゲーム唯一のゴールを決めた最前線のミリートに代えてスナイデルを投入するのですよ。

 これは、とても秀逸な交替だったね。ミリートの疲れもあるけれど、守備でも忠実でクレバーな実効プレーを魅せるスナイデルを入れることで、ミランの攻撃の勢いを抑制するだけじゃなく、攻撃でも、スナイデルのキープ力をうまく活用してゲームを落ち着かせる・・っちゅうことか。

 その発想は、上手く機能したと思う。それでも、グラウンドに入った早々に危険なミドルシュートをブチかましたセードルフが投入されてからは、ちょっと雲行きが怪しくなったけれどネ。そのギリギリのシュートが、心理的に、ミランの勢いに火を点けた!? そう・・サッカーは究極の心理ゲームだからね。でも結局は・・

 結局は、わたしがイメージしていた程、ミランの攻撃内容がアップしていかなかったということだね。

 ・・その背景には・・前述した、キヴーやスナイデル投入の背景もあるけれど・・それに加えて、世界最高のセンターバックコンビ、ルシオとサムエルを忘れちゃいけない・・また中盤には、攻守にわたって抜群の汗かきプレーを魅せつづける大ベテランのハビエル・サネッティーがいる・・

 ・・「あの」サネッティーの身体と意志って、一体どんなふうに機能しているんだろうね・・強烈な闘う意志に支えられた、攻守にわたる素晴らしい実効チームプレー(ハードワーク)・・サネッティーは、確実に、サッカー史に燦然と輝きつづけるに違いない・・等など・・

 とにかく、「この」インテルで、長友佑都が、とても重要なチーム価値を生み出しつづけているという事実に感銘を受け、心から賞賛し、祝福したい筆者なのでした。アンタは、紛(まが)うことなく、日本のアイデンティティー(誇り)だよ。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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