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2012_J1_第13節(FCTvsR)・・この試合については、ビデオを見直してポイントをまとめることにした・・(2012年5月27日、日曜日)

あまりやらないけれど、昨日のFC東京vs浦和レッズのゲームが、あまりにも魅力的だったから、ビデオを確認しながら、気付いたポイントを整理することにしました。

 昨日は、ホントに強烈な睡魔に襲われていた。だから、まったくといっていいほど「思考の広がり」を活性化できなかった。自由なサッカーだからネ、この「思考の広がり」こそが大事なんだよ。

 ドイツ伝説のスーパーコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーについて、こんな表現をした(当時の)スーパースターがいた。

 「もう、あんなに深いポイントまで素早く気付き、オレ達に分かりやすく伝えて次の戦術に活かしていくような素晴らしいコーチにはめぐり会えないだろうな・・」

 そう、サッカーコーチは、一つ一つのグラウンド上の現象について、その具体的なプレー内容だけじゃなく、もっと深く関連する戦術的なバックボーンや、そこから派生してくる様々な現象まで、素早く、正確に「イメージ構築」できなければならないんですよ。

 わたしは、そのことを「プロコーチの瞬発力」なんて表現するけれど、優れたパーソナリティーと同様に、「それ」もまた、コーチの優秀性を左右する大事な「資質」なのです。

 あっ・・また蛇足・・スミマセン・・昨夜は、なんで「あんなに」疲れていたのかっちゅうポイント・・

 実は昨日の未明、日本オリンピック代表チーム(関塚ジャパン)が、トゥーロン大会でオランダを破ったゲームをテレビ観戦したのですよ。とても良いゲームだったから、その後、勢いでコラムまでアップしてしまった。そのコラムは「こちら」・・

 そのこともあって、昨日はほとんど寝ていなかったのです。そして、愛車のオートバイを駆って「J」をハシゴ観戦した。もう還暦だからね、先日の(愛車のオートバイで出掛けた)エコパ往復も含めて、ちょっと疲れが溜まり気味だったっちゅう体たらくだった。フ〜〜・・

 またまた「前段」が長くなっちゃった。ということで、気付いたポイントです・・

 ・・まず最初に、このところ良くなっていると思っていたテレビの「映像作り」が、この試合では、フラストレーションが溜まったというポイント・・

 ・・NHKのBS1で観ているのだけれど、とにかく「カメラが中途半端に寄りすぎ・・だからカメラを振りすぎ」・・これじゃ、準備アクションも含めて、ボールがないところ(ボールから離れたゾーン)でのプレーの内実をしっかりと確認できない・・人が誰もいないスペースだって、全体のゲームの流れからすれば、とても重要な意味をもってくるんだよ・・

 ・・また、パスが出そうになってから・・とか・・パスが出されるときに「カメラを引いたり振ったりしても」遅い・・だから中途半端な映像作り・・ということで、ビデオの観はじめから、ちょっとイラついていた・・フ〜〜・・まあ、気を取り直そう・・

 ・・立ち上がりの展開・・確かにレッズの方に、全体として「より」低い位置からスタートしていこうという意志が見える・・要は、安定したディフェンスからゲームに入っていこう・・そこから素早い蜂の一刺しを繰り出していこう・・できれば、より高い位置でボールを奪いかえしてショートカウンターを・・ってなイメージかな・・

 ・・もちろんレッズ守備ブロックが、受け身に「下がりすぎ」っちゅうわけじゃない・・常に「次の攻撃」をイメージしながら、猛禽類の眼で「ボール奪取」を狙いつづけているっちゅうこと・・そう、できるだけ高い位置で・・だから前戦の選手たちも、ものすごい仕事量で(特に柏木陽介とマルシオ!!)次、その次のボール奪取からの仕掛けをイメージしつづけている・・

 ・・まだボールが奪い返せていないタイミングから、次の「蜂の一刺し」をイメージした動きの準備に入っているレッズ前戦・・そう、守備は次の攻撃の準備なんだよ・・だからサ、もっとカメラを引いて欲しかった・・しつこい!?・・スミマセン・・

 ・・ゲーム立ち上がりの双方の攻撃では、FC東京ルーカスが中心になった、左サイドからの仕掛けが目立っている・・例によっての真面目な「動き」から、最後は、勇気をもったドリブル勝負をブチかましてギリギリのクロスを送り込む・・なかなか効果的・・

 ・・レッズは、守備ブロックを強固に組織しているわけだから、中央ゾーンへ直接的に仕掛けていくよりも、やはりサイドからのクロスが効果的だね・・そうなったらディフェンダーは、二つのターゲットを常にイメージできていなければならないからね・・そう、ボールとマークする相手・・だからサイドからの仕掛けは効果的・・まあ、急がば回れ・・ってか・・

・・スミマセン・・これから所用で出掛けなければなりません・・「続き」は後で〜〜・・ご容赦・・

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 はい・・では続きを・・

 ・・前半の30分あたりから、両チームの仕掛けに、風雲急を告げるような雰囲気が出はじめてくる・・もちろん両チームが、本物のチャンスを作り出しはじめたという意味なのだけれど、柏木陽介の、勝負ドリブル&コンビネーションからのシュート・・そして前半31分・・この試合では初めての、決定的チャンスが、FC東京のスーパーコンビネーションによって作り出される・・

 ・・FC東京の最終ラインからボールを持ち上がった高橋秀人・・彼は、本当に優秀なボランチに成長した・・これで日本代表も安泰だ!?・・あっと、その高橋秀人から、鋭いタテパスが、前戦にいる梶山陽平へ放たれた・・そしてそれが、勝負の瞬間だった・・

 ・・高橋秀人と梶山陽平の「中間ゾーン」には、最後には主役を張ることになる石川直宏がポジションを取っていた・・その石川直宏が、ボールをキープする高橋秀人に、手で何か合図を送る・・たぶん「それ」は、梶山陽平へタテパスを出せっちゅう合図だった!?・・

 ・・そして、高橋秀人から、梶山陽平へ、正確で鋭い「足許タテパス」が出された瞬間、横にいた石川直宏が「爆発」するのですよ・・そう、3人目の仕事人として・・

 ・・経過は、こう・・

 ・・高橋秀人から梶山陽平へ鋭い足許タテパスが通る・・梶山陽平は、事前にアイコンタクトでイメージを共有していた(タテへ全力ダッシュのスタートを切った!)石川直宏へ、ダイレクトで、チョンッ!っちゅうパスを送る・・

 ・・その後は、もう石川直宏の独壇場・・そのまま疾風のごとくドリブルで決定的スペースへ入り込み、キャノンシュートをブチかました・・惜しくも、右ポストで弾かれてしまったけれど、まさに、3人目、4人目が絡んだスムーズなスーパーコンビネーションだった・・

 ・・ただ、その2分後・・今度は、レッズが決定的チャンスを作り出す・・柏木陽介が、左サイドをオーバーラップした槙野智章へパスを回し・・そこを起点に、ポポ、3人目として決定的スペースへ抜け出した梅崎司が絡む、美しく危険なコンビネーションが飛び出した・・

 ・・このシーンは、レッズがイメージする仕掛けプロセスを象徴するシーンだったと思う・・

 ・・カウンターやセットプレーもあるけれど、そうではなく、流れのなかから人とボールを動かしてチャンスを作り出す・・相手が全体的に下がり、自分たちが、全体的に上がっていく状況・・それは、心理的な間隙(スキ)でもある・・そこを巧みに突いたレッズの仕掛け・・素晴らしい・・

 ・・そこでは、組織パス(コンビネーション)プレーと、タメに近いドリブルで突っ掛けていった槙野智章の個人プレーが、この上もなく美しいコラボレーションを現出した・・

 ・・最後に梅崎司がブチかましたフリーシュートは(ゴール前7メートルからの完璧フリーシュートだったんだぜ!)結局、FC東京の守護神、権田修一の『ほぼ正面』に飛んでしまった・・フ〜〜・・梅崎司は、後でビデオを見直し、そこで決められなかった要素を反芻しなければならない(!!)・・そんな努力があって初めて、失敗を良い学習機会として「次」につなげることが出来るんだよ・・

 ・・そして、このシーンのもう一つの要素が、そこに、6人のレッズ選手がいたという事実・・前戦の3人(ポポ、柏木、マルシオ)と両サイドバック(梅崎と平川)に加えて、スリーバックの一角を占める槙野智章「も」、その最終勝負に加わっていったのですよ・・

 ・・このチャンスメイクシーンは、行くところは、後ろ髪を引かれることなく「行く」ことに徹するレッズの真骨頂が表現されたと言える・・要は、バランシングを考える安定プレーと、積極的にバランスを崩していく「リスクチャレンジ」プレーのメリハリのことです・・

 ・・決してレッズは、全体的にリトリートして(戻って)守備を固め、数少ないカウンターチャンスに懸けるといった発想じゃないということだね・・ただ、このところは、守備を「安定させること」を、かなり重視している傾向はうかがえる・・まあ、だからこその(このチャンスメイクプロセスに代表される)反抗ではあった・・

 ・・それともう一つ・・そのような(勝負強さ「も」強く意識するような!?)サッカーを志向していくなかで、ショート&ショート&ロング&サイドチェンジといった、人とボールの動きに「変化」を加える作業も加えられていったということなんだろうね・・

 ・・そりゃ、そうだ・・とにかく、攻撃において絶対的に重要なコンセプトは、変化にあるわけだから・・

 ・・その後、前半43分にも、ポポから、ファーポストゾーンへ回り込んでいったマルシオ・リシャルデスへの、まさにスーパーなクロスボールが決まる・・まったくのフリーシュート・・でも、このシュートも、しっかりとポジショニングを取っていたFC東京GK権田修一の「正面」に飛んでしまう・・

 ・・この場面は、忠実に正しいポジションへ移動し、正確に構えた権田修一のプレーを讃(たた)えるしかないね・・そしてその1分後には、素晴らしいカウンターを仕掛けたFC東京の最終勝負でこぼれたボールを、まったくフリーになっていたFC東京の渡辺千真がシュートするんだよ・・

 ・・単に、無人のゴールに送り込むだけのシュートだったけれど、あろうことか、そのシュートが、レッズ最終ラインの重鎮、永田充の足に当たって跳ね返ってしまうのですよ・・フ〜〜・・

 ・・まあ、たしかにチャンスの数では互角に近かったかもしれないけれど、そのチャンスメイクの「必然性」という視点じゃ、やはりレッズに軍配が挙がる・・要は、「偶然に出現したチャンス」ではなく、あくまでも、自分たちのイメージと強烈な意志で「作り出したチャンス」という意味です・・

 ・・この前半最後の時間帯の攻防は、後半のエキサイティングな展開を予想させるに十分なコンテンツを内包していた!?・・まあ、そういうことだったんだろうね・・

 ・・ということで、後半の攻防も、ものすごくエキサイティングなモノへとゲームが成長していった・・とはいっても、ノーガードの殴り合いなんていう低次元のサッカーじゃない・・

 ・・互いに、ギリギリの「バランス」を保ちながら、それでもリスクにチャレンジしていく姿勢に陰りは見えないという、「意志のプレー」のオンパレード・・そして実際に、互いにチャンスを作り出す・・観ている方にとっては、堪えられない・・それほど次元の高い勝負マッチだったんだよ・・

 ・・安定したディフェンス(全員の高い守備意識!)・・でも、フッ切れた仕掛け(リスクチャレンジ)も繰り出していける・・

 ・・ということで互いにチャンスを作り出したわけだけれど、私にとって特筆だったのは、レッズの槙野智章が、二度もつづけて、決定的なカバーリングで絶体絶命のピンチを救ったシーンでした・・積極的なオーバーラップも含め、彼もまた「目立たない」ヒーローの1人です・・

 ・・そんなエキサイティングな試合を観ながら、両チームともに、優れた指揮官を獲得したな・・なんて感慨深く思ったものでした・・

 ・・最後にテレビの映像作りについてもう一言・・

 ・・試合が進んでいくなかで、カメラワークが改善されていったと感じた・・要は、中途半端に「寄り過ぎ」のアングルから、寄るところは寄る、引くところはしっかりと引くというメリハリの効いたカメラワークによって、グラウンド全体の様子が、前半と比べて、ちょっと観やすくなったと感じたのですよ・・後でまた確かめてみよう・・

 ・・もしかしたら、この試合の高いレベルに触発され、映像作りをしている方々の「観てみたいポイント」が、時間を追うごとに変わっていった(高度なモノへと進化していった!?)っちゅうことなんじゃないの〜??・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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