トピックス
- 2012_天皇杯・・やっぱり「動き」の量と質こそが、スペース攻略(&シュート)の源泉だね・・(FC東京vs横河武蔵野FC、 0-1)・・(2012年9月9日、日曜日)
- 「仕方ないよ・・サッカーだから、こんなこともあるさ・・」と、ランコ・ポポヴィッチ。
「そういうことだな・・まあ、とても残念ではあったけれどネ・・」と、わたし。
記者会見の直後、ランコ・ポポヴィッチと、そんな短い会話を交わした。もちろんドイツ語で。
とにかく、久しぶりの神様ドラマだったんだよ。何せ、横河武蔵野FCが放った唯一といっても過言じゃないゴールへ向かうシュート(直接フリーキック)が、そのまま決勝点になっちゃったんだから。フ〜〜・・
この試合、構図は、もう最初から決まっていた。横河が守り(そしてカウンターを狙い)、FC東京が一方的に攻め込んでいく。
でも、前半のFC東京は、押し込んでいるにもかかわらず、まったくといっていいほどチャンスを作り出せなかった。
もちろん、横河武蔵野が、とても効果的にサイドゾーンを(要は、FC東京のサイドからの仕掛けを!)抑えたこともあったけれど、逆に、その強化ディフェンスを前にしたFC東京が、うまく人とボールを動かせなかったことも要因として挙げざるを得ないよな。
唯一、石川直宏のフリーランニングが絡んだ二つのケースくらいだったね、横河武蔵野ディフェンス組織のなかにできた決定的スペースを攻略してチャンスを作り出したシーンは。それ以外は、チャンスの流れさえも発芽させられなかった。
その視点でも、私は、石川直宏がブチかましつづけた献身的なフリーランニングに心からの拍手をおくっていた。
そして後半。やっとゲームが揺動しはじめるんだ。FC東京が、横河武蔵野のディフェンス組織を振り回しはじめたんだよ。
その原動力は、後半から登場した梶山陽平、ルーカス、そして羽生直剛が中心になって加速させた人とボールの動きだった。
横河武蔵野FCの依田博樹監督は、「後半は、FC東京が仕掛けてきた危険なドリブルや高さのある勝負に振り回された場面もあった・・」といったニュアン
スの内容をコメントしていたけれど、要は、人とボールの動きが格段にアップしたことによって、横河武蔵野のディフェンスブロックが振り回されはじめ
た・・っちゅうことだよね。
そう、相手の強化守備を崩していくためには、アバウトな放り込みも含めたダイナミックでスピーディーな組織的動きや、エイヤッの個人勝負(ドリブル)を駆使するしかないんだよ。
・・忠実なパス&ムーブからのワンツー・・ドリブル突破チャレンジ・・ゴールライン際まで持ち込んでから折り返される決定的グラウンダークロス(そこで
も、横河武蔵野のディフェンダーが振り切られ、置き去りにされたんだぜ!)・・はたまた、シンプルなタイミングから逆サイドスペースへ送り込まれる、アバ
ウトな放り込み(サイドチェンジ)・・等などといった「動き」・・
そんな仕掛けプロセスでは、例外なく、最前線での爆発フリーランニングが絶大な効果を発揮するんだよ。例えば梶山陽平・・
最前線を、横方向へ移動していく「ぬるま湯のジョギング」から、急激な爆発スプリントで相手マークを振り切り、決定的スペースでパスを受けちゃったりする。
FC東京の後方にいる(そのシーンでの)ボールホルダーは、梶山陽平の勝負イメージを、しっかりと把握しているから、ベストタイミングでタテパスを送り込める。
もちろんルーカスも同様に、動きまくることでスペースを作り出したり、自らドリブル突破にチャレンジしていったりする。そこでは、自らシュートまでいくだけじゃなく、相手ディフェンスの視線と意識を釘付けにしてラストパスを送り込んだり「も」するんだよ。
ということでテーマ・・。後半は、横河武蔵野FCの守備ブロックが「混んでいた」ことで、とても興味深い現象が山積みだったんだ。
要は、人数が多くいるからこそ、逆に、決定的ピンチへの対応に遅れてしまうというネガティブな現象も多々見られるようになったっちゅう視点です。
そう・・ドーハの悲劇・・
とはいっても、横河武蔵野のディフェンスブロックは、とても「主体的なチャレンジプレー」も魅せていたよね。そんな、ネガ&ポジ現象が入り乱れていたことが興味深かったんだよ。
人数がいることによる集中切れ現象と、味方が多くいるにもかかわらず、選手個々が、とても集中し、自分が主体になってリスクチャレンジ守備に精魂を投入
するという主体プレー(要は、オレがいく!!っちゅう、強烈な意志のプレー)という現象が、相半ばしていたと感じたんだ。
まあ、あれだけ押し込まれ、強烈な勢いで仕掛けられつづけた(もちろん大ピンチシーンが何度もあった!)にもかかわらず、GKのファインセーブも含めて
最後までゴールを守りきった横河武蔵野FCの守備ブロックに対して、ランコ・ポポヴィッチも言っていたように、最大限のレスペクト(敬意)を表さなければ
いけないということだね。
そして、後半ロスタイムのドラマチックな決勝ゴールをブチ込んだ岩田啓佑のフリーキック。
その瞬間、目を疑った。でも、ボールが蹴られた直後には、もしかしたら・・っちゅう胸騒ぎもしていたんだ。そして本当に・・
あのゴールは、まさに神様の仕業としか表現できない。だからランコ・ポポヴィッチに聞いた。
「オレはないけれど、ポポさんは、あんな劇的なゴールを経験したことはありますか?」
「まさに、神様の仕業としか思えない信じられないゴールだったよな・・でもオレは、何度も、同じような神様ゴールを見たり経験したことがあるよ・・例え
ば、今回のユーロへつながる地域予選の最終ゲームで、セルビアが(ロスタイムに!?)ブチ込まれたゴールとかサ・・その神様ゴールで、セルビアは本大会へ
の出場を逃したんだよ・・」
とにかく、希にしか体感できない、本当に劇的な神様ドラマではありました。
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最後に、お知らせを一つ。
ライプツィヒ大学で教鞭を執る、友人の小林敏明さんが新刊を上梓したのですよ。
小林敏明さんとは、2006年ドイツワールドカップでも対談したし(そのコラム1と2)、よく私のコラムでも登場するから、ご存じの方も多いとは思います。
本のタイトルは「フロイト講義<死の欲動>を読む」です。せりか書房・・
そりゃ、簡単な内容じゃないよ。哲学的な表現の「意味合い・関係性」をある程度は理解していなければ読み解けない文章も多いからね。だから書評的な紹介をしようなんて思わない。
でも、その内容には、サッカー(スポーツ)に通じるモノがある。
わたしは、その最終章、「人間---この残酷な存在」を何度も読み返した。人間の残酷な本性・・でも人間社会は「まだ」崩壊していない・・そこには、なんらかのメカニズムが働いている!?
たとえば、昇華やカタルシスとという人間心理の(善循環!?)メカニズム(!?)・・さて〜・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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