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2012_ヤングなでしこ_U20WM・・決勝の相手は?(その2)・・でもまずJ2(横浜vs水戸)から・・(日本vsニュージーランド、 2-2)・・(2012年8月22日、水曜日)

そう・・、まず、スタジアム観戦した「J2」からスタートします。ヤングなでしこのゲームは、帰宅してからビデオで確認したのですが、そのコラムは後につづきます・・

 ということで、横浜FCvs水戸ホーリーホック(2-1で横浜の勝利)。

 両チームともに、とても良くなっている。闘う姿勢(意志のコンテンツ)にしても、志向するサッカーにしても(高質なチーム戦術)。

 要は、素早い攻守の切り替えから入っていくダイナミックな組織ディフェンスを絶対的なベースに、出来る限り高い位置でボールを奪い返し、そこから素早い組織コンビネーションとタイミングの良いドリブル勝負をうまくミックスしながら仕掛けていく両チームなんだよ。

 彼らの組織コンビネーションサッカーは、人とボールが素早く、広く動きつづける本物。もちろん、足許パスを繰り返すのではなく、あくまでも「動的に」次のスペースを攻略しようとする。だから、人の動き(パス&ムーブ)が途絶えることがない。

 観ていて心地よい限り。

 でも、両チーム「ともに」、個のチカラには限界があるし、とても良くトレーニングされた堅牢ディフェンスを擁しているからね(横浜の山口素弘、水戸の柱谷哲二に乾杯!!)、双方ともに、そう簡単に決定的スペースを攻略できるわけじゃない。

 ただ、これまた両チームともに、ギリギリのところでの決定的な「勝負の流れ」を感じ取るチカラも良くトレーニングされている。これもまた、両監督のイメージ作りの為せるワザだね。

 要は、チャレンジのタテパスが出たと同時に、(チャンスになる! と感じた)3人目、4人目の味方が『同時に』フリーランニングをスタートするということです。

 だから、タテパスを受けるスピアヘッドは、そのままダイレクトで決定的パスを(ある程度アバウトでも!?)ウラの決定的スペースへ「流し」ちゃったりするんだ。

 そして「そんな最終勝負の流れ」が、実際に決定的シュートチャンスを演出しちゃうんだよ。

 この試合では、そんな勝負コンビネーションの微妙なニュアンスで、横浜FCに一日の長があったのは確かなことだね。彼らが奪った二つのゴールは、そんな「決定的なダイレクトパス」がつながって生まれたわけだから。

 さて、このコラムで書きたかったテーマです。それは、ゲームの流れが、1人の選手の退場とゴール(水戸の同点ゴールと横浜FCの勝ち越しゴール!)によって、まったく「別物の展開」へと大きく揺動した・・ということです。

 まず、横浜FCが一点をリードしていた前半42分に、水戸ホーリーホックの尾本敬が、二枚目イエローで退場になった。でも、そのホーリーホックが、前半終了間際に同点ゴールをブチ込んじゃうんだよ。

 こうなったら、ホーリーホックのやることは決まるでしょ。「4-4-1」で守備ブロックを固め、鈴木隆行のスーパーなポストプレーを最大限に活用しながら必殺カウンターを狙っていく・・

 後半は、立ち上がりからそんな展開になった。攻めあぐむ横浜FC。でも、そんな沈滞したゲーム展開のなか、まさに起死回生のスーパーコンビネーション(勝ち越し)ゴールが決まっちゃうんだ。

 中盤でボールを持った佐藤謙介が、最前線の田原豊へ向けて、鋭い(リスクチャレンジの!)タテパスを送り込む。受けた田原豊には「見えて」いた。彼の背後の最前線で、自分より相手ゴールに近い位置にいる(!)高地系治が見えていた。

 そして、前述したような「最終勝負の流れ」に乗ったダイレクトパスが、見事に高地系治へ送り込まれたんだ。その後の高地系治のシュートも素晴らしいかっ たけれど、わたしは、その最終勝負のダイレクト・コンビネーションに、山口素弘が為した「良い仕事のコンテンツ」を見ていた。

 あっと・・テーマ。

 そう、皆さんのご想像どおり、そこから、水戸ホーリーホックが、完璧にフッ切れたんだ。まさに荒れ狂う暴風雨のごとく横浜FCを押し込んでいくホーリーホック。そして、何度も決定的チャンスを作り出しちゃうんだよ。

 ドーハの悲劇・・!? その時間帯での横浜FC選手たちのゲームマネージメントには、たしかに課題が山積みだった(山口素弘のコメント・・)。もちろん、リーダーシップというテーマも含めてネ。

 そう、イレギュラーするボールを足で扱うことで、不確実な要素が満載のサッカーは、だからこそ、本物の心理ゲームなんだよ。

 逆に、水戸ホーリーホック選手たちの、勝利を渇望する強烈な意志は、まさに爆発だった。感動した。ホント、彼らは、最後の最後まで諦めずに攻めつづけたんだ。

 相手に押し込まれ、ちょっと足が止まり気味になった(意志のポテンシャルが減退した!?)横浜FC(≒心理ゲームのネガティブなワナにはまった!?)。

 それに対し、最後まで、フッ切れた意志をブチかましつづけた水戸ホーリーホック(≒渇望する意志が善循環を繰り返し、そのポテンシャルを雪だるま式に膨張させた!?)。

 とにかく、最後の最後まで手に汗握る、爆発的なドラマだったんですよ。あ〜〜、面白かった。

 最後に・・、負けたホーリーホックの柱谷哲二監督だけれど、わたしの訳の分からない質問にも、最後まで真摯に応えてくれた。感謝します。

 とにかく、ホーリーホックは、正しい発展ベクトル上にいると思いますよ。この路線を継続していけば、必ずや素晴らしい成果に恵まれるはず。ガンバレ〜、柱谷〜・・

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 ということで、ヤングなでしこ・・

 まあ、ニュージーランドのような「アバウトなフィジカル(&スピーディー)サッカー」を仕掛けてくるチームには、ちょっと勝負弱さも見せた・・ってなことなんだろうね。

 失点だけれど、一つ目は自殺点で、二つ目は、カウンターからのラッキーシュート。要は、守備ブロックが崩された失点じゃなかったっちゅうことです。で も、その後のヤングなでしこは、チャンスは作り出すけれど、それを決め切れない・・という展開がつづいちゃうんだよ。フ〜〜・・

 とにかく、忠実なハードワークを積み重ねるニュージーランドは、抜かれても、置き去りされても、決して諦めずに追いかけつづけるんだ。そんな「粘り腰 サッカー」を見ながら、今年の7月11日、U23日本代表がニュージーランドU23代表と行ったトレーニングマッチのことを思い出していた。

 ニュージーランドがブチ込んだ粘りの同点ゴールについて、監督さんに質問しちゃったっけ。そのときのコラムは「こちら」

 とにかく粘り強い忠実ディフェンスを繰り返すニュージーランド。そんな彼女たちに対し、我らがヤングなでしこは、繰り返しチャンスは作り出すんだよ(チャンスの流れじゃなく、本当に決定的なカタチのチャンスだよ!)。でも、決められない。

 そんな展開を観ながら、ちょっと悪い流れだな〜・・なんて心配になりはじめた前半37分、やってくれました、田中陽子。

 相手がクリアしようとするキックのアクションに巧みに「絡んで」ボールを奪い返した田中陽子。間髪を入れずに放った彼女のシュートは、相手の足に当たってコースが変わり、ニュージーランドゴールに突き刺さったんだよ。

 たしかにラッキーゴールとも言えるだろうけれど、サッカー人ならば、そのゴールを、直前の「粘りのボール奪取アクション」こそが「そのゴール」を呼び寄せたのだから、完璧に「必然のゴール」だったと考えるはずです。

 不思議なことに、サッカーでは(でも!?)忠実で堅実な「見え難い努力」は、常に、必然的な帰結として(!?)報われるものなんだよ。これは経験則だけ れど、そのメカニズムを体感した者こそが、本物の「世界トップ」に上り詰められるんだ。わたしは、そのメカニズムを体感し、しっかりと脳内タンクに収めて あるよ。

 あっと・・蛇足・・

 とにかく、組織コンビネーションと勝負ドリブルを(うまく組み合わせ!?)駆使して作り出した、あれほど多くの必然的なチャンス「は」決められず、こんなラッキーシュートが決まっちゃう。サッカーは、ある意味、神様のドラマなんだよな〜・・

 あっと、失礼・・

 この田中陽子のゴールだけれど、その50%は、右サイドを勝負ドリブルで切り裂いた西川明花のモノだったネ。とにかく、西川明花のドリブルは秀逸だっ た。「あの」フィジカルの塊ともいえるニュージーランド選手が、キリキリ舞いさせられた。とにかく痛快な西川明花なのです。

 この西川明花。その後も、ガンガンと勝負ドリブルで相手を混乱に陥れただけじゃなく、何度かは、直接シュートまでブチかましちゃった。今ワールドカップ 初出場ということだけれど、これからは横山久美との(左右サイドの)ドリブラーコンビとして活躍することになるのかな・・いや、田中美南もいるし・・さ て〜〜・・

 後半26分。コーナーキックから道上彩花がヘディング同点ゴールを決めたわけだけれど、その後にヤングなでしこが作り出したチャンスの量と質は、尋常じゃなかったね。

 その背景には、同点にされたニュージーランドの重心が、少しずつ前へ掛かりだしたこと(要は、それまでよりも前からチェイス&チェックを仕掛けはじめたということ)もあるよね。だからニュージーランドの守備ブロックも、少し「開き気味」になる。

 そんな展開を観ながら、やっと試合がガチンコ勝負の様相を呈してきた・・ここから、本当の実力差が明確に見えてくるぞ・・なんて思っていた。そして実際 に、ヤングなでしこの実力がいかんなく発揮されたし、我々も、「それ」がとても高いレベルにあるという事実を明確に体感できた。

 たしかにこの試合は苦しんだ。でも、それは、良い学習会だったと考えましょう。

 実質的なトーナメントライバルであるドイツやアメリカは、ニュージーランドのように守備を固めるのではなく、あくまでも「自分たちのサッカー」を前面に押し出してくるでしょ。だから、はじめからガチンコ勝負になる。

 あ〜〜・・そんなエキサイティングマッチを(外国へ行くことが決まっているから!)観られないなんて・・残念だね・・ホント・・フ〜〜・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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