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2012_五輪U23・・世界トップとの「最後の僅差」に風穴を空けた・・だからこそ「次のモロッコ戦」が大事・・(U23日本代表vsスペイン、 1-0)・・(2012年7月26日、木曜日)

こんなに時間の経つのが「遅い」ゲームは初めてかもしれない。ゆっくり、ゆっくり時間が過ぎていく。そして、お恥ずかしながら、こちらの心拍数は際限なくアップしていく。フ〜〜・・

 あれほどの絶対的チャンスを数限りなく作り出したのに追加ゴールを奪えない関塚ジャパン。だからこそ、最後の最後に「神様のイタズラ」があるんじゃないかと気が気じゃなかった。でも・・

 タイムアップのホイッスルを聞いたとき、関塚ジャパンに感謝し、彼らを祝福していた。選手全員が魅せつづけた守備のハードワークと、最後の最後まで衰えなかった人数を掛けるカウンター攻撃は、感動的でさえあった。

 特に、それぞれのハードワークが効果的に連動しつづけた守備が素晴らしかった。

 これ以上ないほどの落ち着きと安定をもたらしたオーバーエイジコンビ(吉田麻也と徳永悠平)。関塚隆監督の深い信頼を勝ち取り、予選から出場しつづけたアルビレックス新潟の鈴木大輔。言わずと知れた酒井宏樹と酒井高徳。

 そして、攻守にわたる最高の(創造的な!)ハードワークを魅せ、日本のヴァイタルエリアを「クローズ」しつづけた守備的ハーフコンビ(山口螢と扇原貴宏)。

 そんな守備ブロックに攻撃プレイヤー「も」加わり、忠実なチェイス&チェックだけじゃなく、マーキングやカバーリングといった効果的なハードワークを魅せつづける。

 とにかく、この勝利は、全員のハードワークで勝ち取った大きな成果だった。そう、日本サッカー史に残る、とても深い意味を内包する金字塔。彼らは、世界トップとの「最後の僅差」に、風穴を空けたんだよ。

 ちょっと、興奮が冷めやらない。だから、例によって、「まず」英国テレビのカメラワークに対する苦言から書きはじめることにします。ご容赦アレ〜・・

 本当は、もう英国の「テレビ映像作り」についてコメントするのは無駄だから止めよう・・なんて思っているのだけれど、どうしても我慢できない・・観たいところが観られない・・ホント、フラストレーションが溜まる・・

 ・・何せ、ボールがないところで勝負を決めちゃう組織サッカーを標榜するスペインと日本のせめぎ合いなんだぜ・・

 とにかく、半径20〜30メートルというカメラワークの背景要因がよく分からない・・そしてカメラマンは、自分のウデを自慢するかのように、カメラをぶん回しつづけるんだよ・・

 もちろん、パスが出そうになったら「ズームを引く」けれど(カメラアングルを広げるけれど)、それじゃ遅いんだよ・・その時点では、もうボールがないと ころでの「だまし合いドラマ」は終わっているんだからね・・まあ、「それ」が、その国のサッカーコンセプトのレベルを如実に表しているっちゅうことなんだ ろうけれどネ・・フンッ!・・

 どうして、「EURO」での素晴らしいカメラワークを、彼らのスタンダードとして取り入れないんだろう・・不思議でしょうがない・・フンッ!・・

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 スミマセンね、前段が長くて。でもサ、フラストレーションを吐き出さないことにゃ、どうしても次に進めないんだよ。フ〜〜・・

 ということで、ここからゲームに入っていくけれど、時間も時間だから、例によって、気付いたポイントを、ランダムに箇条書きで列挙することにします・・ご容赦アレ〜・・

 ・・まずスペインについて・・彼らは、やっぱり世界の一流だった・・個の能力ではね・・でも、そんな素晴らしい局面プレーが、うまく組織として連鎖しない・・

 ・・人とボールが、フル代表のようにスムーズに動かない・・スペインのオリンピック代表チームの場合、その動きが、ウラ取りの「危険なコンビネーション」につながらないんだ・・

 ・・スペインフル代表の強者連中は、最前線の(厳しくマークされている)味方の足許に、平気でタテパスを付けちゃう・・そして、魔法のようなトラップやダイレクトパスを駆使し、危険なコンビネーションをブチかましちゃう・・

 ・・要は、フル代表の場合、どんどんチャレンジパスを繰り出していくことで相手ディフェンスを翻弄できちゃうっちゅうこと(ディフェンスの意識と視線を 奪うことでウラを突いていけちゃう!)・・それに対して、スペインのオリンピック代表の人とボールの動きは、単調な足許パス(横パス)が守備ブロックの眼 前で動くから、怖くない・・

 ・・これじゃ、日本守備ブロックのウラ(決定的スペース)を突いていけないのも道理・・もちろん、一人ひとりのボールを扱うチカラは尋常じゃないから、 日本選手が、安易にアタックを仕掛けたら、簡単に外され、置き去りにされちゃう・・そしてチームは、大変危険な状況に陥っちゃう・・

 ・・だからこそ、日本の守備ブロックは、ものすごく粘り強い守備プレーを魅せつづけたんだ・・

 ・・忠実でダイナミックなチェイス&チェックを絶対的ベースに、次、その次と、どんどんスペインの攻撃の流れを追い込んでいくんだよ・・

 ・・とはいっても、決して、全体的に下がり、消極的で受け身のディフェンスを展開したわけじゃない・・そうではなく、あくまでもスペインの攻撃を「効果的に追い込んでいく」ような能動的な組織ディフェンスを展開したということ・・

 ・・だからこそ、たまに「高い位置」でボールを奪い返せたら、間髪入れず、ものすごく危険な(ショート)カウンターを繰り出していけた・・そう、前述した、数限りない追加ゴールの絶対的チャンス・・

 ・・とにかく関塚ジャパンの守備は、素晴らしく効果的に機能しつづけたということが言いたかった・・忠実でダイナミックなチェイス&チェックを絶対的ベースに、互いのディフェンスプレーが有機的に連動しつづける組織ディフェンス・・あっ、繰り返しか・・ゴメン・・

 ・・ところで、その効果的カウンター・・もちろん「それ」は、関塚隆のゲーム戦術だった・・

 ・・相手はスペインだからね・・自分たちが理想とするダイナミックな組織サッカーを「主体的に」展開していけるはずがない・・そりゃ、自殺行為だよ・・

 ・・関塚ジャパンは、効果的なゲーム戦術を徹底したんだ・・それに対してスペインは、当たり前だけれど、自分たちのサッカーを貫こうとした・・でも、日本がブチかましつづけた、決して受け身ではない「粘り強い積極ディフェンス」に苛立ち、そしてドツボにはまった・・

 ・・スペインが、日本守備ブロックを振り回してウラ(決定的スペース)を突いていけたシーンは、ホントに、数えるほどしかなかったんだよ・・それは事実・・

 ・・繰り返しになるけれど、関塚ジャパンは、決して安易にアタックを仕掛けず、粘り強いチェイス&チェックやマークを続けることで、次、その次でボールを奪い返すというディフェンスを徹底した・・まあ、効果的な組織ディフェンス・・

 ・・そしてボールを奪い返したら、誰でもチャンスを見出した者は、攻撃の最終シーンまで絡みつづけていくんだ・・それでも、次のディフェンスがアンバランスになることは「ほとんど」なかった・・

 ・・それは、攻守にわたる全員のハードワークが「有機的に連鎖」しつづけていたからに他ならない・・

 ・・それは、チーム全体に、攻守にわたって「互いに使い、使われるメカニズム」に対する深い理解が浸透していたからこそ・・そう、優れた守備意識の連鎖・・それがあるからこそ、一人の例外もなく、辛いハードワーク(ホンモノの仕事!)を積極的に探しつづけられる・・

 ・・だからこそ、相互信頼関係が深まる・・だからこそ、攻守にわたるリスクチャレンジの量と質「も」高揚しつづける・・

 ・・なんか、繰り返しが多いように感じる・・でも、まあ、時間が時間だから、ご容赦アレ・・

 ・・とにかく、ここまで来たら、もうグループ一位を目指すしかない・・二位抜けだったら、確実に「あの」ブラジルと準々決勝で当たることになっちゃうからね・・

 ・・そのためには、この歴史的な成果は「今日だけのモノ」として忘れ、すぐに次のモロッコ戦に備えなければならない・・この素晴らしい成果を、日本サッカーが世界トップに追い付いていくための、本当の意味で実効あるステップにするために・・

 ということで、今日のところは「こんな感じ」で締めます。悪しからず・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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