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- 2012_「J2」や「ヤングなでしこ」、はたまたオリンピック決勝などの雑感・・(2012年8月13日、月曜日)
- この週末は所用が重なってしまい、どうも、筆を持つ手が重くなってしまった。
もちろん、ブラジル対メキシコの決勝や昨日のJ2(ヴェルディ対サンガ戦)も観戦してまっせ。また今日は、FIFAの年代別ワールドカップを控える(ホストカントリーの!)U20日本女子代表、「ヤングなでしこ」の、カナダU20代表との準備マッチもテレビ観戦した。
ところで、青嶋達也さんがアナウンサーを務めた、「U20女子代表vsカナダ代表」のフジテレビ中継。そのカメラワークは秀逸だったよ・・ホントに・・。
ズームの寄せと引きの「カメラワーク」が抜群に優れているんだよ。だから、ボールがないところでの両チーム選手のせめぎ合い(次のプレー意図のせめぎ合いも含めて!)十分に堪能できる。ホント、どうも有難うございます。
ということで、まず、先ほど終わった「ヤングなでしこ」を、簡単に振り返っておきましょうかネ。
内容的には、申し分なかった。我らが「U20女子代表」は、まさに「なでしこの妹分」といった表現が相応しい、攻守にわたる素晴らしい組織サッカーでカナダを圧倒した。
その絶対的ベースは、もちろん、チーム全体で連動する「汗かきディフェンス」だよ。最前線からのチェイス&チェックにはじまり、そのハードワークが、次、その次という、連動しつづけるボール奪取プロセスを加速する。
だからこそ、次の攻撃での組織コンビネーションも加速する。人とボールが、素晴らしく連動した「動き」を魅せつづけるんだ。でも彼女たちは、そんな組織
プレーに、タイミングよく個のドリブル勝負もミックスしてくる。それでも、組織コンビネーションの流れが阻害されることがない。
組織プレーと個人勝負プレーのハイレベルなバランス。良いね、ホントに。
相手のカナダは、決して弱い相手じゃないはずだけれど、そんな強敵を相手にしても、完璧にゲームを支配しただけじゃなく、しっかりとチャンスを作り、そしてゴールも決めた。
そんな立派なサッカーをやった「ヤングなでしこ」だったけれど、結局は、カナダにワンチャンスゴールを決められて引き分けちゃうんだよ。
もちろん、守備ブロックを固めるカナダに対して、攻めあぐんだ部分もあったよね。(ちょっと前言と矛盾するけれど・・)攻め込んでいる割には、チャンスの量と質が、うまくバランスしていなかった・・とも感じた。
それでも、彼女たちがブチかますミドルシュートは爽快だったね。そのバックボーンは、もちろん吉田弘監督のイメージ作りでしょ。とにかく、彼女たちがブチかます中距離シュートには大いなる可能性を感じたものです。
また、サイドからの仕掛けにしても、相手の高さを考えた「鋭いニアポストゾーンへのグラウンダークロス」を送りこんだりする。まあ、変化に富んだ仕掛け・・
そんな「ヤングなでしこ」を指揮する吉田弘監督。
彼は、このチームのコアになった「U17代表」の監督でもあり、2010年にトリニダード・トバゴで開催されたU17ワールドカップで準優勝しました(決勝で、韓国に惜敗した)。
その吉田弘さん。古河電工でプレーしていたときは、JSLで2度の得点王に輝いただけじゃなく、日本代表としてもプレーした。当時わたしは、読売サッカークラブ、トップチームのコーチをしていたから、彼のことはよく知っている。だから、心情的にも応援しちゃう。
とにかく吉田弘さんは、優れた仕事をしていると思いますよ。それは、このU20日本女子代表のサッカーを観ていれば、よく分かる。
でも、ワールドカップは、ある意味で「一発勝負的な要素」も強いからね、だから、この、ワンチャンスを決められた2失点については、ビデオを見直すこと
で、しっかりと「復習」しなければならない。そう、その失敗を、効果的なイメージトレーニング素材として活用するんだよ。
「脅威と機会は表裏一体」だからね。吉田弘監督による効果的な心理マネージメントによって、この悔しい2失点シーンが、彼女たちの脳内イメージタンクに蓄積され、そのことで勝者メンタリティーが、一回りも二回りも「大きく」なっていくはずだと確信する筆者なのです。
とにかく、このチームには、「次代を担うなでしこ」として、とても大きな可能性を感じる。今回のワールドカップでも、必ずや、抜群の存在感を魅せつけてくれるモノと確信します。
でも私は、そんな彼女たちの勇姿を「部分的」にしか体感できない・・
実は、私は、ワールドカップ期間中に外国へ行かなければならなくなったのです。だから、一度はFIFAから承認された「プレスAD」を返上した。何せ
(いまのところの予定では)、プレスADをもらっても、グループリーグの最初の2試合と、三位決定戦&決勝戦しか観られないからね。
残念だけれど、まあ、仕方ありません。
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ということで、次は、ヴェルディ対サンガの「J2」マッチ。
試合後の監督会見で、京都サンガの大木武監督が、こんなニュアンスの内容をコメントしていたっけ。曰く・・
・・今日のウチの守備はよかった・・我々は、基本的に、前から(積極的に)プレッシングを掛けていくのだが、それによって、どうしても前に重心が掛かっ
ていく傾向が強い・・だから、次の守備を安定させるために工夫しなければならない・・まあ、工夫とはいっても、ウチの場合は、選手たちの自主性を活性化さ
せる(意識と意志を高揚させる!)という方向性を重視しているわけだが・・要は、(次のディフェンスについても!)選手たちの自主的な判断と行動こそが、
もっとも重要な要素だと考えているということだ・・
いいね、大木武。
この試合でも、特に1人退場になってからのサンガは、決して下がって守備を固めるというのではなく、一人の例外もない全員がハードワークを積み重ねることで、あくまでも積極的にボールを奪いにいく・・という「主体的な方向性」でプレーしていた。
一人足りなくなったことで、集中力が格段にアップした・・ということもあるんだろうけれど、そんな主体的な(強い意志をベースにした)アクションの傾向は、前半から明確に見えていたわけだからね。
全体的なゲームの流れからすれば、たしかにヴェルディがゲームの流れは支配していたとすることが出来る。そして彼らは、何度か、決定的なチャンス(その
流れ)も作り出した。でも、ゲーム全体を通した(!?)「実質的な勝負の流れのファクター」という視点では、京都サンガに一日の長があったと「も」感じ
た。
もちろん印象にしか過ぎないけれど、あれほどゲームを支配していたヴェルディにしては、川勝良一監督も言っていたように、何か「重たい感覚」が見え隠れ
していた・・!? だから、仕掛けの最終段階で、サンガ守備ブロックを突き破っていけなかった・・!? いや、逆に、ヴェルディが、サンガの強力守備とい
う「重し」を掛けられていた・・!? フムフム・・
多分「その現象」は・・サンガ守備に、最後の半歩を出されて(その半歩が、ギリギリの勝負ポイントに届いて!!)仕掛けの最終段階を止められてしまった・・なんていう感じかな。
実は、記録的には、守っていたサンガの方が、ヴェルディの2倍もシュートを打ったんだよ。でも彼らのプレーぶりは、明確なカウンター狙いっちゅうわけで
もない。何せ、攻撃に入ったサンガは、何人もの選手が積極的に押し上げ、攻撃の最終シーンに「まで」顔を出しつづけていたわけだからね。フムフム・・
そうそう・・そんな「実質的な勝負の流れファクター」という視点では、メキシコとブラジルが激突したオリンピック決勝でも、同じような感覚的な印象をもったね。
たしかに個のチカラじゃ、ブラジルに一日以上の長がある・・でも、一点を追うブラジルの場合、個の仕掛けプレーと組織プレー(最終のスペースパスと決定的フリーランニングやコンビネーションの流れ)が、うまく連動しない。
この仕掛けプレーが前面に押し出され過ぎるから、ある選手がボールを持ったら、「周り」の足が止まっちゃう。そして、この「足が止まるイメージ」が、チームのなかの雰囲気に、どんどんと浸透していく・・。そんな印象を持ったネ、ブラジルのプレーからは・・
ブラジルの(個の才能を前面に押し出す!?)攻めは迫力満点だけれど、個人勝負と組織コンビネーションがうまく連動しないから、メキシコ守備にとって
は、守りやすいことこの上なかったということなんだろうね。何せ、ブラジルは、常にメキシコ守備ブロックの眼前で勝負を仕掛けてくるわけだから・・
それに、ボールが集まってくるコアな仕掛け選手も分かっている。
もちろんネイマールとオスカー(あっと・・もちろん、前半32分から登場したフッキも!)。だから、「そこ」と、その周辺にメキシコ選手が集中する。事前に協力プレスのイメージが出来ているんだから、そりゃ、効率的、効果的な集中プレスをブチかませるでしょ。
ブラジルは、そんな協力プレスのイメージを逆手に取るべきだったね。
ネイマールとオスカーに(またフッキにも)、とにかくシンプルにボールをプレーさせることで、コンビネーションの流れを加速させる・・とかね。そうすれば、メキシコ守備ブロックも(彼らの守備での連動イメージも)かなり混乱していたに違いないってか〜〜!?
まあ・・ネ・・強いブラジルだったら、個人勝負プレーを、そのまま突破して最終シーンまでいく「だけ」じゃなく、組織コンビネーションの「タメ」としても使えるはずだよね。
そう、1970年メキシコワールドカップ決勝(ブラジル対イタリア)戦でのブラジルの4点目のように・・あははっ・・
ちなみに、「そこ」では、ボールを持ったペレが、イタリア守備の(複数のイタリア選手の!)意識と視線を引きつけ、最後の瞬間に、右サイドを爆発オー
バーラップしてきた「カルロス・アウベルト」に、まさに置くようなラストパスを送り込んだっけ。そして、カルロス・アウベルトの、ダイレクト・キャノン
シュートが炸裂した。
ちょっと例示が古すぎたですかね・・あははっ・・
とにかく、オリンピック決勝は、メキシコが、内容的にも十全の勝利を収めた・・逆にブラジルは、もっともっと工夫すべきだった・・っちゅうことが言いたかった筆者でした。
ではまた・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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