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2010_WM(26)・・雑感・・そして、強いスペインの復活に乾杯!・・(ドイツvsスペイン、0-1)・・(2010年7月7日、水曜日)

いま、ダーバン・スタジアム隣接のメディアセンターで書いているのですが、ヨハネスブルクからダーバンまでのドライブは、とても快適でしたよ。実際の走行距離は、540キロではなく、何と、620キロにもなったけれどネ。

 要は、最初から最後まで「整備された高速道路」だったということです。片側二車線の自動車専用道路。また、全行程の半分くらいは、数十メートルはあろうかという中央分離ゾーン(芝生が植えられている緩衝ゾーン)も設置されていた。

 たしかに交通量は多かったけれど、それでも、皆さん行儀いいからね、こちらは、走行車線と追い越し車線を行き交いながら、スムーズに遅いクルマを追い越していけた。もちろんなかには、遅いのに、ずっと追い越し車線に陣取っている「勘違い」しているドライバーの方もいたけれれどサ・・。

 それにしても、こちらには「オービス」が多い。聞くところによると、ヨハネスブルクからダーバンまでの「国道N3号線」は、特に多いとか。要は、レーダーによる速度計測装置。もちろん、違反車はカメラでカシャッ・・だぜ。

 そこで、こちらに来てから数日後に購入した「カーナビ」が大活躍してくれた。このことは、前にも書いたと思うけれど、こちらでは「カーナビ」がなければ、ニッチもサッチもいかないのですよ。もちろん、地図と首っぴきだったら何とかなるだろうけれど、そんなことに気を遣いたくないからね。そして、そのカーナビには、「オービス」の設置箇所も、しっかりと記録されているのですよ。事前に「ピピピッ」と知らせてくれる。とても助かった。もちろん、基本的には、制限速度を少し超えるくらいのスピードでの走行だからカーナビの「警告」は、必要ないけれどネ・・

 でも、初日に借りた「カーナビ」では大変な思いをした(南アでは、カーナビは、レンタカーとは別にレンタルしなければならないというシステムなのです!)。そのことについては、南ア到着後の「最初のコラム」を参照して下さい。だからカーナビの購入には、ちょっと慎重になったけれど、それでも、借りつづけるよりも購入した方がずっと安いと言われ、まあ仕方ない・・と、購入することにした。そして、それ以降は、カーナビくん大活躍っちゅう次第なのです。それにしても、初日のカーナビの「乱心」は何だったんだろうね。

 あっと・・またまた前段が・・。それでは試合レポートです。

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 フ〜〜、ドイツの快進撃が止まってしまった。でも、まあ、「あの」素晴らしいスペインが甦ったのだから仕方ない。

 とにかく、スペインが、「バルセロナ」を、より前面に押し出すことで生き返ったことに驚嘆していました。スペインは、本当に素晴らしいサッカーを展開した。だから、不思議に悔しさが湧いてこない。いや、ホント、負け惜しみではなく、優れたサッカーを展開したチームが勝利したことに納得している筆者なのです(・・と思うよ・・)。

 このコラムでは、まず何といっても、生き返ったスペインというテーマから入るしかないよね。

 最終ラインから、バルセロナメンバーを拾うと・・、プジョル、ピケ、ブスケッツ、そして、シャビとイニエスタの中盤の王様コンビに、この試合では、調子を落としているフェルナンド・トーレスに代えて、これまたバルセロナのペドロを先発に使った。まさに「バルセロナの背骨」。わたしは、デル・ボスケ監督がペドロを使うという決断を下したことが、スペインが生き返った決定的なファクターだったと思っています。

 何せ、それまでのフェルナンド・トーレスは、最前線のフタになり下がっていたからね。だから、中盤でいくらボールを動かしても、最終勝負の爆発的なコンビネーションへとスムーズにリンクしていかなかった。要は、最終勝負の「流れ」が、人の動きが停滞していたから、加速していかなかったということです。

 それに対して、右サイドを中心に動き回り、シンプルにプレーすることでボールの動きを加速しつづけるペドロ。そして、チャンスと見れば、どんどんと、自信に満ちあふれた勝負ドリブルも仕掛けていく。まさに、「全体的な人とボールの動きを活性化する加速装置」といった具合。素晴らしい。

 そんな攻撃にしても、やはり守備のダイナミズムが活性化したことが基本にあるよね。ペドロの加入で、最前線からのディフェンスの勢いが、見るからに加速した。だから、中盤での組織ディフェンスの実効レベルも大きく増幅した。彼らが魅せつづける、忠実なチェイス&チェック、マーキング、協力プレスへの「効率的な集散の動き」などは、観ていて、本当に魅了されます。

 それでもドイツは、そんなスペインに対し、前半はしっかりと守備ブロックを機能させていた。まあ、ペドロに、決定的スペースへ抜け出すビジャへの決定的スルーパスを決められたり(ドイツGKノイヤーの素晴らしい飛び出しが、ギリギリところで、ビシャのシュートを止めた!)、また、ペドロの鋭いクロスボールを、プジョルにヘディングシュートされたりした場面はあったけれど、後半ほどは、流れのなかで崩されるシーンはなかったのですよ。また攻撃でも、危険なカウンターだけじゃなく、しっかりと押し返していく組織的な仕掛けも、何度も繰り出していけたしね。

 そんな前半のドイツは、自分たちが置かれている状況を素早く把握し、素早く、そして着実に順応していった。その現象は、スペインの巧さに、大会前の初心に「引き戻された」と言えるかもしれない。

 ゲームの立ち上がり。スペイン選手のボールあつかいの巧みさに、容易にボールを奪い返せず、中盤を完全に支配されるドイツ。でも彼らは、そこで自信をなくして縮こまるのではなく、「やはりスペインはチカラがある・・強い相手なのだから、ボールを支配されても仕方ない・・とにかく、オレたちはチャレンジャーなのだから、初心に戻って、忠実なディフェンスから入るぞ・・」と、気を取り直したと思うのです。

 そして、ドイツチームに、闘う意志が充填されていく。恐れることなくチャレンジしつづけるドイツ・・またボール周りの競り合いシーンでも、スペインの巧さに振り回されることなく、強い意志をもって粘り強くボールを追いつづけるドイツ・・

 とはいっても、やはりチカラの差はアリアリ。後半では、中距離シュートを放つなど、攻撃に「変化」をつけるスペインが繰り出していく「人とボールがスムーズに動きつづける勝負コンビネーション」に、ドイツ守備ブロックが翻弄されはじめるのです。

 シャビとイニエスタ、そしてペドロとビジャが絡んだ、ワン・ツー・スリー・フォー・・なんていう、夢のコンビネーション。まさに、絶好調のバルセロナそのものじゃありませんか。一度などは、ドイツゴール前をボールがよぎり、その先に、ビジャのつま先があった・・なんていう絶体絶命のピンチシーンもあった。

 もちろんドイツも、やられっぱなしじゃなく、機を見て攻め上がっていく。ミロスラフ・クローゼの速さと強さに期待したカウンターだけじゃなく、大きな組み立てからサイドゾーンを攻略し、危険なクロス攻撃を仕掛けていくのです。

 一度などは、左サイドをうまく抜け出したポドルスキーから、素晴らしいロビングクロスが、逆サイドでフリーになったクロースにピタリと合うというビッグチャンスもあった。ダイレクトでシュートするクロース。でも最後は、スペインGKカシージャスの必死のセービングに防がれてしまう。

 でも、全体的なチカラの差は、やはり、如何ともし難い・・(本心では)残念だけれど。

 まあ「この」ドイツ代表は、とても若いチームだから、これからだよね。ワールドカップという無類の刺激を受けた若い選手たちのホンモノのブレイクスルーを期待しましょう。

 それにしても、やっぱり、サッカーの基本はテクニックだね。この日のバルセロナを見ていて・・あっ、間違い・・スペイン代表を見ていて、その事実を再認識させられた。あれほど巧い連中が、しっかりとシンプルに組織サッカーに徹するんだから、そりゃ、強いよ。

 とにかく、強いスペインが復活し、自分自身の学習機会という意味でも、決勝へ向けて、期待がとても高まっている筆者なのです。そして・・これが「あの強い」ブラジルとの決勝だったら・・なんて、またまた「タラレバ」になっちゃうんだ。

 でも・・もちろん、ドイツが負けて、ちょっと気が重いのも確かだよ。まあ・・めくるめく歓喜と、奈落の落胆が交錯しつづけるのがサッカーの醍醐味がからネ・・なんて負け惜しみタラタラの筆者ではありしまた。冒頭の内容と、ちょっと矛盾しているかも・・。でも、まあ、ご容赦アレ。書いているうちに、ちょっと悔しさが出てきたのかもしれないね。でも、正直でいいでしょ!?

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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