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2014_W杯(8)・・オランダとオーストラリア、そしてスペインとチリ(今回は、新連載で発表した三つのコラムにリンクしました)・・(2014年6月18日、水曜日)

オランダは、冷や汗をかいた。

とにかく、オーストラリア(オジー)がブチかましてくるプレッシングの勢いは、レベルを超えていたんだよ。それも、最後の最後まで、その勢いが衰える気配さえなかった。

でも、もちろんオランダ守備ブロックのウラを突いていくのは容易じゃない。だから、彼らがスペースを攻略して決定的チャンスを作り出せたかといったら、やはりネガティブな印象の方が先にくるよね。

それでも、オランダがちょっと甘く見ていたことも相まって(!?)、ゲームは、オーストラリアが、全体的な流れのイニシアチブを握るってな展開になった。

私も含めて、誰もが、このゲーム展開には驚かされたに違いない。

でも、前述したように、オランダ守備ブロックを崩し切れないオーストラリアだったから、ロッベンの、まさに「レベルを超越した天才ここにありっ!」ってな ブッちぎりのドリブルシュートが決まったときには、誰もが、「これで勝負は決まったな・・」って思ったに違いない。でも・・

そう、オーストラリアが、ややラッキーな、ケイヒルのスーパーボレー同点ゴールを決めただけじゃなく、「プレッシングの勢い」を持続しつづけた後半には、PKを奪ってリードまでしちゃったんだ。

そして、「そこ」からのゲーム展開に、注目すべきポイントがあったというわけだ。

それは、オランダが実力を発揮し、最後は逆転ゴールを叩き込んだわけだけれど、その背景要因でもっとも重要だっのが、中盤からのディフェンスが風雲急を告げたことだったというポイント。

ディフェンス(相手からボールを奪い返すこと!)こそが全てのスタートライン。このテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照して下さい。

要は、逆転されたオランダが、守備のダイナミズムを大きく増幅させたことで、「次」の攻撃における勢いも倍増したというポイントです。

彼らの、次の攻撃にかける人数が、明らかに増えていったんだよ。

その現象は、「より前」からボールを奪い返しにいくような積極ディフェンスによって、選手一人ひとりの心理ダイナミズムもアップしたっちゅうことだね。

そうチャレンジマインド(闘う意志)の増幅。

だからこそオランダが、持てる実力を発揮できるようになったというわけだ。

ところで、初戦のスペイン戦。そこでは、「戦術サッカー」が素晴らしい機能性を魅せた。

そう、ロッベン、ファン・ペルジー、スナイデルという天才トリオを前線に残し、残りが必死にボールを追いつづけるっちゅう、勝負サッカー。

まあ、前後分断サッカー・・なんていう悪口だって出てくるさ。でも、W杯では、勝利至上主義が優先するだろうからね。

もちろんレベルを超えた実力を存分に発揮「できる」ようなチームだったら、いつものように、「美しく勝つ」という普遍的な価値を追求するだろうけれど、この頃は、チーム力が拮抗していることもあって、より現実的なゲーム戦術で試合に臨むチームが増えてきた。

あっと、オランダ。

彼らは、強烈に強い守備ブロックを絶対的なベースに、ボールを奪い返したら、前線の天才トリオへ、良いタテパスを供給しつづけるんだよ。

もちろんボール奪取が「高い位置」だったら、タテパス一本で、天才連中がシュートまで行っちゃうでしょ。

もちろん後方からも、一人、二人と、上がっては来るけれど、基本的には、前線の天才トリオが、その天賦の才を存分に発揮できるようにサポートするという「イメージ」に徹していた。

そう、名将ファン・アールが仕掛けた、(彼にしては!?)イメチェンとも言える、徹底戦術サッカー。

もちろん「それ」は、相手のスペインが、「自分たちの攻撃サッカー」を仕掛けてくるに違いないという確信に裏打ちされた戦術サッカーであり、それが、まさにツボにはまったということだ。

でも、この試合でのオジーは、徹底したプレッシング守備「だけ」を仕掛けてきたんだよ。

要は、次の攻撃に、そのプレッシングの勢いを「そのまま乗せる」ことは、ある程度は抑制していたということ。つまり、前線へ飛び出していく人数をコントロールしていたということなんだ。

彼らは、次の攻撃のイメージを「一つ」に絞り込んでいたんだろうね。

そう、ショートカウンター。

だからこそ彼らは、あんなに高い位置から、強烈なプレッシングを仕掛けていったんだよ。

彼らが目指していたのは、ショートカウンター。だからこそ・・、というわけだ。

それにしても、オジーがブチかましつづけたプレッシングは、レスペクトに値する「強烈な意志の発露」ではあった。

そして世界中に、オジーの「プライドと意志」を印象づけた。

結局は、予選リーグで敗退しちゃったけれど、私は、彼らが、とても大きな「イメージ資産」を手に入れたとすることに躊躇しない。

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さて、ということで、こちらも予選敗退が決まってしまった「前」ワールドチャンピオンのスペイン。

結局彼らは、「過去の栄光」という呪縛から、自らを解き放つことに失敗した・・ということなんだろうね。

W杯やヨーロッパ選手権を制したスペイン代表は、もちろんバルセロナがベースだった。

でも、シャビ・エルナンデスの「衰え」によって、彼らが展開してきた、人とボールを動かしつづけるサッカーが、以前ほどの「動きのリズム」を刻めなくなっていた。

この「動きのリズム」というテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」を参照して下さい。

とても残念だけれど、ディエゴ・コスタというワントップを入れたことも含め、このスペイン代表は、まさに「普通の強いチーム」になってしまったということです。

それに対して、チリ。

聞くところによると、チリ代表は、コピアポ鉱山の落盤事故で生還した炭鉱労働者からエールを送られたとのこと。

それが効いたのかどうかは分からない。でも、彼らが展開した、尋常じゃない「意志の爆発サッカー(守備)」からは、たしかに「あの」炭鉱労働者の方々のイメージが重なる。

とにかく、彼らがブチかましつづけたプレッシング守備は、形容詞が見つからないほどのダイナミズムを放散しつづけていたんだよ。

そんなチリ代表を見ていて、すぐに、今シーズンのリーガエスパニョーラを制した、アトレチコ・マドリーのことが脳裏をよぎった。

そう、レベルを超えたプレッシング守備。

「The Core Column」で彼らについて書いた「このコラム」も参照して欲しいけれど、とにかくゲームの構図が、リーガエスパニョーラの最終節での頂上決戦(バルセロナ対アトレチコ・マドリー)に、あまりにも似通っていたんだよ。

要は、その最終節、頂上対決でのバルセロナが、(ワントップを入れたことで!?)カタチを失ったスペイン代表であり、アトレチコ・マドリーが、チリ代表を投影していたっちゅうイメージだよね。

面白いのは、チリ代表の攻撃と、前線からのプレッシングを引っ張ったのが、「あの最終節」では、バルセロナに所属していたアレクシス・サンチェスだったということだね。

「あの最終節」でのアレクシス・サンチェスは、バルセロナの先制ゴールを叩き込んだ。でも、この試合では、チリ代表(イメージ的にはアトレチコ・マドリー!)の攻撃の牽引役。

もしかしたらアレクシス・サンチェスは、チリ代表の仲間に、アトレチコ・マドリーの素晴らしさを語り伝えていたのかもね。そして自分は、「アトレチコ・マドリー」の一員になる・・。フムフム・・

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あっと・・クロアチア。

開幕戦コラムでも書いたように、彼らの強さはホンモノだね。

神経痛のために、レシフェに留まることにした筆者は、6月23日にレシフェで行われる勝負マッチ、クロアチア対メキシコ戦を観戦することにしています。

今から楽しみで仕方ありません。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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