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2016_J1_第10節・・後半は盛り上がったFC東京vsサンフレッチェ・・レッズの志向ベクトルは正しい・・だからこそ、継続はチカラなり!・・(FC東京vsサンフレッチェ、1-1)、(ガンバvsレッズ、1-0)・・(2016年6月15日、水曜日)

・・前半は思った通り、両チームともに、堅いディフェンスが存分に機能したことで、両チームともに、我慢のゲーム展開になった・・でも後半は、両チームともに勝負をかけた・・

両監督ともに、そんなニュアンスの内容をコメントしていたっけね。

そう、前半は、まさに「睡眠導入剤」だったんだよ。私も、一瞬まどろんでしまった。

それでも、両チームの堅いディフェンスの「内実」という見所はあったわけで、私も(仕方ないから!?)守備のメカニズムと機能性に視線を向けることにした。でも・・

そう、やっぱり、ギリギリの攻守せめぎ合いこそがサッカーの醍醐味だからね。両チームともに、攻撃に元気がなかったことで、とても退屈な前半だったんだ。

そんな気迫のない両チームの攻撃を観ながら、「やっぱりサッカーは意志のスポーツなんだ・・」と反芻していた。

リスクチャレンジのないところに成功もない・・

そう、両チームともに、リスクを冒して攻撃に参加していく人数が足りないから、攻めきれない。

ということで、チャンスになりそうな「流れ」は、そのほとんどがカウンターから・・という体たらくだったんだよ。

でも・・

そう、後半になって、ドリブルやスピードに傑出した才能のある選手がグラウンドに登場してからは、「まったく違うゲーム」になったんだよ。

それほど、サッカーの(いや・・選手たちの意志の!)内実に変化をもたらした、特筆に値する才能を秘めた二人だったんだ。

一人は、言わずもがなの(サンフレッチェ)浅野拓磨。

もう一人が(FC東京)、後半7分に交替出場した河野広貴。

両チームが挙げたゴールは、この二人によるモノだったと言っても過言じゃない。

あっと・・サンフレッチェの先制ゴールは、ゴールをダイレクトで流し込んだのが浅野拓磨その人だったっけ。えへへっ・・

また、その数分後に、FC東京、橋本拳人が(これまたダイレクトで!)同点ゴールをブチ込んだんだけれど、それを演出したのが(ピンポイントクロス!)河野広貴だったというわけさ。

でも、やっぱり、交替出場した選手としての「目立ち度や実効レベル」という視点じゃ、浅野拓磨に軍配が挙がるんだろうね。

何せ、彼が入ってからというもの、サンフレッチェ攻撃のタテ方向への「勢い」が、風雲急を告げちゃったわけだから。

ピーター・ウタカがボールを持って「タメ」を演出する。そのコンマ数秒で、浅野拓磨がタテへ爆発スプリントを仕掛けるんだ。

そこへ、ピーター・ウタカから、測ったようなタテパスが通される。もちろん決定的チャンス。

それ以外でも、サンフレッチェ選手たちは、ボールを奪い返すたびに、まず前戦の浅野拓磨を「探して」いた。

それも、彼が見つからなくても、タテにスペースがあれば、ズバッと、グラウンダーのタテパスを「送り出して」しまうんだよ。

浅野拓磨は、「そのアバウトなタテパス」にさえ追いついちゃう。

そんなだから、サンフレッチェの「タテへの意志」が、大きく増幅されるのも道理だった。

そのコトを森保一監督に聞いたんだけれど、彼も、(かなり遠回しに!?)浅野拓磨という刺激によって、全員の「タテへ仕掛けていく意志」がアップした・・と言っていた。

もちろん、それも、森保一監督の意図した通りだったというわけさ。いいね・・

対するFC東京。

個の勝負を、高い実効レベルでブチかませる新戦力として、ムリキが加入した。

たしかに、まだ「FC東京の組織プレーのリズム」にはフィットしていない。

でも、彼が秘める個のポテンシャルが高いことは、選手たちが体感している。だから周りも、ムリキを活かしたいという意志をもってプレーしていることが伺えた。

まあムリキも、もう少しで、本来のチカラを存分に発揮するようになるはず。期待しましょう。

あっと、FC東京の「個の勝負」の実効内容。

その視点では、交替出場した河野広貴とネイサン・バーンズが、気を吐いていた。

それまでは、どうしても、組織サッカーに「逃げ込もう」とする姿勢の方が強かったチームに、個の勝負で、「カツ」を入れたっちゅうわけさ。

ということで、最後は、「組織と個の、高質なバランス」というテーマで締めることにした次第。

城福浩さん、曰く・・

・・たしかに、実際にゴールを奪う選手は、特別な才能であるケースが多い・・

・・チームとしては、その選手に、どのようにゴールを奪わせるのかというテーマとも向き合わなければいけない・・そのために、チームのなかのイメージを統一するわけだ・・

・・とにかく、まず相手ゴールの近くまでボールを運ばなきゃいけない・・そのプロセスをどのように持っていくのか・・それがチーム戦術のテーマということだ・・

フムフム・・

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さて、ガンバ対レッズ。

たぶん、ガンバ長谷川健太監督は、守備ブロックを整えることで、レッズ攻撃を誘い込み(誘い出し!?)、前戦に控える天才たちの一発カウンターに懸けたということなんだろうね。

そして前半8分に、そのイメージが、ピタリとツボにはまって先制ゴール。

その後も、レッズが繰り出す仕掛けのタテパスやボールの停滞を狙って奪い返し(イメージトレーニングの賜物!?)、そこからズバッという直線的なカウンターを決めかけちゃう。

この試合では、天才アデミウソンは、ワントップとして大活躍を魅せた。この起用法は、本当に大正解だと思った。

ボールを奪ったら、とにかく、前戦で「人のいないゾーン」へ蹴り出しておけば、何本に一本かは、天才アデミウソンがキープしてくれちゃうんだよ。

そして、宇佐美貴史だけじゃなく、井手口陽介や阿部浩之といった、すばしこい攻守ハードワーカーが、忠実に、その仕掛けの流れに絡みついていくっちゅうわけだ。

そんな展開になったから、チームの意志が最高レベルで「統一」されていくのも道理。何せ、自分たちのゲーム戦術イメージが、ピタリとツボにはまっているんだから。

それに対してレッズ。

徐々に、「心配性」に陥りはじめたと感じた。

そりゃ、そうだ。あれほど効果的なカウンターをブチかまされ続けたんだからね。

微妙なディスカッションだけれど・・

不安という心理ファクター(自信の揺らぎ!?)によって、プレー内容が徐々に縮こまっていき、全てが悪循環に陥ってしまうという定説があるんだ。

そこでは、タテパスが縮こまるだけじゃなく、その不安心理が、パスレシーバーの動きにも、またサポートの動きにも、微妙に「影を落とす」。

そして、うまくいかないことで、不安定な心理が雪だるま式に膨れ上がり、もっとプレーの精度がダウンしていっちゃう。

そんな、擬似の「心理的な悪魔のサイクル」につかまりそうになったら、自分自身で、また仲間のチカラを借りて、心のなかの「不安」をフッ切るしかない。

色々な表現があるとは思うけれど、まあ、互いに刺激し合う(励まし合う!?)ことが、もっとも効果的な方策ということなんだろうね。

もちろん、もし、レベルを超えたモティベーター(強烈なリーダーシップ)がいれば、ハナシは別。でもレッズには、そんなレベルのモティベーターは見当たらない。

とにかく、前半35分過ぎまでのゲーム展開は、ジリ貧になりそうな雰囲気だったんだよ。

でも・・

そう、徐々にレッズ選手たちのプレー姿勢やチームの雰囲気が、「何かから解放され」はじめた・・と感じられるようになったんだ。

よく分からないけれど、何度か、カウンターピンチで「命拾い」したコトも、(何かから!)フッ切れるための心理バックボーンとして機能したのかもしれないね。

・・あっ・・また命拾いした・・こうなったら、もう、やるっきゃない・・

そんなフッ切れた心理。

それまでは、「リーグ優勝のために何が何でも勝たなければ・・」ってな、心理プレッシャーを、自分たち自身で抱え込み、育(はぐく)んでいたフシがある。

でも・・

そして私は、心と身体が「何かから解放」され、そのことが、プレーの量と質を、格段に活性化した・・と、感じはじめていたんだよ。

だから、ボールを失ってカウンターをブチかまされるような危急シチュエーションでも全く動ぜず、冷静に、そして激しく、効果的に対処できるようになっていった。

まあ、それには、阿部勇樹を中心に、互いのポジショニングバランスを柔軟に調整できるようになったこともありそうだね。

そして、やっと、本当にやっと、本来のレッズの「強いサッカー」が甦ったんだよ。

もちろん後半も、ガンバ守備ブロックに手を焼きはした。でも仕掛けの流れ自体は、決して、前半のような「生煮え」ではなく、しっかりと「やり切る」ところまで行けていた。

それが、とても大事なコトなんだ。

まあ、もちろん、一点を追いかけなければいけなかったけれど、それでも、しっかりと自分たちのサッカーを取り戻し、リスクチャレンジ(強烈な意志!)も含めて、立派に、最後まで闘った。

もう、ここまで来たら、原点回帰し、「解放された心理で、前向きなチャレンジングサッカーを続けていれば、おのずと結果は付いてくる・・」という姿勢に立ち戻る(その姿勢を見つめ直す)べきだと思うよ。

もちろんレッズの現場からは、「オレ達は、変に浮かれてなんかいなかったぞ!」って、文句をブチかまされちゃうでしょ。

でも、そこは人間だから、様々な、本当に様々な、心理の(分泌ホルモンによる!?)不確実さが、実際のプレーに悪影響を及ぼすモノなんだよ。

だからこそ、原点に立ち返り、あらためて、「年間最多勝ち点チーム」を目指すことでチーム一丸になるべきだと思う。

いまのレッズは、本当に強いチームなんだから、その実力を、「フッ切れて」発揮できれば、向かうところ敵なしだと確信する筆者なのだ。

とにかく、頑張れ〜、浦和レッズ〜〜っ!!

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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