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2016_日本代表(キリンカップ)・・「本気の本物」とのガチンコ勝負になったからこそ!・・それに勝る学習機会はない・・(日本vsボスニア・ヘルツェゴビナ、1-2)・・(2016年6月7日、火曜日)

すごかったネ〜・・ボスニア・ヘルツェゴビナがブチかましつづけた、激しく、クリエイティブ(創造的)な守備。

彼らは、主体的で攻撃的に「考え」つづけ、次、その次という、素晴らしく実効レベルの高い忠実な連動ディフェンス(協力プレッシング)を魅せていた。

だからこその、強烈な意志ベースのクリエイティビティ(創造力)。彼らが展開して組織ディフェンスの内実は、まさにホンモノだった。

もちろん「逆」から見れば、ハリル・ジャパンが、時差ボケも癒(い)え、ベストフォームを取り戻しつつあったボスニア・ヘルツェゴビナの「本気モード」を絞り出させたとも言える。

そりゃ、そうだ。

何せ、数日前のハリル・ジャパンが、これまたバルカン半島の強豪(東欧のライバル!?)ブルガリアを相手に、7ゴールもブチ込んじゃったわけだから・・。

そんな圧倒的なサッカーを魅せつけられたボスニア・ヘルツェゴビナが燃えないはずがない。

そしてゲームは、フットボールネーションの強豪ボスニア・ヘルツェゴビナとの、まさにガチンコの勝負へと「進化&深化」していったんだよ。

だからこその、願ってもない学習機会。

ところで、ここでいう「学習」。

それは、ハリル・ジャパンの強者たちが、「世界との最後の僅差」が、まさに同等レベルにまで縮まりつつあるという事実を「体感できた」という意味合いだよ。念のため・・

まあ、結果は残念だったけれど、私は、このガチンコ勝負を観ながら、またまた、こんな前向きな(!?)思いに耽(ふけ)ったものでした。

・・やっぱり、世界との「最後の僅差」を縮めていくためのポジティブ体感は、強い相手とのガチンコ勝負を通してしか「つかみ取る」ことはできない・・

そう、この悔しさは、かならず「次」につながっていくんだよ。

ということでゲーム・・

立ち上がり数分でブチかまされた、セットプレーからの、ジュリッチの決定的ヘディングシュート。

その大ピンチによって日本チームの脳裏に刻み込まれた精神的プレッシャー(!?)には、微妙な、心理・精神的ファクターが内包されていたのかもしれない。

もちろん、その決定的シーンには、日本守備にとっての「トラウマ的ショック」というだけじゃなく、ボスニア・ヘルツェゴビナの攻撃イメージを強化するという意味合いも含まれていた。

私は、それが、ボスニア・ヘルツェゴビナの同点ゴールを生み出した、シンプルなタテ攻撃の間接的イメージバックボーンだったと思っているのだが・・。

まあ、ちょっと「こじつけ」かもしれないけれど、私は、ボスニア・ヘルツェゴビナ選手たちが、タテ一発のロングラストパスが大きなチャンスであることを、試合前の意識付けだけじゃなく、グラウンド上で「も」体感したことが大きかったと思っているわけさ。

そんな、「一発タテ勝負」という武器を、グラウンド上で再確認したボスニア・ヘルツェゴビナに対し、我らがハリル・ジャパンは、あくまでも組織サッカーで対抗する。

そう、もちろん、ダイレクト(パス)コンビネーション。

この、ボールを止めないダイレクトパスやダイレクトシュートというテーマについては、新連載「The Core Column」で以前にアップした「このコラム」を参照してください。

あっと、蛇足・・

とにかく、人とボールが良いリズムでスムーズに動きつづけるダイレクト(パス)コンビネーションは、ハリル・ジャパンの突出した武器ということが言いたかった。

もちろん、ボスニア・ヘルツェゴビナは世界の強者だから、そう簡単には、「トントント〜ン」ってな軽快リズムで相手守備ブロック裏の決定的スペースを突いていけるわけじゃない。

ボスニア・ヘルツェゴビナ守備にしても、数日前のブルガリア戦で魅せた日本のコンビネーションを警戒し、そのダイレクト(パス)コンビネーションを迎え撃つための「イメージ・トレーニング」を積んだはずだ。

ハリル・ジャパンが、得意のダイレクトパス・コンビネーションを、簡単には機能させられなかったのも道理っちゅうわけさ。

そして・・

そんな対抗イメージでゲームに臨んだボスニア・ヘルツェゴビナ守備が、もっとも警戒し、狙っていたのが、言わずもがなの柏木陽介だった。

とにかく、彼にボールが渡りそうになった瞬間にブチかまされる忠実マーキングや協力プレスの勢いは、尋常じゃなかった。

それは、いかに彼らが、柏木陽介の、ゲーム&チャンスメイクを警戒していたかの証明でもあったというわけだ。

それでも、何度かは、柏木陽介が効果的に絡むカタチでのダイレクトパス・コンビネーションが成就しそうになったよね。でも・・

そう、徐々に、ボスニア・ヘルツェゴビナ守備ブロックも、日本の組織コンビネーションの「リズム」に馴れ、より効果的に、ボールがないところでの動きを封じられるようになったんだよ。

そんな、日本にとってネガティブなゲームの流れのなかで気を吐いたのが、言わずもがなの宇佐美貴史だった。

これまで私は、彼に対して、厳しい論評を繰り広げてきた。もちろん「それ」は、彼が秘める、類い希なる天賦の才を、正しく発展させたいからに他ならない。

もちろん、ガンバ長谷川健太監督の正しい戦術&心理マネージメントによって良くなっている宇佐美貴史だけれど、ここにきて、彼の「マインドの悪癖」をよく理解している(!?)ハリルホジッチという強烈な刺激も、より効果的に加わってきたというわけだ。

そんな宇佐美貴史だけれど、本当に彼は、その才能レベルに見合った「本物のブレイクスルー」を果たそうとしているのだろうか?

もしそうだとしたら、まさに「これまでにはなかった」新たな武器じゃないか。

そう、「本物のドリブラー」による、高い実効レベルの「個の勝負」。

この試合で宇佐美貴史が魅せた「個の勝負」は、まさに「それ」だった。

もちろん「それ」は、しっかりと「組織サッカーのリズム」に乗っているからこその実効ドリブル勝負だったんだ。

まあ、タテのパートナーが、「あの」長友佑都だからね、安易に自分勝手なイメージでプレーするわけにゃいかないでしょ。

そして彼は、攻守にわたる組織サッカーのリズムにしっかりと乗りながら、チャンスを見計らって個のドリブル勝負をブチかます。

宇佐美貴史の、レベルを超えた天賦の才だからね、そんな勝負プレーが、抜群の存在感を発揮しちゃうのも道理でしょ。

前述したように、組織プレー(ダイレクトパス・コンビネーション)では、うまく崩していけなかったハリル・ジャパンだったけれど、そんなところに、まさに救世主のように、宇佐美貴史の「天才ドリブル勝負」が効果的に出現したっちゅうわけさ。

ホントに素晴らしかった。

もちろん、宇佐美貴史がスペースを得たことの背景には、相手マーカーを引きつける、ボールがないところでの長友佑都のフリーランニングという「サポート」もあった。

天才的なドリブラーだからこそ、そんな「選択肢を広げるハードワーク」は、ものすごく有用なサポートっちゅうわけさ。

でも長友佑都にしても、相手が宇佐美貴史のドリブル勝負を警戒するからこそ、その逆を突いたチャンスを作り出すシーンもあったね。

いや、ホント、ドイツ・ブンデスリーガのアウグスブルクへ移籍する宇佐美貴史の今後に、心から期待しはじめている筆者なのであ〜る。

あ〜〜・・良かった。

あっと・・

まあ、とはいっても、宇佐美貴史が魅せたハイパフォーマンスの「量」が十分だったと言えないという事実は残る。

要は、時間の経過とともに、彼の存在感に陰りが見えはじめたということさ。

それには、宇佐美貴史が、シリアスに警戒しはじめたボスニアの強者ディフェンダーに、チカラでねじ伏せられはじめただけじゃなく、彼自身の攻守ハードワークの量と質が、徐々に減退していったという背景もあった。

ところで、ハリルホジッチの采配。

後半のアタマから、相手のターゲットになっていた(中盤守備でも弱点になりはじめていた!?)柏木陽介に代わって登場した遠藤航のパフォーマンスは、とても満足できるモノだった。

彼は、インターナショナルレベルでも十分に通用することを証明した。まあ、そのことは、レッズや手倉森ジャパンでも、誰もが認めるところなんだろうけど・・さ。

あっと・・、一点を追いかける状況になってからのハリルホジッチの勝負の采配。

交替してグラウンドに登場したのは、槙野智章、小林祐希、金崎夢生、そして小林悠。

それぞれに、しっかりと闘っていたと思う。

そのなかでは、小林祐希の「積極性」は注目に値すると感じた。

たしかに彼は、個の勝負を仕掛けていくタイプではなく、あくまでも組織サッカーのなかで活きるタイプの選手だけれど、だからこそ、彼の「自己主張マインド」は、とても目立っていたし、ポジティブだと感じたわけだ。

そういえばジュビロでも、アダイウトン、ジェイという「個の才能」を、うまくマネージするチャンスメイカー&2列目ストライカーとして存在感を発揮しているんだっけ。

これからは、ジュビロでの彼のプレーにも、もっと意識して注目することにしよう。

フ〜〜・・

まあ、ということで、今日は、こんなトコロですかね。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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