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2018_米国ネイションズ杯・・あのままの「ジリ貧」状態だったら、チーム立て直しに大変なエネルギーと時間が必要になっていたはず・・高倉麻子監督の采配に乾杯!・・(アメリカvsなでしこ、4-2)・・(2018年7月27日、金曜日)

平均身長で「10センチ」も違う・・

それだけじゃなく、スピードとパワーも、とても不利・・

まあ、なでしこの場合は、そんなフィジカル的な劣勢を、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションで補う・・といのが常道だよね。

とにかく「なでしこ」は、極力、フィジカルな「デュエル状況」に陥らないことが、もっとも重要なポイントというわけさ。

そう・・

攻撃においても、守備においても・・

だから・・

攻撃では、とにかく、人とボールを軽快に「動かしつづける」ことが肝心。

また守備では、相手パスを予測して(または追い込んで)インターセプトを狙う・・というのが基調になる。

でも・・

そう、アメリカは、そんな「なでしこ」の攻守イメージングを「百も承知」なんだよ。

だから狙うのは、「なでしこ」に前へ来させて、カウンターを狙う・・っちゅうゲーム戦術。

なでしこは、とにかく人数を掛けた組織サッカーで攻め上がらざるを得ないわけだから・・。

そしてアメリカは、良いカタチ(位置)でボールを奪ったら、すぐにタテへ。

またアメリカは、組み立てプロセスでも、鋭く広い「足許パス」をつなぎながら、最後は、大きなクロスや、アバウトなスルーパス、はたまた個のドリブル勝負をブチかましていく。

そんな強烈にパワフル、スピーディーなアメリカに対する「なでしこ」。

彼女たちは、とにかく忠実に、組織的な「攻守ハードワーク」を積み重ね、そしてボールを奪い返してからは、人とボールを動かしつづけてスペース攻略を狙うしかない。

立ち上がりの10分くらいまでは、そんな「なでしこ」のゲーム戦術イメージがツボにはまり、かなり良いカタチでゲームのイニシアチブを握れていたよね。

でも・・

そう、徐々に運動量がダウンしはじめたことで、チェイス&チェックが、アメリカのボールの動きを「後追い」するようになっていったんだ。

そうなったら、もう自由自在にスペースパスを出されてしまうのも道理。

そして、個のドリブル勝負だけじゃなく、「アバウトな」クロスやスルーパスでも、チャンスを作りつづけられちゃう。

そんな展開だから、最後は、フィジカル勝負に持ち込まれて負けてしまうっちゅうわけだ。

そうではなく、なでしこは、協力プレスを効果的に連動させることでアメリカの攻撃を追い込んでインターセプトを決める・・というボール奪取プロセスを機能させなきゃいけないんだ。

また攻撃でも、とにかく人数を掛けて「人とボールを素早く、広く動かし」つづけることで、フィジカルコンタクト(デュエル状況)を回避しながらスペースを突いていく。

たしかに、立ち上がりの時間帯は、人とボールの動きが「軽快」につながっていた。

だから、アメリカ守備ブロックを「振り回す」シーンも多く演出できたんだ。

でも、全体的な運動量がダウンしてからは、まさに「ジリ貧」の展開になってしまったんだ。

難しいネ・・

ポジショニングバランス・オリエンテッドな守備のチーム戦術で闘うのであれば、よほど効果的、効率的に、寄せるアクション(守備アクションの集散)を繰り返さなきゃ、機能しない。

でも、やはり今の「なでしこ」は、組織的な「協力プレス」を積み重ねながら、全体的なイニシアチブを握ってゲームの流れを抑えるという方向性がいい。

要は・・

やはり、今の「なでしこ」は、攻守にわたって、常に「数的に優位なカタチ」を創りつづけるしかないということだよね。

だからこそ、運動量で相手を圧倒しなきゃ、アメリカとの「フィジカルコンタクト(デュエル状況)」をできるかぎり回避しながら、効果的な「動き」を演出するのは難しい。

そんな「やり方」をうまく機能させられなければ、この試合のように「ジリ貧の展開」に追い込まれてしまうのも当然の成りゆきっちゅうことだね。

それが・・

そう、高倉麻子監督が、素晴らしい采配を魅せたんだ。

後半の15分あたりからの、中盤から前線にかけての積極的な選手交代。

それが、素晴らしい「意識と意志の変容」を生み出した。

そう、そこから、やっと、「なでしこ」本来の積極的な攻撃サッカーが甦っていったんだよ。

良い流れ・・

そう、攻守にわたって数的に優位なカタチを創りつづけられるようになったんだ。

そしてそこからは、まさに、「受け身のジリ貧から積極イニシアチブ掌握へ・・」ってな感じの、完璧なイメチェンを果たした。

まあ、だからこそ、アメリカとの、「フィジカルベースの最後の僅差」を、より明確に意識させられた・・という側面もあるよね。

でも、前半の半ば過ぎからの「ジリ貧のゲーム展開」がつづいていたら、チーム全体の雰囲気は、ものすごく落ち込んでいただろうし、そこからチームを立て直すには、大変なエネルギーと時間を費やさなきゃいけなかったハズ・・。

でも、「この終わり方」だったら、確実に、そのポジティブな雰囲気を「次」につなげられるはず。

まあ、良かった・・


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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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