湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第10節(2014年4月29日、火曜日)

 

ゴールが決まった後は、ものすごく興味深いテーマがテンコ盛りだった・・(レッズvsマリノス、 1-0)・・(2014年4月29日、火曜日)

 

レビュー
 
この試合は、なんたって、レッズの決勝ゴールが入ってからのゲーム展開が、ものすごく面白かった。そこには、テーマがテンコ盛りだったからね。

えっ・・!? ゴールが入るまでのゲーム内容!?

マリノス樋口靖洋監督が、こんなニュアンスの内容をコメントしていたっけ。曰く・・

・・我々のやり方は正しかった・・レッズを、リアクションに陥らせることも含めて、彼らに、カタチを作らせなかった・・それは、まさにプラン通りのゲーム展開だったと思う・・

・・それだけに、結果を出せなかったことが悔しい・・ボールを奪うところまでは、とても良い流れだったけれど、でも、その後の攻撃へ出ていくエネルギーが十分ではなかった・・ただ選手たちは、最後の最後まで、集中して闘ってくれた・・

そのコメント通りの展開だったよね。要は、マリノスが忠実に実行した、レッズの良さを消す戦術サッカーが、殊の外うまく機能していたということだね。

そのこともあって、レッズが作り出せたチャンスも、数えるほどしかなかった(前半の原口元気のヘディングシュートくらいかな、本当の意味で決定的だったのは・・)。

とはいっても、対するマリノスも、樋口靖洋監督が言うように、攻めに人数を掛けられなかったことで、単発の攻撃しか仕掛けられなかった。

でも、「あのまま」ゲームが進行していったら・・。

そう、中村俊輔のセットプレー。それは、とても、とても危険。彼は、どんな状況でも、チャンスに結びつけちゃうからね。

樋口靖洋監督も、そのこと(勝負に勝つこと!)のみをイメージしていたということなんだろうね。

ある記者の方から、「上昇していくキッカケは何か?」と問われた樋口靖洋監督は、こんなニュアンスの内容をコメントしていたよね。曰く・・

・・それは、勝つことです・・それが大事・・どんなカタチでもいい・・とにかく勝つことが出来れば、それが大きなステップになると確信している・・

フムフム・・

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ということで、ここからは、(コーナーキックから)李忠成がヘッドでブチ込んだ決勝ゴールの後から発生しつづけた興味深いテーマをランダムにまとめまっせ。

まず、後半10分に決勝ゴールを入れた後からの5分ほどの時間帯。

もちろんマリノスは、それまでの戦術サッカーから「解放」され、ガンガンと押し上げていった。

まあ、普通だったら、レッズ守備ブロックは、ある程度の余裕をもって、そんなマリノスの「勢い」を吸収できていたはずだけれど、今日は、違った。

そう、かなり浮き足立ってしまったんだ。

それは、もちろん中盤ディフェンスが、マリノスの「勢い」を、うまく止められなくなったからだけれど、それ以外にも、ボールがないところでの忠実なマーキ ングが「緩く」なってしまったり、積極的にオーバーラップしてくる相手プレイヤーを「捕まえ切れなかった」り、はたまた、簡単にワンツーで抜け出されてし まったり・・。

そう、チェイス&チェックや(インターセプトも含む)協力プレスが甘かったり、ボールがないところで全力フリーランニングで上がってくる相手プレイヤーを つかみ切れなかったり、ワンツーで抜け出す相手を「行かせて」しまったりと、レッズ守備が、後手後手に回っちゃったんだよ。

そんな守備のエッセンスについては、私のHPの新連載「The Core Column」に今日アップした「このコラム」も参照してくださいネ。

あっと・・レッズ守備の機能性が大きくダウンしてしまったシーンだった・・とにかく、これは何とかしなければいけない・・

そう思っていた矢先、ミハイロが動く。

疲れがみえていた興梠慎三に替え、鈴木啓太を投入したんだ。もちろん、柏木陽介は、「一段」上がり、少し高い位置からディフェンスに入るというイメージ。

この交替は、効いた。

鈴木啓太を中心にした中盤ディフェンスの「効果レベル」がアップしたことで、中盤のドミネーション(支配傾向)が、明確に改善していったんだ。

そして、レッズ選手たちの「自信」がよみがえっていく。

不確実な要素が満載されたサッカーは、まさに本物の心理ゲームだからネ。自信と確信レベルが高揚すれば、プレーが積極的になり、実効レベルがアップするのも道理というわけだ。

もちろん、レッズの守備ブロックも安定していく。前述した決勝ゴール後の5分間に、何度も攻略されてしまった「ウラのスペース」も、確実にカバーできるようになっていったんだよ。

結果として、ゲームが、ダイナミックに(動的に)均衡していったというわけだ。

そこからレッズも、効果的な攻撃を仕掛けることで何度かチャンスを作り出せるようになっていったっけ。

まあ、全体としては、「より」安心して観ていられるように、ゲームの流れが、動的に均衡していったというわけなのですよ。でも・・

そう、マリノスのフリーキック。もちろん中村俊輔。

この場面では、誰もが手に汗握ったでしょ。もちろん私もネ。

でも、そこには、守護神がいた。そう、西川周作。

本当に、素晴らしい飛び出しとキャッチング(パンチング)だったよね。

ミハイロも、私の質問に対して、こんなニュアンスのコメントをしてくれた。曰く・・

・・本当に、ニシカワは、素晴らしいゴールキーピングを魅せつづけてくれた・・その飛び出しと、安定したキャッチングやパンチングが、いかにレッズ守備ブロックを安定させてくれたことか・・

・・アナタ(私のことだよ)が言うように、最後の時間帯における二つのフリーキックシーンでは、ニシカワが、本当に素晴らしいゴールキーピングを魅せてくれた・・

・・ところで、アンタが質問したように、このゲームを勝ち切ったことには、もちろん、とても大きな意味があったと思う・・何たって、1点差で勝ち切ったんだからね・・

・・以前だったら、それで負けていた・・フロンターレ戦でも、ニシカワのファインセーブに助けられたこともあって、最後は勝ち切ることができた・・その意味でも、ニシカワは、我々にとって、真の補強だったと言えるんだ・・

・・ところで今シーズン、我々が、失点をゼロに抑えて勝ったのは何ゲームだったっけ(そう言いながら、指折り数えはじめるミハイロ)・・そうそう、この試合も含めて5ゲームだ・・(今シーズンの展開にとって)たしかに、その意味は大きい・・

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蛇足かも知れないけれど・・永田充。

全体としては、とても安定したプレーを魅せていた。でも・・

そう、皆さんも観られたように、不用意に、西川周作へパックパスを繰り返してしまったことで、心理状態がボロボロになっちゃったんだ。

そのシーンでは、マリノス選手は、永田充の「余裕のなさ」を敏感に感じとり、素早く、西川周作へ詰めていった。だから西川周作も、仕方なく、永田充へパスを出したんだよ。

そのパスを受けた永田充は、最初は、ある程度フリーだった。だから、シンプルに蹴り出しておけばいいものを、不用意に切り返したことでマリノス選手に「詰められて」しまったんだ。

そして、あろうことか、またまた「苦し紛れ」に西川周作へバックパスを出してしまったんだよ。

そして、皆さんも観られたように、そのバックパスが「ズレ」、西川周作の横をすり抜けてレッズゴールへと転がっていってしまう。

このシーン、皆さんも覚えているでしょ。

そこは、ギリギリのところで、西川周作が追いついてクリアしたから事なきを得た。

でも、永田充の「心のなか」では、自信が崩壊し、不安感だけが支配するようになってしまったんだよ。

そのことは、その後の、永田充の不安定なプレーに、如実に現れていた。守備にしても、前線へのパスにしても。

それだけじゃなく、永田充が、またまた、西川周作へパックパスを出してしまったんだよ。

そう、「あの」弱すぎるバックパス。

危うく、マリノス選手に「かっさらわれ」そうなった。そのとき、多くの方の悲鳴を聞いた(・・ような気がした)ものだ。もちろん私も、息を呑んだ。

言いたかったことは、本物の心理ゲームであるサッカーでは、「心の状態」によって、グラウンド上の現象(プレー内容)が、ものすごく変動してしまう・・ということだ。

ということで、私は、そんな永田充の不安定なプレー内容の変化を、興味深く見守っていたんだよ。

すみませんネ、永田充選手。

でも、アナタは、今日の「失敗」を、これ以上ないくらい効果的な「学習機会」として活用しなければダメだよ! ホントだよ! アナタは、とても能力の高いディフェンダーなんだから・・。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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