湯浅健二の「J」ワンポイント


2015年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2015年5月2日、土曜日)

 

大好きな武藤雄樹もふくめた質実剛健レッズというテーマ・・それと、宇佐美貴史についての、長谷川健太さんとの対話・・(レッズvsガンバ、1-0)

 

レビュー
 
「何やってんだ〜っ!!・・武藤雄樹がフリーに走っているじゃないか!!・・どうして彼にタテパスを出さないんだよ〜っ!!!」

そんな罵声を飛ばしてしまった。基本的にニュートラルであるべきのフリーランスジャーナリストには「あるまじき」、肩入れしすぎた観戦態度!?

まあ、いいじゃありませんか。私が、ミハイロ・ペトロヴィッチのサッカーを支持していることは衆目の認めるところでしょ。

それに、「J」開幕当初から「ドイツ系」だった浦和レッズに対しても、思い入れがあるしネ。

もちろんガンバの長谷川健太さんのウデも、素直に高く評価しているし、彼にも成功して欲しいとは思っているけれど・・。

まあ、ガンバの宇佐美貴史というテーマについては、長谷川健太さんとの対話というカタチで後述しますので・・。

ということで、武藤雄樹というテーマにもどります。

彼は、攻守にわたって忠実に動きまくり、タイミングよく、スッ、スッと、相手マーカーからフリーになってスペースでパスを受けようとするんだよ。でも、パスがこない。

だから罵声が・・

そんな私に対し、隣に座るフリーランス(電波メディアの!?)パーソナリティー、河合貴子さんが、冷静に、こんなコトを言った。

・・湯浅さん・・彼らには武藤雄樹の動きは見えているんですよ・・でも、何かを怖がって、タテへのチャレンジパスを出さずに安全プレーに奔っちゃう・・

「そう・・それなんだよ問題は・・彼らはプロだろ・・ミスパスを怖がっているようじゃ、次の段階に進めないじゃないか・・」

すぐに、そんな言葉が口をついた。あっと・・、河合貴子さんに文句を言っても仕方なかった。スミマセン、河合さん・・へへっ。

でも、時間の経過とともに、武藤雄樹にもタテパスが供給されるようになっていったんだよ。そんなポジティブシーンを観ながら、今度は別の言葉が口をついた。

・・そうそう・・それだよ・・彼がボールをもったら、ほとんどのケースで、とても効果的なチャンスメイク(仕掛け)につながるでしょ・・

もちろん武藤雄樹は、展開&勝負(ダイレクト&スルー)パスだけじゃなく、状況とタイミングを見計らって、素早く、効果的なドリブルもブチかます。

とはいっても彼は、相手と静対した状態から、その相手を置き去りにしてしまえるような「ホンモノのドリブラー」ではない。

でも、そのタイミングの良いドリブルは、スペースを攻略してシュートまでいくという攻撃の目的を達成するために、その多くが、素晴らしい「効果レベル」を発揮するんだよ。

ホント、武藤雄樹は、素晴らしい組織プレイヤーだと思う。

ということで、このところ、柏木陽介がボランチに入るケースが多いよね。そんな柏木陽介を観察していて、たぶん彼は、そのタスク(ボランチ)を気に入っていると感じるようなった。

とにかく、彼が魅せつづける後方からの効果的ゲームメイクは、阿部勇樹とともに、まさにレッズの屋台骨なんだよ。

また柏木陽介は、守備でも、自分の「パワーとスピードのなさ」を補うために、ボール奪取プロセスへの効果的な「絡み」という視点で、ものすごく広範に「工夫」していると感じる。

そんなだから、この試合でも、例えば(コラムの後半で登場する)宇佐美貴史の才能プレーを、とても効果的に抑制できていたのも道理ってな感じ。

言いたかったことは、後方の、柏木陽介&阿部勇樹コンビと、前戦の武藤雄樹&梅崎司コンビが、とても素敵にコラボレートしているコトだった。

特に、柏木陽介と武藤雄樹の「タテの関係」は、ゲームを重ねるごとに良くなっている。

だから、いまのレッズでは、この武藤雄樹と柏木陽介、そして関根貴大が、「新しい希望の星」になっているということに異論を唱える方はいないでしょ。

もちろん、興梠慎三や石原直樹が帰ってくれば、彼らもまた「星」になる。

いいね。

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ということで試合だけれど、まあ、あれほどの、攻守にわたるスーパー組織サッカーだったから、このレッズ完勝も、まさにテメー等のウデで勝ち取ったモノだよね。

特に、ガンバの前戦に君臨する「天才コンビ」、宇佐美貴史とパトリックを「抑制」した(カウンターの抑制!?)組織ディフェンスは、本当に素晴らしかった。

ガンバ長谷川健太さんも、レッズ守備の質実剛健さにシャッポを脱いでいたよ。

だから、敢えて、ミハイロに聞いた。

・・本当に素晴らしいサッカーだった・・内容は、申し分ないし、チームも、どんどんと発展し、今後に大いなる期待がもてる・・だから、後半ロスタイムにブチかまされた大ピンチシーンが、ネガティブに、目立ちに目立ってしまったんだ・・

・・そう・・リンスから、一瞬フリーになった宇佐美貴史へスルーパスを通され、その宇佐美貴史にフリーシュートを打たれてしまった決定的ピンチシーンのことだ・・

・・それは、そこまでのゲーム内容からすれば、本当に、あり得ない決定的ピンチだった・・そのことについてコメントをいただきたい・・

この絶対的ピンチシーンでは、こぼれ球をひろったリンスのトラップ&コントロールを止められずに決定的スルーパスを出されてしまっただけじゃなく、最前線でフリーになっていた宇佐美貴史に、そのタテパスをコントロールされて決定的シュートをブチかまされてしまった。

そりゃ、その絶対的シュートを、見事なセーピングで弾き出した西川周作に対する感謝も含めて、チーム全員が反省しなきゃいけないでしょ。

そんな私の質問に対して、ミハイロは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。

・・そう、おっしゃる通りだ・・

・・そのネガティブな出来事については、これから、選手全員で、その原因を考え、自覚し、二度と起きないように(守備での!)勝負イメージをシェアしていかなければならない・・

・・前節のグランパス戦でも、最後の最後に(ディフェンスが少し気抜けになってしまったことで!?)ゴールを奪われてしまった・・また、思い起こせば、昨シーズン最後の三試合でも、あり得ないカタチで失点を重ねてしまった・・

・・我々は、そのシーンの内実を、しっかりと脳裏に刻み込まなければならないんだ・・

そう、その通りだ。

チームは、しっかりとイメージトレーニングを積み重ねなければならないんだよ。最後の勝負の瞬間における「イメージ描写力」をアップさせるためにね。

私は、あまりにも素晴らしいゲーム内容と結果だったからこそ、敢えて、そんなネガティブなテーマを引っ張り出すことにしたっちゅう次第でした。

人は、ハッピーな状態ではなく、ネガティブな現象の内実からこそ、多くを学べるモノだからネ。

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ということで、最後に、宇佐美貴史に関する、長谷川健太さんとの対話。

こんな質問を投げた。

・・宇佐美貴史・・ガンバ大阪と日本代表・・それが、質問のキーワードです・・

・・要は、宇佐美貴史のハードワークが足りないというテーマです・・

・・日本代表とガンバでは、志向する目標も、対戦する相手も違う・・

・・でも、だからといって宇佐美貴史は、両チームでのプレー内容を使い分けることなど許されないと思う・・

・・彼は、ハリルホジッチの下で、ハードワークにも精進した・・彼は、やれば出来ることを、日本全国に認識させてしまったのですよ・・

・・でも、自分のクラブチームであるガンバでは・・この試合でも、彼の、攻守にわたるボールがないところでのプレーの量と質は、百点満点で、五点程度のモノだったと思う・・

・・そのテーマについて、コメントをいただけないか?・・

そんな私の質問を、いちいち頷(うなづ)きながら聞いていた長谷川健太さんが、例によって(こちらも!)とても真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。曰く・・

・・おっしゃるとおり、宇佐美貴史は、まだまだハードワークが足りないと思います・・とはいっても、このところの彼のプレーは、ものすごく改善しているんですよ・・

・・ボールがないところでのハードワークが、湯浅さんが言う五点とはヒドすぎる(笑)・・

・・我々は、彼の才能を引き出すことに努めなければいけないですよね・・私は、ハードワークについて、宇佐美とも、かなり長い時間をかけて話し合っているんですよ・・

・・そして私は、彼の考え方や感性が、大きく、ポジティブに変わってきていることを実感しているんです・・

・・まあ、今日のゲームでは、あまりにもレッズの守備が良かったから、宇佐美貴史も、いつもような感覚でプレーできなかったわけですが・・

・・とにかく、宇佐美貴史が、現在の日本サッカーにおける最高の才能の一人であることは誰もが認めるところでしょうし、そんな彼が、いま良いベクトルの上で、徐々に変わりつつあるということだけは主張させてください・・

チト失礼な言い回しになってしまったかもしれない。すみませんネ、長谷川さん。

たしかに私は、ガンバの宇佐美貴史を、つぶさに観察しつづけていたワケじゃなかった。

もちろんこれからは、少し「リキ」を入れて、宇佐美貴史を観察することにします。私の学習機会としても・・ネ。

宇佐美貴史については、新連載「The Core Column」において、「こんなコラム」を発表しました。また、同じ連載のなかで、「中村俊輔という天才のブレイクスルー」ってなコラムもアップした。

興味のある方は、ご一読アレ。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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