湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2016年7月17日、日曜日)

 

まあ残念な引き分けではあった・・でも、ドリブラーの進化という視点じゃ、得たモノも大きかった・・(レッズvsアルディージャ、2-2)

 

レビュー
 
そりゃ、勝てるチャンスが大きかったわけだから、残念な気持ちが先行するのも当然だよね。

もちろん、ミハイロが志向するサッカーを強く支持する私も、柏木陽介やズラタンの絶対的ヘディングシュート、武藤雄樹の「抜け出しシュート」等など、かなり確率の高いチャンスシーンを決め切れずに引き分けてしまったことは、とても残念に感じていた。

でも・・

そう、プロコーチ渋谷洋樹が率いる、心境著しいアルディージャのサッカーにも、やはりフェアに拍手をおくらなきゃいけないとも思うわけだ。

アルディージャ選手たちは、渋谷洋樹さんも言っていたように、自分たちのサッカーに、かなり手応えを感じているんだ。だから、特に後半は、自信をもって仕掛けていった。

もちろん、そのチャンスの「内実」については、まだまだ課題があるとは思うよ。

要は、相手ディフェンスを、組織的に振り回し、そのウラの(決定的)スペースを突いて勝負できているかどうか・・という視点。

そうなんだよ、アルディージャは、個人勝負が主体で、どちらかといったら「偶発的」なプロセスでシュート(最終勝負)までいったシーンが多かったんだ。

それに対してレッズは、例によっての組織的な(ダイレクト)パスコンビネーションから、ある程度フリーなボールホルダーを創りだし、そこから必殺のドリブル勝負をブチかましたり、ダイレクトパス・コンビネーションをブチかましたり、シンプルにズラタンを狙ったりなど、「組織」と「個」がとても上手くバランスしているんだ。

要は、最終勝負へ向かう仕掛けプロセスにおいて、しっかりと「決定的スペース」がイメージできているかどうか・・というテーマなんだ。

(決定的)スペースの活用・・

もちろん「それ」は、スペースで、ある程度フリーなボールホルダーを演出する・・という意味。

そして、「そこ」へ至るまでのプロセスでは、ドリブル突破あり、ダイレクトパス・コンビネーションあり・・ってな具合だ。

ということで、この試合での2チームを比べた場合、その仕掛けプロセスの「内実」で、まだまだレッズに一日の長あり・・と思っている筆者なのだ。

その仕掛けプロセスの中では・・

そう、後半に関根貴大が魅せつづけたドリブル勝負が、殊の外エキサイティングだった。

そのことをミハイロに聞いたんだけれど、そしたら・・

・・そう、セキネは良かった・・でも、前半は、良くなかったんだよ・・だからハーフタイムに、もっと勝負していくように「刺激」を与えたのさ・・

・・その、サイドからの仕掛けだけれど・・

・・いまの世界サッカーでは、サイドからの仕掛けがとても重要な成功ファクターになっているんだ・・そう、今回のEUROでも明確に感じられたようにね・・

・・そのためにこそ、組織的なコンビネーション(ダイレクトパス・コンビネーション)が大事になってくるというわけさ・・

・・それをベースに、サイドゾーンで1対1を創りだすんだよ・・

・・そして、その状況で、もし相手のサポート選手が寄せてきたら、センターゾーンでの守備の人数が足りなくなっていることを意味するし、もしサポートが来なけりゃ、そのままドリブル勝負をブチかませばいい・・

・・とにかく、サイドゾーンで「1対1」の勝負シーンを創りだすためにも、ダイレクトパス・コンビネーションに代表される組織サッカーが、絶対的なベースっていうわけさ・・

フムフム・・。もちろん、そういうことだね。

それにしても関根貴大は、素晴らしかった。

私は、そんな彼の魅惑的なドリブル勝負を観ながら、彼のデビュー当時を思い出していた。

ところで、ドリブラーの進化&深化。

彼らが伸びつづけられるかどうかは、成功体感の量と質にかかっている。

そう、自信と確信のレベルアップ。

それが、勇気と強烈な意志の、絶対的なリソース(源)っちゅうわけさ。

ところで、レッズ期待の新加入ドリブラー、駒井善成。

この試合でも、高いポテンシャルを感じさせてくれた。でも・・

そう、彼の場合は、ドリブル勝負と展開パスのメリハリに対する「正しい感性」をブラッシュアップする必要がありそうだ。

要は、とても難しいシーンで、強引に「行き過ぎ」たり、行けるシチュエーションであるにもかかわらず横パスに「逃げて」しまったり。

もちろん、すべてが微妙に違う「千差万別の具体的シーン」については、選手自身が、脳内の「感覚タンク」を充填することで、自分なりのソリューション(実効イメージ)を作り上げればいい。

そう、成功体感の積み重ね。

駒井善成には、クレバーに、スマートに、ポテンシャルを活用して欲しいよね。

才能は十分。

後は、変に(戦術的に!?)斜に構えるのではなく、いまのような攻撃的な姿勢を高みで維持しながら、その「積極エネルギー」を、うまくマネージして成功体感を積み重ねる・・ということですかね。

えっ・・分かり難い!?

でも、いくら優れたアドヴァイスをもらっても、結局は、自分自身の意欲と工夫でしか、本当の意味の「進化&深化」は達成できないということなんだよ。

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ということで、明日から、2週間ほどヨーロッパへ遠征してきます。

旧交を温めたり、サッカーコーチの国際会議に参加したり。

「何か」あったら、コラムをアップしま〜す。

では、また・・

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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