湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2016年4月1日、金曜日)

 

レッズのダイレクトパス・コンビネーションは冴えわたっていた・・(レッズvsヴァンフォーレ、2-1)

 

レビュー
 
今日は、ものすごく寒いなかを、帰りは雨に降られながら(オートバイを)ライドすることが分かっていながら、それでも単車で出掛けることにしたんですよ。

何故かって??

ゴメン・・それはご想像にお任せします。野暮用があり、どうしても「機動力」が必要だったんです。だから・・

ところで皆さんは、オートバイのことを、どうして「単車」と呼ぶが、ご存じ?

へへっ・・

それは・・ね・・

その昔、オートバイには「常に」サイドカーが取り付けられていたんですよ。だから、オートバイ本体とサイドカーは、つねに一体だった。

それが、あるときから、サイドカーが切り離されたんだ。そして、オートバイが、単車と呼ばれるようになった。ネ、面白いバックストーリーでしょ。

あっと・・蛇足。

とにかく、そんなこんなで、100%「予定通り」、23時30分をすこし過ぎたあたりに、ずぶ濡れで帰宅した次第でした。

あっと・・、その「予定通り」というテーマについても語らせて下さい。それは・・

気象庁の天気予報。皆さんもご存じのスーパーコンピュータ「京」のことですよ。そう、例の、某政党の女性代議士が「2番じゃいけないの?」って質問した、アレです。

それが、気象情報網から送られてくる多岐にわたるデータを基に、より洗練されたカタチで分析し、気象予報に落とし込むっちゅうわけなのです。

だから、このところ、気象予報が、ものすごく速く、正確になっているのも道理っちゅうわけさ。

私は「単車乗り」だから、どうしても気象予報が気になる。自分が濡れるのはいいけれど、単車を汚したくないからね。とにかく、いつも「京」には助けられているというというコトが言いたかった筆者なのでした〜・・へへっ。

あ〜あっ、またまた蛇足。

ということで試合。

ミハイロが、記者会見場を後にしながら、ちょっと自嘲気味の雰囲気で、こんなコトを言った。

「それでも勝ったことには、とても大事な意味があると思うよ・・」

自嘲気味!? どして?? とても立派な勝利じゃありませんか。

あっ・・そうか・・あの、後半ロスタイムに喰らった失点ね・・「あれ」は、確かにいただけなかった。

まあ逆に、その反省材料としての(!?)失点には、森脇良太の2ゴール目がいかに重要だったかについて、選手たちが、冷や汗とともに「体感」したというポジティブ側面もあったでしょ。

そのテーマについても、ミハイロが、こんなニュアンスの内容をコメントしていたっけ。

・・あのヴァンフォーレのゴール(レッズの失点!)は、良くない・・ホントに、良くない・・そのせいで、試合後に、何らかのネガティブな感覚が残ってしまったと思う・・

・・ところで、ゲームが流れているなかでのチーム高揚感の更なるアップというテーマ・・

・・要は、勝ちの雰囲気が支配しはじめているなかで、もっと貪欲にゴールを奪いにいくためのモティベーションアップというテーマ・・

・・私は、日本人は、もっと「たたみ掛けるマインド」を持たなければいけないと思うんだ・・

・・例えば、バイエルン・ミュンヘンとかボルシア・ドルトムントといった強いチームは、2点とっても、3点とっても、次、その次のゴールを狙いつづけるんだよ・・

・・そう、ヤツ等は、相手の(諦めの!?)心理状態を見定め、そこに更なるチャンスを感じたら、躊躇(ちゅうちょ)なく、完膚なきまでに叩きのめそうとするんだ・・

・・そんな強烈な(アグレッシブな!?)意志もまた、勝者メンタリティーの一部というわけさ・・

___________

あっと、ゲームの具体的な内容だけれど・・

たしかにヴァンフォーレは、とても良くトレーニングされたチームだ。

そう、「守備ブロックをガチガチに固めて必殺カウンターを狙う・・」という、勝利至上主義のサッカーを徹底的に追求しつづけるんだよ。

でも、そんなヴァンフォーレだったけれど、前半31分にキャプテンが二枚目イエローで退場になってしまうんだ。

ミハイロも記者会見で言っていたし、私も、そのとき考えていたんだけれど、「あっ、これで勝負が、より厳しいモノになっちゃう・・」。

そりゃ、そうだ。

「その退場」によって、ヴァンフォーレ選手たちの意識と意志が、より統一強化され、集中して一つの目標イメージを形成していくわけだからね。

そして案の定、それまで(前半31分の退場劇までは!)とても良かったレッズが攻めあぐみはじめるようになってしまうんだよ。

サイドゾーンに、もっと強力なドリブラーかいればハナシは好転するんだろうけれど、レッズのサイドバック&サイドハーフは、足を止めて正対する状況から、 フェイントやスピード(パワー)などで相手を翻弄して抜き去るといった「本物ドリブラー」には、まだ成り切れていないのかもしれない。

宇賀神友弥、梅崎司、交替出場した関根貴大や高木俊幸にしても、本調子ではないこともあったんだろし、「あの」徹底ディフェンスサッカーに特化するヴァン フォーレ守備が相手ということもあったんでしょ、だから、うまく、ドリブル突破から決定的クロスをブチかますというチャンスメイクまではたどり着けなかっ たんだよ。

もちろんヴァンフォーレ守備も、一旦ドリブルで抜いても、すぐに追い付いてきちゃうしね。その忠実な(強烈な意志が炸裂する!)粘りの守備アクションにはアタマが下がったモノだ。

でも・・

そう、勝負ドリブルでは、そんなにチャンスを作り出せなかったけれど、レッズの真骨頂であるダイレクトパス・コンビネーションは、光り輝いていた。

前半から、何度も、本当に何度も、ゆっくりとした後方でのパス回しから、急にテンポアップした仕掛けタテパスをキッカケに、ダイレクトパスや、ワンタッチ(ワントラップ)&パスを駆使した素早いコンビネーションで、ヴァンフォーレ守備ブロックのウラを突いてしまうんだよ。

あっと・・

この「ダイレクトパス・コンビネーション」というテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」を参照して下さい。

要は、ボールを止めないでパスをしたりシュートしたりする「ダイレクト」のプレーというテーマを扱ったコラム。

協会は、「ワンタッチ」などといった表現に統一させたいらしいけれど、それに対しては、多くのサッカー人が違和感を抱いているんだよ。

何せ、ボールを止めないパスやシュートは、不確実な要素が満載のサッカーじゃ、ホントに特別なグラウンド上の現象だからね。それを、「ワンタッチ」などと表現するのでは・・

あっと・・またまた、ちょっとエキサイトしちゃった。

何せ、テレビ解説などで、その「ワンタッチ」ってな表現を聞くたびに、鳥肌が立っちゃうからね。ホント、いい加減にして欲しい。フンッ・・

あっ・・そうだった・・

とにかく(特に前半から!)、その、ダイレクトパス・コンビネーションが、冴えまくっていたレッズというコトが言いたかった。

ミハイロ・ペトロヴィッチも、同じピクチャーを描くこと(勝負コンビネーションのイメージを正確にシェアすること)の重要性を説いている。まさに、その通り。

そんな「イメージ・シンクロ能力」がアップしてきたからこそ、そのダイレクトパス・コンビネーションに、ワンタッチ(ワントラップ)&パス、ボール触らず に「スルー」するプレー、はたまた3人目、4人目のフリーランニング(パス&ムーブ)などが、効果的にミックスされつづけるというわけさ。

後半のレッズ先制ゴールシーンもまた、タテパス、ボールを触らないスルー&爆発ダッシュ、そしてリターンパス・・といった一連のダイレクトパス・コンビネーションが冴えまくった成果だった。

そして最後は、スループレー&爆発ダッシュで、ヴァンフォーレ最終ラインのウラに広がる決定的スペースへ抜け出した興梠慎三が、右足一閃。

素晴らしく感動的なゴールだった。

まあ、前半から、ダイレクトパス・コンビネーションやセットプレーなどで、決定機を創りだしつづけていたレッズだから、これは、まさに自分たちが主体になって(!!)勝ち取ったロジカルな勝利と呼ぶに相応しい勝ち点3ではあった。

とはいっても、苦労させられたのも確かな事実。

ということで、その、いくつかの「苦労シーン」をビデオで確認しながら、そこに内包されているコノテーション(言外に含蓄される意味)にアタマを巡らせるのも一興だぜ。

さて次は、勝負のACL(広州恒大戦)だ。いまから楽しみじゃありませんか。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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