湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第30節(2017年10月21日、土曜日)

 

今日は2試合を「NHKの総合とBS」で観戦せざるを得なかった・・(サンフレッチェvsフロンターレ、0-3)、(マリノスvsアントラーズ、3-2)

 

レビュー
 
昨夜(10月20日の金曜日)、等々力で行われた「J2」。

横浜FCvs町田ゼルビア戦だったけれど、その帰り、予想外の雨に祟(たた)られてしまった。もちろん帰宅したときには全身ずぶ濡れ。

その後、濡れたまま、短くコンピュータに向かって用事を済ませたんですよ。その間の20分くらいがよくなかったらしい。

その後、ブルッときたので、(監督会見のときに歓談した)暫定監督を務めた奥寺康彦には悪いけれど、コラム執筆をパスし、そのままベッドにもぐり込んだ。

奥寺康彦と私の関係については、「My Biography」シリーズで書いたコラム(その12345)を参照して下さいネ。

そして今朝・・

こりゃ、ダメだ・・

ということで、テレビ観戦という体たらくに陥ってしまった次第なのです。フ〜〜ッ・・

ではまず、フロンターレから・・

エドゥアルド・ネット、家長昭博が出場停止。そして大島僚太と阿部浩之だけじゃなく、この試合では、スーパーGKチョン・ソンリョンもケガを負ってしまった。

でも・・

そう、そんな厳しい状況で、それもサンフレッチェのホームで、よく勝った。

実際のゲーム(&勝負)の流れにも、厳しいモノがあったんだよ。彼らは、何度もサンフレッチェに決定的なチャンスを創られたんだ。

でもそんな現実は、結果の数字には表れてこない。

とはいっても、両チームが創りだしたチャンスまでのプロセスと、(つかみ所のない!?)決定力というファクターの「内実」には、確かな「差」があった。

そう、仕掛けのコノテーション(言外に含蓄される意味)では、明らかにフロンターレが優位に立っていたんだ。

人とボールの動きや攻守ハードワークの内実、また攻守アクションの連動性(イメージシンクロの質)という視点でも、フロンターレに一日の長があったというわけなんだよ。

でも・・

そう、勝負の流れという視点じゃ、サンフレッチェ側に、「タラレバの悔しさが残った・・」というのも事実だったんだ。

ということで、リーグ優勝を争うフロンターレに一言・・

彼らは、「こんな厳しい状況」でも、しっかりと結果を残せるまでに、究極の心理ゲームであるサッカーの内容が充実してきていると思う。

前節では、「あんな逆境」から、スーパーシュート三本で大逆転勝利をもぎ取ったわけだけれど、それにしても、エウシーニョと小林悠の「エイヤッ!」っていう爆発的な(フッ切れた!?)心理パワーの為せるワザだった!?

とにかく・・

今のフロンターレが、「美しく勝つ・・」という、すべてのサッカー人が志向すべき究極のターゲット領域に入りつつある・・っちゅうことが言いたかった筆者なのであ〜る。

熱にうなされている!?

うん・・そうかも・・へへっ・・

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さて、マリノス対アントラーズ・・

何か、異様なサッカーゲームを観たような・・

そう、不思議な感じのゲーム&勝負プロセスが、テレビ画面を凝視する私の目の前で展開されていた・・っちゅう印象が残ったんだよ。

まず・・

何といっても、マリノスの、不思議な(幸運な!?)2点リード。

そして・・

マリノスが、押し込まれ「過ぎ」という変なゲーム展開に陥っていったこと。

押し込まれ「過ぎ」の展開・・

もちろんマリノス守備は、とても強い。

彼らがブチかましつづけた、忠実なチェイス&チェックとマーキングをベースにした、次、その次のカバーリング網は、賞賛に値する。

リーグでもっとも失点の少ないチーム・・というのも頷(うなづ)けるじゃないか。

そんな彼らだから、マークを外されてスペースへ入り込まれたりなど、たしかにピンチの流れはあるけれど、それでも、最後の瞬間には「常に足が出る」という、玄人好みの堅実ディフェンスは健在だったんだ。

たしかにソレは、見応え十分だった。

でも、そんな守備に対して、この試合でのマリノス攻撃は、度を越して「後ろ向き」だったんだ。

そう、ボールを奪い返してタテへ送り込んでも、まったくといっていいほど、「その先」へ進んでいけなかったんだから。

伊藤翔、マルティノス、バブンスキーが張る前戦が、あまりにも貧弱だから、それも仕方なかったのかもしれない。

何せ、この三人は、まったくといっていいほどボールをキープできないんだから。

たしかに、戻りが速く、協力プレスが強烈なアントラーズ守備がとても強かったことは認めるけれど、それにしても、あまりにも無様なボールロストじゃないか。

それじゃ、後方からのサポートだって、勢い(闘う意志!)を加速させられない。

特に伊藤翔は、いったい何を考えてサッカーをやっているのか・・ってな疑問符がつく。

ポストプレーが出来ないのならば、少なくとも前戦からのディフェンスをしっかりやることで、より高い位置で、味方にボールを奪い返させる工夫をすべきなのに・・

たしかに先制ゴールは見事だったけれど、それ以外は、まったく消えてしまっていた。

たまに見掛けても、自分の2歩先で相手がボールを持っているのに、まったくチェイスする気配もみせない。

観ていて、チト腹が立った。

また、マルティノスとバブンスキーだけれど、たしかにスキルのレベルは高いけれど(マルティノスは足も速い!)、でも「そこ」でしっかりとボールをキープできなきゃ、味方のバックアップを「モティベート」できるはずがない。

そしてマリノスは、まったくといっていいほど(人数を掛けて!)攻め上がることができず、アントラーズに押し込まれつづけるんだよ。

そんなサッカーを観ていて、「醜さ」まで感じてしまった。

たしかに流れのなかでのピンチは、前述した「老練な闘う意志」がうまく連動しつづけていたことで抑えられてはいたけれど、結局は、セットプレーから同点にされてしまった。

ところで、この「押し込まれつづける無様なゲーム展開・・」というグラウンド上の現象。

それは、マルティノス、バブンスキーが交替してから、急激に好転することになるんだ。

そう、遠藤渓太と扇原貴宏がグラウンドに登場してから、その「無様なサッカー」が急にポジティブに回るようになったんだよ。

言っているのは、ボールを奪い返したマリノスが、しっかりと人数を掛けて人とボールを動かせるようになったことだよ。

そんなサッカーが出来るようになったからこそ、アントラーズ守備ブロックも、少し下がり気味になっていったっちゅうわけさ。

また、伊藤翔が(やっと!)グラウンドを出てからは、もっとサッカーがよくなっていった。

たしかに今のマリノスには、齋藤学、ウーゴ・ヴィエイラなど、ケガ人が多い。

だから、そんなメンバー構成も仕方なかったのだろうけれど、それでも私は、「意志のない怠慢プレー」は、プロにあるまじき背信行為だと、憤っていたのさ。

ということで、最後にアントラーズについても少しだけ・・

以前に、何度も書いたと思うけれど・・

彼らは、とても優れたサッカー選手を備えた強いチームなんだよ。

だからこそ、より攻撃的にゲームのイニシアチブを握りながら、人数を掛けたダイナミックな「上下動」を繰り返すことで、「美しく勝とうとする積極サッカー」を志向すべきだと思うわけだ。

そうすれば彼らは、日本サッカーの、完璧なイメージリーダーとして、誰からも尊敬され、憧(あこが)れられる存在になるっちゅうわけさ。

アントラーズの勝負強さ・・!?

そりゃ、あれほど高い能力をもったプレイヤーたちが、「アントラーズの伝統的なサッカーイメージ」をとことん共有しながら(攻守にわたるイメージングを深く共有しながら!)一つのユニットとしてサッカーを構築していくわけだから、勝負に強いのは当たり前でしょ。

このタイプのディスカッションは、もう50年もまえから、フットボールネーションのプロの現場で、口角泡を飛ばしながら繰り返されてきたモノなんだよ。

そう、攻撃的に・・、積極的に・・

イビツァ・オシムが言ったように、そんなリスクチャレンジ姿勢があってはじめて、サッカーは進化し、深化していくモノなんだ。




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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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