湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第4節(2017年3月19日、日曜日)

 

美しく勝とうとする高質サッカーが一敗地にまみれそうになったけれど・・(ガンバvsレッズ、1-1)

 

レビュー
 
フ〜〜ッ・・、観ていて、ホントに疲れた。

だから、愛車のオートバイで少し都内を走り、原宿にある、行きつけのスタバで美味しいコーヒーを飲んでから書きはじめることにした(実は、スタバでラップトップを開けた)。

さて・・ということで・・

それにしてもガンバの今野泰幸は、素晴らしい選手だ。そのことを再認識させられた。

もちろん、誰もが認めるスーパー汗かき(ハードワーク)ファイターだけれど、それだけじゃなく、実は攻撃でも、(ココゾという時に!!)創造的で決定的な組織プレーを魅せてくれる。

もちろんドリブル突破ではないけれど、とにかく彼は、ほんの「チョットしたところ」で勝負を決められる選手ということなんだろうな〜。

そのバックボーンは、言わずと知れた、ボールがないところでの動きの量と質。

そう、彼の、(オレにとっての!)隠されたあだ名は、日本を代表する意志のプレイヤー・・なんだよ。へへっ・・

この、「ほんのちょっとしたところで勝負が決まる・・」ってなテーマについては、「The Core Column」でつい最近アップした、「このコラム」「あのコラム」をご参照アレ。

それにしても今野泰幸。

彼の、攻守にわたる(創造的な!!)ハードワークは、若い選手にとって、これ以上ないほど価値のあるイメージトレーニング素材じゃありませんか。

日本サッカー協会には、「今野泰幸が創造する価値」という視点で、誰もが明快に分かり、シェアできるような高質(映像!?)レポートをまとめて欲しいね。

サッカー用語の(変な!)指針を出したり、これまでの「伝統を積み重ねる努力」を踏みにじるような興行に現(うつつ)を抜かすよりも・・ね。

へへっ・・

あっと、今野泰幸から、変な方向へディスカッションがブッ飛んでいきそうになった。

ということでゲーム内容。

このゲームについては、「美しいサッカー」が、ガチガチの「戦術サッカー」にやり込められそうになった・・という視点で分析するのが正解だろうね。

そう、「美しく勝つ」というコンセプトを突き進むレッズが、ガンバが(正当に!!)創りだした「ワンチャンスのピンポイントシュート」に沈められそうになったんだよ。

この、すべてのプロコーチが志向すべき「美しく勝つサッカー」というテーマについても、「The Core Column」で発表した、「こんなコラム」「あんなコラム」をご参照あれ。

もちろん、ガンバが次元の低いサッカーを展開していた・・というわけじゃないよ。

そりゃ、アデミウソンや倉田秋という「スピーディーな天才」と、長沢駿という高さとパワー(彼は足許プレーも良くなっている!)がいるんだから、オレだっ て、(相手がレッズという強い相手だからこそ!)特徴ある個の才能を最大限に活用する「勝負サッカー」を採用するかもしれない。

でも私は、このところのガンバが展開している高質な攻撃サッカーからすれば、(昨夜のFC東京vsフロンターレ戦のように!?)互いに人数を掛けて攻め合うような、内容的にも互角でエキサイティングな勝負マッチになるかもしれないと予想してもいたんだ。

このところのガンバは、まさに完璧にイニシアチブを握りつづける「強豪のイメージリーディングサッカー」を魅せつづけていたわけだからね。

でも、まあ、相手によって、ゲームの内容が変わってくるのも当然の成りゆきではあるよな。

この試合、たしかに守備は互角だったけれど、攻撃の「内実」では明確な差があったことは確かな事実だったよね。

そのことは、選手たちが、もっとも強く体感し、記憶タンクに収納したはずさ。

この攻撃での差・・

統計の数字に惑わされちゃいけないけれど、それでも、レッズが、ガンバの4倍もシュートをブチかました(そのうちの多くがウラの決定的スペースを攻略していた!)という事実は、まず押さえておかなきゃいけない。

そして、そこから、シュートへ至るまでの(組織サッカーの量と質を明確に示している!)仕掛けプロセスを深掘りしていくっちゅうわけだ。

そのプロセスで、もっとも重要な目標イメージは、(前述した)相手の背後スペースを攻略していくこと。

そのスペースの攻略についても、「The Core Column」で以前に発表した「このコラム」を参照して欲しいけれど、そこで展開したディスカッションは、その攻略プロセスには、大きく分けて「2種類」ある・・という視点。

一つは、勝負ドリブルで相手を抜き去って置き去りにし、スペースへ入り込んでいくプレー。

そしてもう一つが、パスを(スペースで!)フリーで受けるプレー。

ガンバには、前述したアデミウソンと倉田秋という「天才」がいる。だから、その才能を、最高効率で「使い切ろう」とするのは、ゲーム戦術の基本だよね。

それに対してレッズは、あくまでも、ダイレクトパス・コンビネーションを多用する、(美しい!)組織パスサッカーに徹する。

そんなチーム戦術コンセプトがチームのなかで深く理解され、徹底されているからこそ、人とボールが、スムーズに動きつづける。

もちろん、攻守ハードワークという組織サッカーにとっての絶対的な基盤を、これ以上ないほど充実させているからこその「活発な人とボールの動き」ではあるわけだが・・。

今日は、スタジアム観戦ではなかったから、個々のプレイヤーについてコメントするのは止めようと思う。

でも・・

そう、青木拓矢と阿部勇樹で形成するダブルボランチの、攻守にわたる抜群の機能性には、ホントに目を見張らされた。

またラファが魅せる「組織プレーと個人勝負プレー」の、とてもハイレベルなバランスや、興梠慎三の、動き回ってボールに触ることで組織サッカーを「加速させる」チームプレーと、最終勝負でのココゾの勝負プレー。

両サイドバックのフッ切れたドリブル勝負(まあ、この試合では、チト抑えられ気味ではあったけれど・・)。

そして何といっても、縦横無尽に動き回ってボールに触り、「そこ」から、効果的で危険な組み立てをリードしつづける柏木陽介。

そして、もっと言えば、そんな前戦選手たちが、活発に、タテのポジションチェンジを繰り返すシーン(まあ・・ゼロトップ気味のポジションなし攻撃)にも、ものすごく頼り甲斐を感じていた筆者なのだ。

タテのポジションチェンジは、明確なリスクチャレンジでもある。

でも選手たちは、互いに信頼し合っていることも含めて、そんな勇気ある組織プレーを展開しつづけられる。

そう、レッズは、将来の進化と深化につながる、強烈な「意志のサッカー」を展開しているんだよ。

その視点でも、監督のミハイロ・ペトロヴィッチに、心からの拍手を送っていた筆者なのだ。

あっと・・選手・・

もちろん西川周作も、スリーバックも・・

この試合じゃ、全員がヒーローだった。

まったくツキに見放された「ゲーム展開」だったわけだからネ、そんなゲームを引き分けに持ち込めたことは、自信と確信という視点も含めて、様々な意味合いで「次」につながる・・でしょ。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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