湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第28節(2018年9月30日、日曜日)

 

どうしても、レッズが魅せつづける、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションのバックボーンを(その触りだけでも!?)ディスカッションしたかった・・(レッズvsレイソル、3-2)

 

レビュー
 
・・いやいや・・

・・オレ達だけじゃなく、フロンターレだって、素晴らしいコンビネーションを魅せているよ・・

私の質問に、オズワルドが、意の一番に、そんな反撃をブチかました。

私の質問は、こんな感じだった。

・・この試合でも、組み立てベースの仕掛けプロセスでは、レッズの人とボールの「動き」が目立っていた・・

・・レイソルは、その動きについていけず、前でボールを奪い返そうとするあまり(!?)、ブロックごと置き去りにされるシーンも目立っていた・・

・・またレッズは、最終的な仕掛けシーンでも、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションで、レイソルゴール前の決定的スペースを攻略していた・・

・・素早く、正確にボールを動かすなかで、スパッと、決定的スルーパスを決めてしまったり・・

・・そんな決定的シュートシーンは何度かあったけれど、そんなふうに(とてもスマートに!?)決定的スペースを攻略できるのは、いまの「J」では、レッズが代表格だと思う・・

・・そのテーマについて、コメントをいただけないか?・・

もちろんレッズは、カウンターシーンや、一発ロング(サイドチェンジ!)最終勝負などでも、素晴らしく効果的な仕掛けプロセスをブチかますよ。

でもここでは、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションによる決定的スペースの攻略プロセスをディスカッションしたかったのさ。

でも・・

そう、オズワルドは、私の質問が終わるなり、間髪入れずに、冒頭のような「反撃」で存在感を魅せたっゅうわけだ。

いいね〜〜・・

だから私も、思わず・・

・・そりゃ、そうだ・・たしかに、そのタイプの仕掛けじゃ、フロンターレも素晴らしいよね・・

・・なんて、声を出してしまった。

もちろん、スーパーな「コミュニケーター」である羽生直行さんが、そんな「行間発言」まで、すかさず通訳してくれるんだよ。

そんなだから、「周り」とのコミュニケションの量と質が、とても効果的にアップするのも道理。ホント、オズワルドは、素晴らしい「パートナー」に恵まれた。

あっと・・

オズワルドは、人とボールの動きというテーマについても、(イメージのシンクロもテーマに!?)しっかりと日常トレーニングのなかで強調している旨のコメントを出してくれたよ。

でも・・

そう、そんな「対話」の後を受け・・

後藤健生さんが、フォローするように、こんな素敵な質問をしてくれたんだ。

・・私も、レッズのコンビネーションが、魅力的で効果的だと思うのですが・・

・・でも、オズワルドさんがアントラーズを指揮していた当時は、そんなコンビネーションのイメージは、あまり目立たなかったと思うのですよ・・

・・それは、人的な要素によるモノなのか、他の要因があったのか??・・

とても良い質問だと思いました。

そしてオズワルドさんは、例によって真摯に、眉間にシワを寄せながら、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたんだ。

曰く・・

・・当時のアントラーズでは、対戦相手が、そんなに積極的に攻め上がってこなかったんだ・・

・・でも、レッズの場合は、ほとんどの相手が、積極的に仕掛けてくる・・

・・そこには、そんな背景要因があったのかもしれない・・

フムフム・・。

深いネ〜〜。

このコメントからピックアップするのは、まず何といっても、「当時は、アントラーズに対して積極的に攻め上がってくるチームが多くなかった・・」という事実。

ここでは、アントラーズに対し、中盤の高い位置からプレスを掛けて積極的にボールを奪い返そうとするチームが多くなかった・・と解釈しましょう。

そして相手は、リトリートし、人数をかけて守備ブロックを固める。

だから、そこへ、人数をかけたコンビネーションで仕掛けていくというのは、相手が狙っているカウンターへの対処という視点からも、そんなに簡単なコトじゃなかった。

そう、今のレッズのように、人とボールを、素早く、大きく「動かし」つづけることで、前からボールを奪おうとする相手のプレスの勢いを「かわす」必要性が、高くなかったということだね。

そして、ジックリと落ち着き、一発ロングやクロス、はたまたセットプレーなどを駆使してゴールを奪う。

そしてその後は、例によっての「アントラーズの堅牢ディフェンス」が、リードされた相手の反撃を封殺してしまうっちゅうわけさ。

フムフム・・

ところで・・

オズワルドの発言に、私は、もう一つの重要なディスカッションテーマを見出していたんだ。

それは・・

当時と比較した場合、リーグ全体の、攻守にわたる「仕掛けの積極性」が、とても高くなっているというテーマ。

そう、ボール奪取プロセス(守備)でも、シュートへ至るプロセス(攻撃)でも、選手たちのアクションが、アグレッシブなモノへと進化しているということなんだ。

いまの「Jリーグ」では、リトリートした守備ブロックをベースに、相手の仕掛けを(そこでのミスを!?)待ってカウンターを仕掛けていく・・なんていうタイプの、消極的で受け身のやり方(チーム戦術)は、影を潜めているんだよ。

だからこそ、スペースを攻略していくために、より活発に、人とボールを動かすことが大事になってくる・・っちゅうわけさ。

とはいっても・・

そう、イニシアチブをめぐる「せめぎ合い」のなかでは、もちろん、互いに守備ブロック組織を固めるっちゅう時間帯もあるよね。

このゲームでも・・

ボール保持率ではレイソルを上回ったレッズだったけれど、レイソルの強力な攻めを安定して受け止めるために、しっかりと守備ブロックを組織し、連動性を効果的に機能させるといった時間帯もあったわけさ。

あっと・・

当時のアントラーズの話題だった。

そう、堅牢に組織し、機能している相手守備ブロックを、どのように崩していくのか・・。

もちろん、どのチームにとっても、(決定的)スペースを攻略していくのは簡単じゃない。

まあ、もちろん、レイソルのオルンガのような、優れたスピードとパワーを備えた(またスキルも十分な!)センターフォワードや、クリスティアーノや伊東純也のような、スーパな「個の勝負プレイヤー」がいれば、一人でも決定的スペースを攻略できちゃうだろうけれどネ。

でも、やっぱりサッカーの基本は「パスゲーム」。

だからこそ、人とボールの動きで、堅牢に機能している相手守備ブロックの、(イメージングの!!)バランスを崩してスペースを創りだし、そこを突いていくような、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションが求められるのさ。

この試合では・・

そんな、「ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションによるスペース攻略・・」という視点で、レッズに、明確に、一日以上の長があった・・というのがフェアな評価だと思う。

だから、このコラムでは、そのテーマにスポットを当てたかった・・っちゅうわけさ。

そうそう、それ以外にも・・

柏木陽介、興梠慎三、武藤雄樹、長澤和輝、両サイドバック等による、攻守ハードワークとリスクチャレンジあふれる実効プレーについては言うまでもないとして・・。

交替出場した阿部勇樹の目立たない汗かき(カバーリングや協力プレスでの!?)ファインプレー・・とか、前節でもピックアップした青木拓矢の、攻守にわたる実効プレー・・とか、はたまた最終ライントリオの、タイミングよい攻め上がりとか・・

ピックアップしたいテーマは山ほどあるけれど・・

まあ、今日は、「長すぎる感」があるから(!?)、こんなところで締めましょうかね。

あっと・・

ゴメン・・最後に、もう一つだけ・・

大住良之さんによる、「攻めに質問が集中しているから、最後に、守備についても質問させて下さい・・」っちゅう前置きではじまった(とても大事なポイントを突いた!?)質問。

秀逸だったネ。

そう、この試合でレッズが喫した失点(ミス)は、見方によっては、チト無様にも映るような低級なモノだったんだよ。

先制ゴールは、不用意なボールロストから、次、その次と、スマートにパスをつながれ、最後は、ダイレクトで決定的スルーパスを通されてしまった。

また二つ目の失点(レイソルの同点ゴール!)は、左サイドの中盤でボールをもったクリスティアーノからの、まさに「アバウト」な放り込みを、レイソルの瀬川祐輔に、身体が伸びきったヘディングで「流し込まれた」モノだった。

そこでのミス・・

先制失点シーンでは、ダイレクトのスルーパスを阻止するアタック反応が遅れたことと、抜け出したレイソルの瀬川祐輔をフリーで「行かせて」しまったこと。

また後半の同点ゴール場面では、安易に、クリスティアーノの放り込みを許しただけじゃなく、ゴール前での瀬川祐輔へのマークが甘くなったこと。

まあ、ビデオを見直すことで、「効果的に!!」反省することが肝要です。

スミマセン・・チト書きすぎ・・次からは、短くまとめられるように頑張りま〜す・・

でも・・オレ・・文章家じゃないから・・サ・・

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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