湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2018年4月21日、土曜日)

 

このゲームでは、2種類の仕掛けプロセス(傾向)というテーマをピックアップしましたよ・・(フロンターレvsアントラーズ、4-1)

 

レビュー
 
このゲーム。

私は、アントラーズによる、積極的にイニシアチブを握りつづける攻撃的サッカー「も」堪能できればいいな〜・・ってな期待を胸に、等々力へ向かったんですよ。

そう、日本を代表する強豪同士のエキサイティングな激突・・

でも・・

そう、結局は、ホームのフロンターレが大勝を収めるっちゅう結果に落ち着いたんだ。

もちろん、リードされたアントラーズは、素晴らしく積極的なディフェンス(ボール奪取プロセス)を絶対的コアに、「前へ」仕掛けつづけた。

そこでアントラーズが放散しつづけた「闘う意志のオーラ」。それは、それで、迫力満点だった。

でも私は、どうも、アントラーズの仕掛けが、「単調」に過ぎるかもしれない・・とも感じていた。

アントラーズ攻撃が、フロンターレ守備ブロックの「ウラスペース」を攻略できたシーンは、数えるほどだったんだよ。

それに対してフロンターレは、カウンターも含め、「ここぞっ」のチャンスを逃すことなく、どんどんと加点していった。

だから・・

そんな「グラウンド上の現象」が内包していたコノテーション(言外に含蓄される意味)を探ろうと思ったわけさ。

でも、ここでは、視座を広げ過ぎるのではなく、一つのテーマに絞り込んで、ディスカッションを展開することにしますよ。

それは、「スペース攻略の手段には、大きく分けて二つある・・」ってなテーマ。

言うまでもなく、「それら」は、ドリブル勝負と、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーション(パス攻撃)だよね。

でも、もちろん、その二つの仕掛けタイプを分けて考えることなんて出来ない相談だ。

そう、それらは常にミックスしているんだよ。

そして、だからこそ、仕掛けプロセスが危険なモノになるっちゅうわけさ。

とはいっても、大きな傾向は・・

そう、それぞれのチーム(攻撃陣)によって、また監督によって、「大きな傾向」は、見て取ることができるんだ。

ということで・・

その、大きな傾向として・・

・・フロンターレの最終勝負は、「組織パス」に拠る傾向が強い・・

・・それに対して、土居聖真、鈴木優磨、金崎夢生といった「強者」を擁するアントラーズは、「個の勝負に拠るスペース攻略」を仕掛けていくトレンドが強い・・

このテーマについては、「The Core Column」で、かなり前に「こんなコラム」を発表したことがあるから、興味がある方は、そちらも、ご参照ください。

ということで、このゲームでピックした具体例は・・

両チームの仕掛けプロセスが、「そんな大きな傾向」にあることが如実に感じられたシーンが、フロンターレの2点目と4点目のシーンだったんだ。

それに対して・・

フロンターレ先制ゴールは自殺点だったし、3点目は、アントラーズ小田逸稀のGKへのバックパスミスを、忠実に「走り抜けた」牛若丸が、かっさらい、ズバッと、アントラーズGKクォン・スンテの股を抜いてゴールへ蹴り込んだモノだった。

まあ、とはいっても、その二つのゴールにして「も」、しっかりと走り抜けたことが勝因だったという視点で、同じ範疇(はんちゅう)に属するモノだったかもしれないけれど・・

あっと・・脱線・・

とにかく・・

2点目を決めたエドゥアルド・ネットにしても、ダメ押しの4点目を決めた大久保嘉人にしても、マークするアントラーズ守備の「視線」を盗んで、決定的フリーランニングをブチかましたコトで生み出したゴールだったというわけだ。

そこでは、(日頃のトレーニングで培われた!?)フロンターレ選手たちの決定的「ラストパス」のイメージが、ピタリと「シンクロ」した。

そして私は・・

そう、そのシーンを観ながら、こんなコトに思いを馳せていたんだよ。

・・そうか・・

・・アントラーズ守備が、フロンターレのパスコンビネーションで決定的スペースを攻略されてしまったのは、彼らの仕掛けが、どちらかといったら、組織コンビネーション(パス)よりも、ドリブル勝負に拠るからなのかもしれない・・

・・そう、アントラーズ守備は、フロンターレがブチかます、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションの「リズム」に慣れていないから、どうしても、肝心なタイミングでボールを観てしまうことで、マークを振り切られてしまった・・ということなのかもしれない・・

・・もちろんフロンターレ選手たちは、そんなアントラーズ守備の「傾向」を見抜き、彼らがボールを見た瞬間を「盗んで」爆発ダッシュで抜け出した・・

フムフム・・

その2点目、4点目ゴールを観ながら、そんなコトに考えをめぐらせていた筆者だったんだ。

もちろん仕掛けは、ドリブルあり、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションあり・・ってな感じで、常に「変化に富んだモノ」じゃなければいけないよね。

そこで、アントラーズ・・

攻撃的にゲームのイニシアチブを牛耳るような、魅力的な積極サッカーへ「イメチェン」を果たしつつある彼らの仕掛けには、まだ、そんな(組織と個の高質なバランスという!?)課題があるのかもしれない・・なんて思っていた筆者なのであ〜る。

でも私は、大岩剛アントラーズの「イメチェン・チャレンジ」を心から支持しますよ。

ガンバレ〜、大岩アントラーズ〜〜ッ!!・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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