湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第10節(2020年8月15日、土曜日)

 

コンサドーレが前半のパフォーマンスを(後半でも)増幅させていれば、とても面白い勝負になったとは思うけれど・・まあ、こんなコトもあるさ・・(コンサドーレvsフロンターレ、1-6)

 

レビュー
 
・・そうだな〜・・

・・とにかく前半は、オレが期待していたような、ポジティブな内容のゲームになったと思う・・

・・我々は、しっかりとシュートチャンスも創りだしたし、フロンターレの攻撃も、うまく抑え込めていたわけだから・・

・・でも、一発のセットプレーから失点してしまった・・

・・とにかく前半は、とてもよく闘えていたと思うんだ・・

・・でも後半は・・

・・そう、立てつづけに失点してしまったことで、立て直せなくなってしまった・・

ゲーム直後のダゾーン・インタビューで、ミハイロ(ペトロヴィッチ)が、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。

そう・・まさに、そういうことだと思う。

わたしは、ミハイロと同じように、前半のゲーム内容から、後半のコンサドーレが魅せるはずの「巻き返し」を期待していたんだ。

でも、まず前半のゲーム展開から・・

そこでの基本的なディフェンス姿勢だけれど、両チームともに、とても注意深く、ボールホルダー(次のパスレシーバー)へ、寄せていった。

たぶん、攻撃的なサッカー(美しいトータルフットボール)を標榜する両チームだから(たがいに、相手のサッカーをレスペクトしているから!?)、両チームともに、注意深くゲームに入っていったんだろうね。

ところで・・

彼らがブチかます仕掛けの基本アイデアだけれど、それって、こんな感じ!?・・

両チームともに、(誘い込まれるように!?)ボール奪取アタックを仕掛けてくる相手ディフェンスの「逆手を取って」しまうのが上手いよね。

そう、相手のボール奪取ディフェンスアクションの「勢い」に乗じ、それを「逆手に取る」ように相手を置き去りにし、人とボールの動きの「リズム」を加速していくんだよ。

まさに、相手のチカラを逆利用する「柔道の空気投げ」。

でも、この試合では・・

そう、そんな「スピードアップのコツ」を熟知している両チームだからこそ、とても注意深くゲームに入っていったということなんだろうね。

まあ、とてもレベルの高い「静的な組織サッカー」を魅せたっちゅうわけさ。

でも・・

そう、ボールを失った直後の(素早い攻守の切り替えと)チェイス&チェックやカバーリング(守備)の内実では、フロンターレに一日の長があったとは感じていたけれど・・さ。

そんな感じで、前半は、ある意味、「とても静的にゲームが進行していった」っちゅう次第。

でも・・

そう、「先制ゴール」という激烈な刺激・・

それによって、フロンターレ選手たちのプレーが、「本来の意志のダイナミズム」にもどっていったんだよ。

そう、攻守ハードワークとリスクチャレンジあふれる、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションが光り輝きはじめたんだ。

その絶対ベースは、もちろん、守備にあり。

いやいや・・

・・ここで、フロンターレが魅せる、高質な組織ディフェンスについて語ろうとは思わないけれど・・

その素晴らしい守備が、人とボールが動きつづける「美しい質実剛健サッカー」の絶対バックボーンだっちゅう事実だけは、再度、ご認識あれ〜。

あっ・・失礼しました。

そして・・

そんなゲーム展開を経て、徐々に、(フロンターレのペースアップに刺激された!?)コンサドーレのサッカー「も」、活性化していくのも道理だったんだ。

だから私は、後半のゲーム展開に対して、大いなる期待を抱いていたっちゅうわけだ。

でも・・

そう、後半の立ち上がり、コンサドーレのジェイが登場したところから、何か、不吉な予感と雰囲気が漂いはじめたんだ。

また後半14分には、アンデルソン・ロペスまで登場する。

この二人の外国人選手は、まったくといっていいほど、前線からのチェイス&チェックやカバーリングに精力を傾けないんだよ。

それじゃ、前半では機能していた、コンサドーレの「トータル・フットボール」が機能しなくなるのも自明の理だったね。

そんな、自己中心イメージに凝り固まった二人の外国人選手に比べ・・

コンサドーレの右サイド、ルーカス・フェルナンデスや、フロンターレのトップ、レアンドロ・ダミアンがブチかましつづけた攻守ハードワークとリスクチャレンジは、素晴らしいの一言だったじゃありませんか。

ところで・・

その、レアンドロ・ダミアンだけれど・・

フロンターレに参加した当時は、攻守ハードワークを中心に課題が山積みだったんだよ。

もちろん、プロコーチ鬼木達がイメージする、「活発な人とボールの動き・・」という視点でもね。

そんな、レアンドロ・ダミアンが・・

そう、「ここまで」レベルをアップしちゃうんだから、鬼木達さんには、拍手しかない。

ということで、後半のコンサドーレは・・

「部分的に機能する個人勝負プレーと組織サッカー」が、まさに「ブツ切り」状態で、まったく「リンク」しなくなっていたっちゅうわけさ。

それに対してフロンターレ・・

交替出場した三笘薫と小林悠が、抜群の存在感を発揮する。

旗手怜央と三笘薫は、オリンピックの候補コンビだよね。

以前どこかの国際トーナメントで観たことがあったけれど、これほどの進化を遂げるとは・・

最後に・・

ゴールという激烈な刺激・・というテーマで締めましょうか。

それは、両チームにとって、様々な意味合いの刺激だよね。

だから、ゴール(失点)によって、両チームのプレーが活性化するのは、当たり前なんだ。

もちろん、失点で落ち込んでしまったり、ゴールで浮かれ過ぎてしまうようなチームは、テーマ外だけれど・・さ。

ということで、このテーマ抽出の「視点」・・

この「刺激」によって、もっとも活性化するのは何か・・という視点かな。

そう、言わずもがなの守備コンテンツ(意志のポテンシャルアップ!?)。

また攻撃でも、ボールがないところでのサポートの動きの量と質がアップすることで、人とボールの動きが活性化し、スペース攻略のコノテーション(言外に含蓄する意味)に実が詰まっていく・・という効果もある。

そう、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションにおいても、より有利なカタチでボールを受けたドリブラーの勝負コンテンツにしても・・

それにしても、コンサドーレは「やられ過ぎ」たね。

特に後半は、ボールの失い方が悪かっただけじゃなく、前述した、外国人の二人が、最前線からのチェイス&チェックやカバーリングに精を出さなかったことで、安易に、フロンターレのカウンターを許してしまった。

まあ・・

サッカーだから、「こんなこと」は日常茶飯事だし、ミハイロ・ペトロヴィッチと、杉浦大輔コーチのコンビだから、すぐにでも立て直すでしょ。

期待しましょう。

それにしても、鬼木フロンターレは、強いネ〜〜・・

家長昭博と大島僚太を欠いても、このパフォーマンスだからね。

前述した、レアンドロ・ダミアンの(攻守ハードワークとリスクチャレンジ等も含む!)パフォーマンスアップでも体感できたけれど、プロコーチ鬼木達の「ウデ」は大したモノだ。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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