湯浅健二の「J」ワンポイント


2021年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(レポート日:2021年8月26日、木曜日)

 

攻守にわたる、究極の「主体性プレー」をぶつけ合う、素晴らしい「動的均衡マッチ」・・両チーム監督に、心からの拍手を・・(鳥栖vsマリノス、0-4)

 

レビュー
 

すごかったネ〜、キン・ミョンヒ鳥栖。

立ち上がりから、抜群の「勢い」で、(強烈な意識と意志とイメージングが込められた!)ボール奪取プロセス(守備)をブチかましていった。

そう、ゲーゲンプレスも含む前からプレス。

聞くところによると、キン・ミョンヒは、最初から、「前からプレス」をブチかます・・と、宣言していたようだ。

いいね〜・・キン・ミョンヒ。

相手が、「あの」強いマリノスだからこそ、選手たちのモティベーション(主体性プレーへの意識と意志レベル!)も天井知らずだったでしょ。

そして何度か、彼らの意図するカウンターが実を結びかけるんだ。

たしかに、前線で(!)ボールを奪い返して「ショート・カウンター」ってなトコロまで、マリノスを「ハメ込んだ」わけじゃない。

それでも、人とボールを、良いリズムで動かそうとするマリノスの「次の動き」を予測して仕掛ける、忠実そのものの前からプレスは、強烈の一言。

だから何度か、カウンターチャンス(ゴール機会)を創り出したっちゅうわけだ。

でも、残念ながら・・

ということで、外観的には、キン・ミョンヒ鳥栖が、自分たちが意図したゲーム展開で、勝負のイニシアチブを握っている・・って、映っていた部分もあったよね。

でも、実際には・・

ケヴィン横浜マリノスは、自分たちのサッカーに「ブレーキ」が掛けられているって感じていたはずなのに、そんな逆風をモノともせずに、盛り返していくんだ。

そう・・

彼らは、キン・ミョンヒ鳥栖がイメージするボール奪取プロセスの勢いに「輪を掛けたダイナミズム」で、ボール奪取プロセスの「勢い」を加速させていったんだ。

ケヴィン横浜マリノスでは、アンジェ時代と同じように、ある意味、「ポジションなし」のサッカーを志向している。

攻守にわたって、チャンスを見出した者は・・

(最前線プレイヤーが!)ゴール前まで戻って守備に就いたり、(サイドバックなどが!)最前線まで押し上げていくんだ。

それこそが、「主体性プレー」の真骨頂。

そこでは・・

前後のポジションチェンジが頻繁におこなわれる。

・・オイッ、オマエ、押し上げていけ〜っ、オレが戻っているから・・

・・なんていう、チームメイト同士の「あうんの呼吸」がある!?

ところで、主体性プレー・・

要は、選手たちが、積極的&攻撃的に、攻守の目的を達成するために(!!!)仕事を(ハードワークを!!)探しまくっている・・っちゅうこと。

守備の目的は、ボールを奪い返すコト。ゴールを守るというのは、単なる結果にしか過ぎない。

また攻撃の目的は・・

スペースを攻略し、シュートを打つこと。ゴールは、単なる結果にしか過ぎない。

ケヴィン横浜マリノスでは、誰一人としてサボらず、「オレがやるっ・・オレがいくっ!!」ってな、積極的&攻撃的マインドにあふれている。

だからこそ、彼らのなかでは、深い「相互信頼」が確立している。

もちろんキン・ミョンヒ鳥栖だって、その意味で、素晴らしいチームさ。

だからこそ・・

そう、同じコンセプトのサッカーじゃ、やっぱり最後は、個のチカラがモノを言うんだよ。

とにかく・・

ゲームが、究極の「動的均衡マッチ」へと「成長」していくのも道理だった。

観客の皆さんにとっては、特に前半の、両チームによる、「攻守イメージングと実効アクションのせめぎ合い」は、見所満点だったでしょ。

でも、一瞬の・・

そう、前半41分に、キン・ミョンヒ鳥栖が陥った「一瞬の集中切れ」!?

でも・・さ・・

GKを起点にした、「あの勢いのタテへの仕掛け」だから、そりゃ、一瞬「観て」しまっても仕方なかったかもね。

そう、ケヴィン横浜マリノスが魅せた、まさに必殺の「タテへの仕掛け」。

その「流れ」は、扇原貴宏の、GK高丘陽平へのバックパスから始まった。

相手(マリノスの)GKへ戻される、「長め」のバックパス。

そりゃ、キン・ミョンヒ鳥栖だって、「一息」つくでしょ。

でも、「その瞬間」がドツボにはまるキッカケだったんだ。

そのバックパスを受けた、マリノスGKの高丘陽平は、まったく「迷う」ことなく、攻め上がっていた右サイドバックの松原健へ、「ダイレクトで!!」長めのタテパスを通しちゃうんだ。

素早くトラップし、振り返る松原健。

その瞬間・・

レオ・セアラへのマークが甘くなっていたし、「前への意識」が高かった鳥栖ディフェンスも「前気味」にポジショニングしていた。

その状況で松原健は、迷わず、レオ・セアラへの、ビシッってなタテパスを通しちゃう。

また・・

サイドバックの松原健が、「そこ」にいたこと自体も、ケヴィン横浜マリノスの「サッカーの質」を象徴していたよね。

そして・・

そう、完璧フリーで「その」タテパスを受けたレオ・セアラは、まったくフリーで振り返り、鳥栖ゴールへ向けて、超速ドリブルに入るわけさ。

そのレオ・セアラへは、「仕方なく」前田大然のマーカーが、カバーリングに入る。

そして、最後の瞬間、レオ・セアラから、まったくフリーになった(!)前田大然にラストパスを送り込んだっちゅう次第。

もちろん前田大然の「落ち着いた」シュートは賞賛に値するけれど・・

とにかく・・

ケヴィン横浜マリノスが魅せた、「ある意味ポジションなしのサッカー発想」、そして「タテへのチャンスを見過ごさない集中力」などなど・・

この一連のプレーには、サッカーにおける、様々な意味で雌雄を決する「瞬間ファクター」が詰め込まれていたのさ。

堪能した・・

まあ、その後は・・

後半6分に、キン・ミョンヒ鳥栖の樋口雄太がレッドを喰らい、同時にレオ・セアラがPKを決めたことで万事窮してしまうんだよ。

そりゃ、「あの」全員守備・全員攻撃ってな究極ダイナミックサッカーのぶつかり合いだから、一人欠けるコトが大きな痛手になってしまうのは自明の理だよね。

ということで・・

わたしは、キン・ミョンヒ、ケヴィン・マスカットの両監督に対して、心からの拍手をおくっていた。

そう、両チームともに、攻守にわたる究極の「主体性プレー」をぶつけ合う、素晴らしい「動的均衡マッチ」を魅せてくれたんだよ。

あっと、リーグ優勝争い・・

まあ、書くまでもないか。

とにかく、お互い、これからのリーグ展開を、心から楽しみましょう。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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