湯浅健二の「J」ワンポイント


2024年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第3節(2024年3月10日、日曜日)

 

レッズは、徐々に「解放」されつつあると感じる・・対するミハイロ札幌コンサドーレは、例によって、「強豪のサッカー」を魅せてくれた・・継続こそチカラなり・・必ず結果は、ついてくる・・(コンサドーレvsレッズ、0-1)

 

レビュー
 
最終勝負プロセス・・

それが、このゲームでピックしたいテーマかな・・

そう、最終勝負の(危険な!)流れを創りだす「仕掛け」ってな感じ。

要は、勝負ドリブルか、ボールがないところでのアクションの量と質か・・ってな視点だね。

チト、分かりにくい!?

スミマセンね・・

ということで・・

前節までのレッズについて、優等生サッカーに陥っているって書いた。

そう、失敗したくないから、「エイヤッ!」の仕掛けが、出てき難くなっている。

たぶん、勇気のベースである、意識と意志パワーに欠けていたっちゅうコトなのかな。

そのコトもあったのか・・

マティアス・ヘグモは、このゲームでは、最終勝負の仕掛け人を、二人、入れ替えた。

前田直輝と興梠慎三。

もちろん前田直輝は、ドリブル勝負をブチかます。

その勢いたるや、まさに怒濤。

マークする相手も、その「勢い」に、受け身の心理に陥ってしまっていた!?

前半の立ち上がり、彼は、つづけて2本も、決定的なドリブルから惜しいシュートを放った。

そんな最終勝負の流れが、チームに「勇気」を与えないはずがない。

タテパスも、どんどん送り込まれるようになったんだ。

そして、そこで存在感を発揮したのが、もう一人の「刺激プレイヤー」、興梠慎三。

彼の、素晴らしいテクニック(スキル)と力強さに支えられたポストプレーは、衰え知らず。

だからこそ、後方からのサポートにも、勢いが乗っていく。

やっと、レッズが、本来の、積極的&攻撃的サッカーを取り戻しつつある・・

そんなコトを感じていた。

あっと、でもそれだけじゃなく・・

そんな「刺激プレヤー」たちは、その他にも、ポジティブ影響を与えていたんだよ。

そう、この二人に先発ポジションを奪われた(!?)、松尾佑介とチアゴ・サンタナ。

この二人は、後半になってから出場を果たすんだ。

先発した前田直輝は、ケガで退場し、その後、興梠慎三も、チアゴ・サンタナと交代した。

そして、この交替出場した二人が、抜群の、存在感を発揮するっちゅうわけだ。

先発した二人のプレーに刺激を受けた(危機感をもった)!?

そりゃ、そうだよ。

・・ヤツらは、素晴らしい最終勝負の流れ(仕掛け)を創りだしている・・

・・大変だ、このままだったら、ポジションを奪われちゃう・・

そんな、焦りね・・

そして、その危機感が、交替出場した二人を、爆発させるっちゅうわけだ。

まあ、「何かから解放した・・」とも、言えるかね。

松尾佑介は、勝負ドリブルを、チアゴ・サンタナは、興梠慎三に刺激を受けたような(!?)効果的で力強いポストプレーを魅せつづけるんだ。

そして、この二人で、決定的なゴール機会を、二つも創りだしちゃうんだよ。

まず53分の、ドリブルで突破した松尾佑介からの、鋭い(グラウンダー)クロスに、チアゴ・サンタナが合わせ「かけた」シーン。

わたしは、「アッ、追加ゴールだっ!!」って、安易にも、心のなかで叫んじゃった。

もう一つが、70分の、浮き球クロスシーン。

このシーンじゃ、チアゴ・サンタナの、ボールがないところでの(クロスを受けるスポットへの!)動きが秀逸だった。

最後の瞬間、チアゴは、スッ・・と、相手センターバック二人の「隙間」に入り込み、決定的なヘディングシュートを見舞ったんだ。

その時も、アッ!ってな心の叫びが・・

へへっ・・

あっと、最後の瞬間における、ボールがないところの動きが勝負を決めたというテーマだけれど・・

その視点で、前半31分に、酒井宏樹が、ブチ込んだ、スーパー・ヘディングゴールは、もちろん、外せない。

このシーンの、取っ掛かりは・・

CKから、相手ペナルティーエリア右サイドでポールを持ち、タメる、サミュエル・グスタフソン。

彼には、見えていた。

最後方から、ゴール前へ突っ込んでいく、酒井宏樹のフリーランニングが、見えていたんだ。

それは、それは、美しい決勝ゴールではあった。

さて、ミハイロ札幌コンサドーレ・・

この試合で「も」、素晴らしく積極的&攻撃的な、ダイナミックサッカーを魅せてくれた。

まさに、美しい質実剛健サッカー。

わたしは、内容的には、レッズと引き分けても、まったく異論がないと感じていた。

でも・・

そう、このコラムのテーマである、最終勝負の流れ(仕掛け)という視座では、課題が見えていた。

決して、彼らの仕掛けのコノテーション(言外に含蓄される意味)が、消極的だったわけじゃない。

彼らが攻めあぐんだのは、レッズのボール奪取プロセス(守備)の機能性が、素晴らしかったからに他ならない。

とにかくレッズは、攻守の切り替えが素早く、そして効果的だった。

そして、守備ブロックの構築も、素早く、効果的。

逆に、ミハイロ札幌コンサドーレは、その「早さ」を、うまく、スペース攻略プロセス(攻撃&仕掛け)でのイメージングに、採り入れられなかった!?

だから、前戦からの(レッズの)ゲーゲンプレス(プレスバック)で、攻撃スピードを、効果的にダウンさせられていたんだ。

もちろん、最後の仕掛けでは、しっかりとドリブル勝負をブチかますし、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションも、うまく機能させられていたと思う。

でも・・

ドリブル勝負&シュートは、迫力があったけれど、最後の「勝負パス」を、うまくゴール機会へ、結びつけられなかった。

ボールホルダーと、受け手の「イメージング・シンクロ」という、微妙で、ハイレベルなテーマね。

とはいっても、ミハイロ札幌コンサドーレが、同点&勝ち越しゴールを奪うのに、ノーチャンスだったなんてコトは、まったくなかったよね。

実際、まさに100%のゴール機会を創りだした。

86分のCKからの、田中宏のゴールチャンス。

また、後半ロスタイムに放った、ミドル弾・・等など。

コンサドーレは、最後の時間帯、そんな「タラレバ感性を抑え切れないシーン」を創りだしたんだ。

でも・・

まあ、仕方ない。

それでも・・

そう、このサッカー内容だったら、そのうちに、必ず結果はついてくる。

それだけは、確かだと思うよ。

ガンバレ〜、ミハイロ&Co.

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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