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2011_女子WM_10・・やっと統一感が出てきたブラジル・・また、あなどれないオーストラリアの実力・・(グループD)・・(2011年7月3日、日曜日)

フムフム・・、これで、決勝トーナメントに「いろいろなタイプのサッカー」が肩を並べることになった。その意味では、よかったのかな!? もちろんブラジルのことですよ。

 初戦では、オーストラリアのスーパーな組織サッカーに、まったく歯が立たない時間帯も多かったブラジル。そのゲームのコラムで、ブラジルが調子を落としている元凶は、諸刃の剣としての「優れた個の才能」にある・・と書いた。

 それでも、今日のノルウェー戦では、天才マルタに代表される個の才能が光り輝いた。ブラジルが、チームとして、個の才能を活用し尽くすことが出来るようになってきたということか?

 まあ、ノルウェー守備が、マルタやクリスティアーネといった才能を自由にプレーさせ過ぎたという面もあるけれど、それだけじゃなく、ブラジルが、個の才能を前面に押し出して仕掛けていく・・というイメージで統一されはじめたということを強く感じた。そうなったときのブラジルは、無類の強さを発揮するからね。

 やっぱりサ、どんなやり方でも、選手全員が・・一人の例外もない全員が、明確な一つのイメージ・ベクトル上にいれば(統一されたチーム戦術を徹底して追求していけば!)、どんなサッカーでも、魅力的なだけではなく、「結果」にも効果的に近づいていけるものなんだよ。

 ところで、いろいろなタイプのサッカー・・というテーマ。

 それは、下記の要素が、どのように、どのくらいのウエイトで、チーム戦術のなかで組み合わされるのかによって決まってくる。

 組織プレーの内容(ボールがないところでの動きの量と質、そしてプレーイメージ)・・個人の才能タイプと単独勝負プレーの量と質に関するイメージ・・また、スピードやパワーといったフィジカル的な要素・・そして、言わずと知れた心理・精神的な要素(まあ、意志のチカラ)・・などなど。

 もちろん、テクニックと戦術イメージを、いかに効果的に自分たちのサッカーのやり方に活かしていくのかという視点もまた、サッカーのタイプを決める重要な要素です。

 あっと・・またまた難しい表現になってしまった。要はサ、「バランス」こそがキーワードだということが言いたかったわけです。あ・・またワケが分からなくなった!?

 「バランス」というマジックワード・・。

 監督・コーチの優れたバランス感覚は言うに及ばないけれど、そのイメージをベースに、チームは、組織プレーと個の勝負プレーをハイレベルにバランスさせていかなければなりません。

 また、相手によって、守備のウエイトと攻撃のウエイトを巧みに「バランス」させていくことも大事なポイントです。同様に、個人の選手タイプについても、相手やチームの目標に応じて、うまくバランスするように組み合わせていかなければならなかったりします。

 それら全ての意味合いで、このトーナメントで、いまもっともバランスの取れたチームはアメリカ合衆国だとすることに躊躇しません。アメリカ代表が志向する、究極の組織サッカー・・。それについては、昨日のコラムを参照してください。

 アメリカやドイツ、はたまたノルウェーにしても、彼女たちが展開するのは、パワフルで「直線的」な組織サッカーと表現できるかもしれない。それに対して日本は、豊富な運動量を絶対的ベースに、技術と敏捷性を前面押し出す、とても「変化」に富んだ組織サッカーと表現したい。

 また、同じくスピーディーでパワフルなオーストラリアの組織サッカーだけれど、敢えて、前述のアメリカ・ドイツ・ノルウェーとは一線を画していると言いたい。

 要は、パワフルでスピーディー、そしてコレクティブ(組織プレー的)なディフェンスは他国と似通っているけれど、攻撃プロセスのニュアンスが、ちょっと異質だと感じるのです。彼女たちは、個の勝負も織り交ぜた、よりスキルフルでスムーズな仕掛けを展開している!? さて〜〜・・

 まあ、難しい・・ネ、そんな微妙なタイプの差異を、言葉で表現することは・・。

 でも、そんななかにあって、やっぱりブラジルのサッカーは突出して特徴的だよね。彼女たちの場合、組織プレーは、あくまでも「個の才能を活かし切る」ためのツールに過ぎない・・なんていうことまで考えてしまう。

 あっと・・特殊タイプのサッカーといったら、コロンビアの右に出る国はなかったっけ。でも彼女たちは、既にグループリーグ敗退が決まっている。まあいいや。とにかく・・ホントに興味深い。

 何かサ・・、ドイツにしてもブラジルにしても、はたまたコロンビアにしても、彼女たちのチーム戦術は、国の伝統的な(男子サッカーの!)発想が底流にあると思えてくるよね。

 あっ、そうそう・・フランスもいたっけ。その意味では、女子フランス代表も、1980年代、ミッシェル・プラティニが将軍として君臨していた頃のフランス代表のサッカーを標榜している・・と感じますよ。やっぱり、男の伝統的サッカー(成功したからこそ伝統になる!?)が底流にあるっちゅうことですかネ。

 まあ、そんな国々に対して、(誤解を恐れずに書くけれど・・)アメリカや日本、オーストラリアといった、発展ベクトルを上りつづける「下克上ネーション」では、女子サッカーは、男子とともに、同じような発展ベクトル上を歩みつづけている!? もちろん、感覚的なモノだけれど・・ネ。

 明日は、トーナメントのオフ日。日本代表のトレーニングが観られればいいのだけれど、聞くところによると、メディア非公開だそうな。でも、トレーニングの後には、佐々木則夫監督の「かこみ取材」は行われると聞いた。ちょっと楽しみ・・。ではまた明日。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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