トピックス
- 2012_J2・・ベルマーレが魅せる、選手の自主性に「も」根ざした進化・・(ベルマーレvs横浜FC、 3-2)・・(2012年4月15日、日曜日)
- 「リーグトップに立っているベルマーレについてですか??・・そうですね・・、若い選手が、自信をもって(全力で限界まで!?)闘っているという印象ですかネ・・彼らの具体的なサッカー内容については、我々のスカウティング通りでしたがね・・」
横浜FCの山口素弘監督が、今のベルマーレについて、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。そうね〜・・自信を深めた若手がブチかますチャレンジングサッカー、ネ〜・・まあ突き詰めれば、そういうコトになるんだろうね。
ところで、リーグ開幕当初のベルマーレ・・
わたしは、彼らがブチかましつづけた全力プレッシングサッカーを観ながら、ものすごく爽快な感覚と同時に、一抹の不安も覚えていた。
・・「あのサッカー」じゃ、いつか息切れしちゃう・・特に、日本の夏を考えれば・・なんてね・・
でも、そんな(歯止めの効かない!?)超全力サッカーが、ゲームを積み重ねるごとに急速に進化&深化していったのですよ。そのプロセスは、ホント、とても興味深かったし、わたし自身にとっても、とても貴重な学習機会になった。
ところで、開幕当初にベルマーレがブチかました強烈なプレッシングサッカー・・
・・忠実で爆発的な(エネルギッシュな)チェイス&チェックをベースに、『常に』仕掛けつづける協力プレッシング守備・・たとえ、そのプレスの輪を外されても、すぐに次のアクションへ移ることで、またすぐに次のプレッシングの輪を作っちゃう・・
・・ということでベルマーレは、ほとんどのボール奪取シーンで数的に優位なシーンを作りつづけ、そしてボールを奪ってからも、そんな「勢い」そのままに、まさに直線的に相手ゴールへ迫っていっちゃう・・フ〜〜・・
そう、プレッシングサッカーとは、できるかぎり頻繁に、それもなるべく「高い位置」で、(数的に優位になる!)協力プレス&ボール奪取勝負を仕掛けていくチーム戦術なんですよ。それが上手く機能すれば、もっともゴールを生み出す可能性の高い「ショートカウンター」を繰り出していける。フムフム・・
でもサ、そんなサッカーを機能させるためには、並外れた運動量が絶対条件になるよね。たしかにリーグ開幕当初のベルマーレは、とても涼しい環境だったこともあって、90分のうちのかなり長い時間、そんなハイテンポ(&ハイテンション!)協力プレスを機能させられていた。でもサ・・
ここで、本日のメインテーマに入っていくことになるわけです。そう、この試合でのベルマーレは、そんな私の印象(先入観)とは異なるサッカーを展開したのですよ。それは、まさに(ポジティブな)イメチェンだったね。
守備では、忠実なチェイス&チェックは(相手ボールの追い込みアクションは!)そのままに、猪突猛進に協力プレスを仕掛けていくのではなく、全員がクレバーにポジショニングすることで、次、その次のボール奪取勝負(インターセプトや相手トラップの瞬間を狙ったアタックなど)を狙う。
効率的、効果的な、ハイプレスと賢いポジショニングのバランス・・
実際ベルマーレは、全体的な運動量が抑制されているにもかかわらず、効果的なボール奪取シーンを連続させていたよね。
とはいっても、もちろん何度かは、そんなポジショニングプレーのウラを突かれる場面も目に付いた。それは、今後のトレーニング課題というわけだけれど、とにかく、その部分(想像的&創造的なディフェンス!)で発展することこそが(それを志向することこそが!)、より高い次元へのブレイク・スルー(進化・・スミマセン、カタカナが多くて・・)につながるというわけです。
また攻撃でも、目立ったイメチェンがあった。
開幕当初は、タテにチャンスがあれば、迷わず直線的にリスクへチャレンジしていった。それが、ここにきて、そんな直線リスクチャレンジだけではなく、より「可能性の高いチャンス」を探るようにもなったのです。要は、ボールをしっかりと「タメ」たり、より活発に、人とボールを(縦横無尽に)動かしはじめたということです。
とにかく、若く、覇気と元気に満ちあふれたベルマーレが、攻守にわたって効果的なイメチェンを果たしつつあることは確かな事実だね。だからこのチームは、クレバーで(美しくて)強い・・という雰囲気だって放散している。良いね・・
ちょっと誉めすぎだろうか?
まあ・・ネ、もし選手の感覚が、あらぬ方向へ(例えば過信の方向へ!?)偏ってしまったり、それで傲慢な自分勝手プレーが出はじめたら、すぐにでもチームが(チーム戦術≒コンセプトが)崩壊しちゃうわけだから、いいんじゃないですか、誉められるときに褒めちぎっても・・あははっ・・
とにかく、ほんの少しでも、また一人でも、そんな(汗かきプレーとは対極にある!)怠惰で傲慢なプレーに奔(はし)ったら、そのネガティブ・ヴィールスが瞬間的にチームに蔓延し、それまで作り上げてきたチームの共通イメージを簡単に崩壊させてしまうことは、サッカーの歴史が証明しているとおりだからね。
もちろん、だからこそ、優れたストロング・ハンド(監督)が必要・・。ということで、ベルマーレのチョウ・キジェさんは、とても優秀なプロコーチだと思いますよ。
とにかく、彼のコメント(言葉)は活きている。語彙が豊富というだけじゃなく、サッカーのメカニズムにも造詣が深いから、口をつく表現が活きているし、明確にニュアンスを把握できる。あれだったら、選手との(心理マネージメントも含む!)コミュニケーションもうまくいくでしょ。
素晴らしいのは、彼自身が言うように、そのコーチングの根本に、選手自身に考えさせ、彼らの自主性を(意識と意志を!)活性化し高揚させる・・という哲学があること。
そりゃそうだ、ゲームがはじまれば、監督ができることは限られちゃうわけだからね。
もちろん、攻守にわたるチーム戦術の(どのように守り、どのように攻めるのかという考え方の!)基本的な方向性は、チョウさんが明確に示すでしょ。
もちろん「それ」には、スリーバックの機能性イメージとか仕掛けプロセスのイメージ作りなど(コンビネーションイメージリンク等など)といったモノも含まれるわけだけれど、それを、選手たちに、自主的にプロセスさせる(積極的に考えさせることで自分たちのモノにさせ、より効果的に工夫し、応用させる・・等など)わけです。
そういえば、ゲーム前のウォームアップでも、監督やコーチは、ほとんど指示していなかったね。すべてを選手自身がマネージしていた。元気な声も、積極的に飛び出していた。素晴らしく「自主的な雰囲気」だったね。
そんなだから、「互いに使い・使われるメカニズム」に対する理解の進展にともなって、相互信頼関係が、どんどん深化していくのも道理。
かなり長くなってしまった。
とにかく、ベルマーレが魅せている素晴らしい「進化プロセス」に触発され、キーボードを打つ指も軽快に弾んでしまった・・っちゅう次第・・あははっ・・
あっと・・最後に、横浜FCについても一言。
彼らを観るのは、城福浩さんが率いるヴァンフォーレとのホームゲーム以来かな。それは、山口素弘さんの監督デビュー戦でもあったね。その試合のコラムは「こちら」。
その試合は、ヴァンフォーレに完敗した。でも今日のゲームを観て、そのときから比べれば、明らかにチームは進化していると感じた。
山口素弘も、そのことを実感しているらしく、「負けてしまったのに、こんなことを言うのはおかしいかもしれないが、自分的には、とても落ち着いたゲームだったと思っている・・ボランチをうまく活用しながら、中盤でもしっかりと組み立てられたと思っている・・また、中盤ディフェンスも、うまく機能しはじめている・・粘り強いディフェンスも魅せられた・・選手も、自分たちで考え、判断できるようになっていると思う・・」と、胸を張っていた。
横浜FC・・。彼らの「これから」にも注目しよう。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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