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2018_WMの38・・ゴールという究極のモティベーションと、それによるクロアチアの意志の高揚・・そう「ゲーム内容の変容」というテーマだね・・(イングランドvsクロアチア、1-1, 延長=0-1)・・(2018年7月11日、水曜日)

ヨ〜〜シッ!!!!!!

そのとき、最高のエモーションが爆発した。

もちろん、ペリシッチが、起死回生の一発をブチ込んだ瞬間のコトだよ。

昨日コラムで書いたように、私は、全身全霊でクロアチアをサポートしていたからね。

でも実は・・

それは、「唐突な」と表現できそうな同点ゴールでもあった。

私はそこに、「起死回生」という形容詞を用いた意味合いを含めていたんだ。

そうなんだよ。

つまり、同点ゴールが入るまでクロアチアが、まさに「心理的な悪魔のサイクル」に陥っていたということなんだ。

ベルギーが消えてしまったいま・・

彼らだけが、ダイレクトパスを織り交ぜた「美しい」組織コンビネーションをベースに、創造的な「個の勝負」も効果的にミックスしながら、「美しく」決定的スペースを攻略できる唯一のチームだと思っている筆者だったんだよ。

それが・・

そう、そのクロアチアが、この試合では、無様な「足許サッカー」しか展開できなかったんだ。

そのときの筆者の落胆レベルは、筆舌に尽くしがたいモノがあった。

人とボールが、まったくといっていいほど、スムーズに動かせないクロアチア。

それまでの彼らからすれば、まったく考えられないほど低級サッカー。

そんなモノは、観たくもなかった。

だから、深く落胆し、「これじゃ仕方ないな・・」なんて、半分諦めかけていたっちゅうわけさ。

それが・・

あっと・・その前に・・

クロアチアが、「そんな低級サッカー」に落ち込んでしまった要因として、2試合つづけて延長PK戦という超ハードなトーナメント戦による「蓄積疲労」という側面も否めないというテーマ。

たしかに、その要因もピックアップしなきゃ、フェアじゃない。

でも、こんな見方もある・・

サッカーは、究極の「心理ゲーム」。

それは、極限の「闘う意志」が問われるボールゲームなんだ。

そして、そこで求められる意志の強さは、体力が厳しくなればなるほど、その真価が問われる。

そんな評価基準を踏まえれば・・

もしかしたらクロアチアは、疲労によって、意志ポテンシャルを高揚させられなくなった普通のチームなのか・・なんていう感覚的な見方も生まれてきていたんだ。

そんなコトを考えてしまったからこそ、落胆レベルは、とても大きかったっちゅうわけさ。

このテーマについては、コラム末尾で、再考します。

とにかく、そんな低級なマインド(落ち込んだ闘う意志!?)が・・

そう、この同点ゴールで、クロアチアが、まったく違ったサッカーを展開しはじめたんだ。

生き返ったクロアチア!?

まさに、その表現が適当だね。

そう、彼ら本来の、ボールがないところで勝負を決められる高質サッカーを魅せはじめたんだ。

要は、ボールがないところでの動きの量と質が、格段にアップしはじめたということさ。

それまでは、ワンツー場面でしか、ダイレクトパスに連動する「動き」がなかったのに、その同点ゴールが入ってからは、一つのワンツーアクションがスタートしたとき、その周りで、3人目の動きが、少しずつ出はじめていったんだよ。

もちろん・・少しずつだよ・・急激にじゃなく、少しずつネ・・

そんな「フォームの高揚」の背景には、同点ゴールだけじゃなく、その同点ゴールによって、イングランド守備ブロックの「意志」にも、徐々に陰りが見えはじめてきたという側面もあったんだろうね。

例えば、イングランドが、粘り強くブチかましつづけたチェイス&チェック。

それまで、「行ける・・」と思ったら、最後の最後まで「追い回していたチェイス」に、途中で止まってしまう傾向が見えはじめたんだ。

私は、そんな微妙なプレー内容の「変容」を見逃さなかった。

そう、微妙に、「アナタ任せ・・というプレー姿勢」が出てくるようになったと感じられたんだよ。

だから、そこでは・・

クロアチアが主体になった「変容バックボーン」だけじゃなく、イングランド守備ブロックの意志の減退というバックボーンも相まって、クロアチアの復活が後押しされた・・!?

まあ、そんな見方が妥当なんだろうな。

そして、時間の経過とともに、クロアチアが、ゲームの流れを支配しはじめるというわけだ。

もちろんイングランドも攻めはするけれど、そこには、スペース攻略プロセスの意図が、まったくといっていいほど見えてこなかった。

とはいっても・・

そんな、まったく「気のないトコロ」からでも、(例えば一発ロングとかセットプレーなどで!?)ゴールを陥れてしまうのがイングランドの真骨頂だから、クロアチアも油断できない。

そう、意志のポテンシャルが減退したら、確実に、「気のない雰囲気」から、唐突にブチかまされるイングランドの一発勝負に対する「粘りディフェンス」が、ダウンしちゃうんだ。

でも・・

そう、同点ゴールから、「ゲームと勝負の流れ」を、美しく牛耳られていることを体感したクロアチアの、人とボールの動きが、どんどんと加速していくんだよ。

それこそが「セルフ・モティベーション能力」が優れていることの証だよね。

だからこそクロアチアは、何度も、イングランド守備の決定的スペースを攻略したり、相手ボールをしつこく追いかけつづけることで、イングランド守備組織のミスを誘ったり・・と、効果的にチャンスメイクを積み重ねていったんだ。

そんなクロアチアのイニシアチブ掌握の流れには、まさに勝者メンタリティーの何たるかが、如実に表現されていた・・と思う。

とにかく、クロアチアが決勝へと駒を進めてくれて、ものすごくハッピーな筆者だったんだよ・・

ということで、最後に二つのポイントを・・

一つは、冒頭の同点ゴールシーン。

ゴールをブチ込んだのは、ペリシッチ。

彼は、右サイドバックのブルサリコが送り込んだ「鋭いクロス」に素晴らしい反応を魅せた。

その反応アクションでのペリシッチは、二人のイングランド守備プレイヤーを、もっとも後ろの背後から追い越し、最後は、相手の「眼前スペース」で、ブルサリコの鋭いクロスを、ダイレクトでイングランドゴールへブチ込んだ。

ホントに、素晴らしいゴールだったけれど、それこそ、まさに、ボールがないところで勝負を決めるクロアチアの真骨頂とも言えるモノだった。

そして、もう一つのポイントが・・

その同点ゴールから、クロアチアの意志が、大きくアップしたという事実。

このことは、ベルマーレ監督チョウ・キジェと話したコトがあるんだけれど、とにかく彼は、走れなくなったことの理由に「疲労」という要素を、後付けすることを、極端に嫌うんだよ。

もちろん私も、そう。

そのコトは、ドイツサッカー史のレジェンドであるスーパープロコーチ、私の師でもあった、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーからも、言われたことがあった。

もしオマエがコーチとして疲労を理由にしたら、選手たちの「疲れの感覚」は、その瞬間に100倍にまで膨れ上がってしまうんだゾ・・・ってね。

オッサン、怖かったよな〜〜・・

今日もまた、かなり「リキ」が入ったことで、コラムが長くなってしまった。

悪しからず・・

では、お互いに、決勝を、心から楽しみましょうね。

あっと・・フランス・・

もちろん彼らも、意識さえすれば、かなりハイレベルな「美しく勝つサッカー」を展開できるさ。

でも今の彼らは、内容よりも、結果を追い求め過ぎている・・と感じるんだ。

だから私は、決勝でも、クロアチアを、心から応援するつもりです。

もちろんゲームの内容によっては、フランスに偏るかもしれないけど・・ネ。

また、そんな高質なクロアチアが、フランスの、フリーキック一発に沈められてしまったりして・・

へへっ・・

ではまた〜〜・・


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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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