湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー

 

第26節(2016年8月20日、土曜日)

 

日本最高レベルのサッカーマッチ・・でも内容はレッズに一日の長ありだったね・・(レッズvsフロンターレ、1-2)

 

レビュー
 
フ〜〜ッ・・まあ、仕方ない・・

それにしても、あれだけ明白にイニシアチブを握り、そのドミネーションに見合った決定的チャンス(その流れ!)も創りだしていたのに・・。

イニシアチブ・・

もちろん、表面的な「それ」じゃなく、中身の詰まった実質的なイニシアチブのことだよ。それでもレッズは、結局フロンターレのワンチャンス勝負に沈められてしまった。

そのイニシアチブだけれど、絶対的ベースは、もちろん連動した忠実デイフェンスにあった。

レッズは、守備が、ものすごく安定していたからこそ、攻撃でも、リスクチャレンジも含め、積極的に仕掛けていけたというわけだ。

そこでの「攻撃の質」という視点だけれど、その絶対的な「評価基準」は、何といっても、スペースを攻略していくプロセスの量と質にありだよね。

その視点じゃ、両チームともに、リーグで図抜けている。それでも・・

そう、その視点でも、(このゲームに限っては!?)レッズに、一日以上の長があったというわけだ。

あっと・・そういえば・・その充実したレッズ守備というディスカッションだけれど・・

実はフロンターレに、立ち上がりの数分間に、二度も、例によっての素晴らしいリズムのダイレクトパス・コンビネーションで、ウラの決定的スペースを突かれちゃいそうになったんだ。

キックオフから、ゲームのイニシアチブはレッズが握っていたよね。そして何度も、決定的チャンスの流れを創りだしていた。

でも・・

そう、立ち上がりの数分間だけだったけれど、フロンターレが、カウンター気味の流れから、「トントント〜ン」っちゅうリズムの(人とボールの!)動きで、逆サイドスペースに走り込んだ3人目、4人目のフリーランナーへのパスを、ピタリと合わせそうになったんだよ。

そのピンチは、ツキに恵まれたこともあって、しっかりと抑え込めたけれど、選手たちは肝を冷やしたはず。

そう、そのときレッズ選手たちは、「あっ・・やられた!!」と、冷水を浴びせられたんだよ。

私は、そのピンチシーンと、その後のレッズ守備の実質的な機能性(ハイレベルな連動性と、局面勝負での粘り強さなど!)に目を凝らしていた。そして思った。

・・やっぱり選手たちの緊張感は、(フロンターレに裏の決定的スペースを突かれそうになるといった!!)ショッキングなシーンがつづいたことで一気に高まったに違いない・・

そう、その「ショッキングピンチ」を体感してからのレッズ守備の内実は、立ち上がりのイージーなマインドからは、次元が、少なくとも二段階はアップしたんだ。

私は、「そこ」からのフロンターレ攻撃が、まったくといっていいほど、レッズ守備ブロックの穴を突いていけなくなったコトの背景に、その、ゲーム立ち上がりの二つのピンチがあったと思っているわけさ。

でも・・

そう、中村憲剛の先制ゴールシーンと、森谷賢太郎がブチ込んだ決勝ゴールシーン。

そこでは、完全に、レッズ守備の組織バランスが崩されてしまった。

いや・・。大島僚太の抜群の「タメ」も含めたフロンターレのスマートさに、レッズ守備のバランスが翻弄された・・と表現した方がフェアだろうね。

まあ・・仕方ない・・

それにしてもゲームは、ハイレベルの極致だったよね。

それも、これも、一人ひとりの「止めて蹴る」テクニックの高さだけじゃなく、両チームに、自分たちのサッカーの基本的なやり方や、人とボールの「動きのリズム」に対するチーム戦術的な理解が、深く共有されているからに他ならない。

そのテーマについては、「美しく勝つために・・」とか、「美しく優れたサッカーはムダ走りの積み重ね・・」等などといったタイトルで、新連載シリーズ「The Core Column」で発表した、「このコラム」「あのコラム」を参照してください。

そこでは、基本的にレッズをモデルにしたけれど、それをフロンターレに置き換えても、文章の流れが不自然にはならないはずです。

またフロンターレについては、同じシリーズで、以前に「こんなコラム」を発表しています。

そこでは、「人とボールの動きのリズム」というテーマで、バルサとフロンターレを「同格」に登場させましたよ。へへっ・・

さて、まとめ・・

たしかにレッズにとっては、とても残念な結果に終わったけれど、まだ8試合も残っているからね。これから何が起きるかなんて、誰にも分からない。

またそこには、今のレッズが内包する、進化し、深化しつづける勝者メンタリティーという興味深いテーマもある。

とにかく、これからの「強いレッズ」の行方が楽しみで仕方ありません。


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あっと・・

私が愛用しているウエストポーチやバックパックについて、何人かの方から質問されたこともあって、友人のデザイナーが主催するブランド、「METAS」のプロモートをさせてもらうことにしました。

この方は、有名メーカーのデザイナーから独立し、自らのブランドを立ち上げました。シンプルイズベスト・・スローライフ・・などなど、魅力的なキーワードを内包する「METAS」


とてもシンプル。でも、その機能性は、もう最高。お薦めしまっせ。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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