湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第15節(2020年9月9日、水曜日)

 

素晴らしいサッカーを魅せたヴィッセルだったけれど・・フロンターレがブチかました一瞬の輝き(破壊的な人とボールの動きによる仕掛け!?)が優ったゲームだった!?・・(フロンターレvsヴィッセル、3-2)

 

レビュー
 
・・川崎とウチじゃ、フリーの定義が違うって感じるんですよ・・

どのゲームだったか。試合後に、そんなコメントを残した選手がいた。

スミマセンね、それが、どこの誰だったか、判然としません。

でも、この発言のコノテーション(言外に含蓄される意味)は深い。

そう・・

フロンターレ選手たちは、相手にマークされた狭いスペースでも、難なくパスを受け、コントロールしちゃうっていう意味。

もちろん「そこ」には、相手のタイトマークがあっても、正確な足許パスを送り込めば、簡単にゃ、ボールを失わない・・ってな自信と確信があるんだよね。

そんな自信と確信の「心理的リソースは、家長昭博とか大島僚太ってなヤツらなんだろうね。

あっ・・と・・

フロンターレには、それ以外にも、「上手いヤツら」が揃っているから、ヘタに名前を挙げちゃいけなかった。

へへっ・・

ここでディスカッションしたいのは、トラップ&コントロール能力こそが、すべての根幹テクニックだ・・っちゅうテーマだよね。

そう、フロンターレには、そんな「「ボールを大事にする文化」が、深く根ざしているんだ。

「それ」ってサ・・

やっぱり、風間八宏によって「もたらされた」っちゅうコトなんだろうね。

彼とも、何度か、そのテーマで語り合ったことがあったね。

ということで・・

とにかく、フロンターレの強者どもは、平気で、「ズバッ!」ってな感じの鋭いタテパスを、タイトにマークされている前線の足許に「付けて」しまうんだよ。

それでもヤツらは、ピタリとボールをコントロールし、次へ展開しちゃう。

このテーマについては、「The Core Column」で発表した、「このコラム」もご参照あれ。

そんなフロンターレは・・

ピタッ、ピタッってな感じで、「足許パス&コントロール&足許パス・・」ってなボールの動きのリズムをベースに、人の密度が「薄いゾーン」へ、効果的にボールを動かしちゃう。

だから、最終勝負プロセス(仕掛け)に入るまでの組み立て段階では、そんなに激しく、人が動いた「気がしない」・・!?

組み立て段階でのフロンターレ選手たちは、チャンスをうかがっている・・!?

そして、チャンスを見出した次の瞬間には、満を持した前後左右のポジションチェンジをブチかましていく・・!?

まあ、そういうイメージングなんだろうね。

とにかくフロンターレは、仕掛けゾーンを探しながらボールを動かし、そして「仕掛けの起点」にボールが入った次の瞬間に、人数をかけ、急にテンポアップ(爆発!)する。

人とボールが激しく動きつづけるワンツーアクションの組み合わせで、3人目、4人目のフリーランナーを活用しちゃうんだ。

そう・・

ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションによる決定的スペースの攻略。

そして最前線スペースでの「起点」を演出したら、そこから、「組織」と「個」をうまくバランスさせながら、危険な最終勝負をブチかましていくっちゅうわけだ。

そんな、魅力的な仕掛けプロセスという視点では、フロンターレとマリノスが(まあ調子が良いときのミハイロ・コンサドーレも!?)、いまの「J」での代表格だよね。

・・でも・・さ・・

そう、このゲームでのフロンターレは、そんなハイレベルで魅力的な仕掛け(最終勝負)プロセスを、うまくブチかますことが叶(かな)わなかったんだ。

いや・・その表現は正しくない・・

そう、彼らは、何度かツボにはまったシーンでは、例によっての「高質クオリティー」の仕掛けプロス(美しいスペース攻略シーン)を魅せてくれたんだ。

とはいっても、素晴らしく立派なサッカーを展開したヴィッセルに「タジタジ」になる時間帯も多かった。

ということで、この試合では、フロンターレの魅惑的な仕掛けシーンが、印象のトップには残りにくかったというわけさ。

もちろんそれは、クレバーなボール奪取プロセス(局面デュエル)を基盤に、とてもステディーで積極的なサッカーを魅せたヴィッセルが相手だったからに他ならない。

クレバーなボール奪取プロセス・・

もちろん、その骨子は、ボールに「食いつき過ぎず」、忍耐マークをつづける粘性ディフェンスと、フロンターレが狙うスペースを「クリアにイメージ」するカバーリングにあり・・だよね。

そんな、ボール奪取プロセスイメージの浸透度と、実行力が素晴らしかった。

とにかく(この試合での!?)ヴィッセルは、山口螢と酒井高徳(など!?)を中心に、攻守にわたって、ホントに素晴らしいサッカーを展開したんだよ。

ドイツのプロコーチ、トルステン・フィンクにも、賞賛の拍手をおくりましょう。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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