湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第18節(2010年8月14日、土曜日)

 

今野と森重のポジションの入れ替えがメインテーマかな・・(AvsFCT, 1-1)

 

レビュー
 
 どうも皆さん・・。

 今日は、ホントに、ちょっと疲れ気味。いまは、2330PMを回ったところなのですが、先ほど、鹿島から帰宅しました。今日は、私用で、まず水戸まで行き(約150キロ)、そこから国道51号線で鹿島まで(約50キロ)。そして、いま都内の自宅に「たどり着いた」っちゅうわけです。

 最後のルートである鹿島から都心までが約100キロですから、単車で「300キロ」移動したことになります。もちろんほとんどは高速道路だったから、まあ・・基本的には楽ではあったのですが、やっぱり・・ネ。

 「加齢」は止められないけれど、「老化」は、やり方によって、大きくスローダウンさせられる・・なんていうコンセプトの下、しっかりとトレーニングを積んでいるつもりなんだけれど、やはり、寄る年波には勝てない「部分」もあるという厳しい現実を突きつけられることも(南アでの生活も含め!)たまにはあるんですよ。あははっ・・

 ということで、短くコラムをまとめさせてもらいます(なんて言いながら、長くなっちゃうんだよな〜〜)。

 この試合、まずアントラーズが見事な先制ゴールをゲットします。小笠原満男のフリーキックに反応して飛び出した興梠慎三が、スリップヘッドで「流し込んだ」ゴール。とにかく、ここしかないというタイミングでの飛び出しだったから、どちらが「合わせた」というのではないく、両者が脳裏に描いた確信の勝負イメージが正確に重なりあった・・っちゅうことだね。

 小笠原満男のフリーキックは、例によって、鳥肌が立つくらい正確に、FC東京GKと最終ラインの間に広がる「決定的スペース」へ飛んでいった。それも、かなり勢いのあるラストパス。そして興梠慎三が、そんな小笠原満男の「最終勝負イメージ」を見事にトレースした。

 このシーンで特筆なのは、繰り返しになるけれど、小笠原満男のラストパスと、興梠慎三の「飛び出しフリーランニング」が見事にシンクロしたというポイント。「それ」は、もちろん、繰り返し(イメージ)トレーニングをつづけたことによって培われたモノです。

 マルキーニョスという「個の勝負師」を欠いたアントラーズには、そんな、セットプレー最終勝負における「最高レベルのイメージシンクロコンビネーション」という武器「も」ある。勝負強いはずだ。フ〜〜・・

 その後もアントラーズは、攻め上がってくるFC東京のウラをクレバーに突くカウンターから、興梠慎三やジウトンといったところが決定的シュートをブチかました。そのシュートが決まっていれば、前半だけで勝負ありだった。でも・・

 ということでアントラーズは、追加ゴールを奪えず、後半にFC東京が繰り出してきた猛反撃を喰らうことになるわけです。

 「我々は、後半にはアントラーズの足が止まると思っていたし、その通りになった・・あれだけゲームを支配し、決定機を作り出したのに、結局同点ゴールしか奪えなかった・・このところ良いゲームをやっているのに、どうも、その内容に見合った勝ち点をゲットできていない・・それは、ひとえに、わたしの責任だと思う・・」

 FC東京、城福浩監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。まあ・・城福さんが志向すべき課題があるとしたら・・、このところ「J-リーグ・コラム」で展開している、「ゴールを決め、勝負を勝ち切る・・という現象(勝者のメンタリティー)に対する確信レベルを極限まで高めていくために・・」なんていうコンテンツを散りばめた複数のコラムを参照してもらいましょうか。

 それらのコラムは、第16節のレッズ対アルディージャ戦第17節のエスパルス対アントラーズ戦、同じく、FC東京対クランパス戦ヴィッセル対レッズ戦です。

 まあ・・指揮官として、チームの緊張感を、いかにギリギリまで高めることでトレーニングの「質」を最高レベルに引き上げられるか・・というテーマとも言える。もちろん、チームが極限テンションに支配されてばかりじゃ選手の精神がボロボロになっちゃうから、心から笑えるようなリラックスした雰囲気も必要だよね。そう、バランスの取れた「プロ(個人事業主グループ)の雰囲気。

 そんな「テンション」と「リラックス」が、これ以上ないという「振幅」で大きく変動しつづけるような、とても変化に富んだ「雰囲気」を、バランスよく作り出すのも、監督のウデの一環ということです。

 ドイツサッカーの父と呼ばれたゼップ・ヘルベルガーが(1954年スイスワールドカップで優勝した西ドイツ代表の監督であり、私も卒業したプロコーチ養成コースの初代校長・・クラーマーやヴァイスヴァイラーも師事し、心から尊敬していたスーパーコーチ)、そんな彼が、こんなことを言ったことがあったそうな・・

 選手が、笑いながら(疲労と緊張感で!?)ブッ倒れるようなトレーニングが、最高なんだよ・・

 この試合でのFC東京について、私にとっての、もっとも重要なポイントは、もちろん、後半になって、今野泰幸と森重真人がポジションを入れ替えたこと。守備的ハーフの森重が、彼本来のポジションである最終ラインへ戻り、代わって、スーパーユーティリティー・プレイヤーの今野泰幸が、守備的ハーフのポジションへ上がったのです。

 わたしは、そのポイントについて、意図的に、城福さんに聞きませんでした。もちろん質問はしたけれど、まったく違う内容でした。もちろん城福さんは、今野と森重のポジションチェンジについて聞かれるモノとばかり思っていたはずだけれど・・。あははっ・・

 この今野と森重のポジションチェンジについては、以前のコラムでも書いたように、既に何回か、城福さんに対し、どうして「それ」をやらないのか・・って質問したことがあった。

 とにかく私にとっては、森重の「怠慢なプレー姿勢」は、チームの重心たるべき「ボランチ」としては、許せない態度なのですよ。

 たしかに森重真人は、優れた天賦の才に恵まれている。でも・・

 ・・ボールを持っても、梶山ほどのリスクチャレンジや効果的な仕掛けプレーが出来るわけではない(この試合では、何度かトライしたけれど、そのほとんどがミスになった!)・・また守備でも、全力でのプレッシャーを掛けず(チャンスなのに、全力でのボール奪取勝負を仕掛けずに・・)ぬるま湯の「寄せ」ばかり・・そんな「ディフェンス姿勢」は、典型的な、漁夫の利(しか狙わない・・自分では汗かきをしない怠惰な)プレイヤーのもの・・ホントに腹が立つ・・

 でも後半、本来の最終ラインに入ってからの彼のプレーには舌を巻いた。

 「アッ・・バレージだ!」なんていう声が出そうになるほど素晴らしいカバーリング(ラストパスのインターセプト)を、二回、三回と魅せつづけた・・それだけじゃなく、スプリント競争でも、アントラーズの俊足フォワード興梠慎三とタメを張る・・そんな(森重の)全力スプリントなんか、これまで一度だって見たことなかったから、ホント、ビックリした・・

 そんな彼の活躍もあって、アントラーズのカウンターチャンスを(ある程度の余裕をもって!?)抑え切ったFC東京。だからこそ、城福さんの、「この試合は勝てたゲームだった・・その意味でも、勝ち点3を、遠路はるばる鹿島まで駆けつけてくれたサポーターの皆さんにプレゼントできなくて、本当に申し訳ない・・」なんていうニュアンスのコメントも、嫌みなく聞くことができた。

 そして私は、FC東京の同点ゴールを叩き込んだのが今野泰幸だったという事実に、溜飲を下げていた。

 それに、今野のプレーからは、タテへの勝負パスといったリスキープレーを避け、安全プレー優先という姿勢ではなく、とても前向きになったという印象も残った。何せ、米本拓司がいないんだから、梶山陽平の「ボランチ」パートナーは、今野泰幸しかいないんじゃないか・・なんてネ。アッ・・スミマセン、城福さん・・

 ちょっとアタマがフラついてきた。オズワルド・オリヴェイラ監督との興味深い「対話」もあったけれど、もう限界かもしれない。ということで今日はここまでにします。もう寝よう・・

------------------

 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。その本に関する告知記事は「こちら」です。

============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]